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翌日の早朝、私はさっそくお兄様に呼びだされていた。寝ぼけ眼をこすりながら、屋敷の裏手にある訓練場に行ってみると、そこには、仁王立ちしたお兄様が待ち構えていた。
「おはようございます、お兄様」
「……初日だから今日は許すが、明日からは、もっと早く起きろ」
「はい、わかりました。お兄様」
「よし、じゃあ早速訓練を始めるぞ」
そう言ってお兄様は、訓練用の木剣を手に取った。私は少し緊張しながら、その後を追う。
「まずは基礎からだ。構えろ」
「はい!」
私は言われた通りに、両手で木剣を中段に構える。すると、いきなりお兄様が踏み込んできて、私の左脇から打ち込んできた。咄嗟に身体を捻って避けるが、攻撃はまだ終わらない。今度は上段からの振り下ろしだ。私は何とか受け流したが、体勢を崩してしまった。そこにすかさず追撃が入る。今度は突きだ。私は体勢を立て直そうとするが、間に合わずに右肩を突かれてしまう。
「うっ……」思わずうめき声が出る。だが、お兄様の手は緩まない。今度は横薙ぎの攻撃が来たので、慌てて後ろに飛び退く。しかし、それも読まれていたようで、すぐに距離を詰められてしまった。そして再び攻撃が始まる。何度も打ち込まれる剣撃を必死に防ぐが、徐々に押され始める。ついにバランスを崩してしまい、尻餅をつくように転んでしまったところで、お兄様の猛攻が終わった。
「ふむ、基礎はできているようだな。だが、まだ隙だらけだ」
そう言いながらも、お兄様は少し満足げな表情を浮かべていた。私は肩で息をしながら起き上がる。
「あの……お兄様、少し休憩を頂けないでしょうか?」
「何を言っているんだ? これくらいで音を上げてどうする」
「でも……」
私が言い淀んでいる間に、お兄様は再び剣を構えた。どうやら休ませてもらえないようだ。仕方なく私も木剣を構えるが、正直言って勝てる気がしない。それでもやるしかない。私は覚悟を決めて、お兄様に向かっていった。
それから数時間後、すっかり日が落ちてしまった頃になってようやく訓練が終わった。全身汗まみれで、服もボロボロだ。だが、不思議と疲労感はそれほど感じなかった。むしろ充実感があるくらいだ。
「今日はここまでにしておこう」
そう言ってお兄様は屋敷に戻っていった。私もその後に続いていく。
「明日からも毎日続けるからな」
「はい、わかりました!」
それからというもの、私は毎日訓練を続けた。最初は辛かったが、徐々に体力もついてきて、動きも良くなっていった。そしてある日のこと、お兄様から新しい課題を与えられた。
「今日は実戦形式の訓練だ」
「実戦ですか?」
「そうだ。これから俺と手合わせしてもらう」
そう言って、お兄様は木剣を構える。私も慌てて自分の木剣を構えた。
「いくぞ!」
お兄様が踏み込んでくると同時に、鋭い一撃を放ってきた。それを何とか受け流すが、すぐに次の攻撃が飛んでくる。防戦一方になりながらも、必死に応戦するが、やはり力の差がありすぎるようだ。結局最後は首元に剣先を突きつけられてしまい、私の負けが確定した。
「まだまだだな」
お兄様はそう言って、木剣を下ろした。私もその場にへたり込む。全身汗まみれで呼吸も荒い状態だったが、不思議と気分は晴れやかだった。
「お兄様、ありがとうございます!」
私は立ち上がって頭を下げた。すると、お兄様は少し照れくさそうにしながらも微笑んでくれた。
それから毎日のように訓練を続けていった結果、次第にお兄様の動きについていけるようになっていった。同時に自分の力もついていることを実感するようになり、自信もついてきたように思う。そしてついには、お兄様から一本取ることに成功したのだ。
「やった! お兄様から一本取りました!」
私は思わず大喜びしてしまった。これでようやく一人前になれた気がしたからだ。だが、お兄様は少し不満げな様子だった。
「まあ、及第点といったところか」そう言うと、お兄様は木剣を置いて腕を組んでしまった。そして、私に近づいてきてこう言ったのだ。
「これから本格的な修行を始めるぞ」
「はい! よろしくお願いします!」
これから更に厳しい訓練が始まるかもしれないが、お兄様と一緒なら乗り越えられる気がした。
「おはようございます、お兄様」
「……初日だから今日は許すが、明日からは、もっと早く起きろ」
「はい、わかりました。お兄様」
「よし、じゃあ早速訓練を始めるぞ」
そう言ってお兄様は、訓練用の木剣を手に取った。私は少し緊張しながら、その後を追う。
「まずは基礎からだ。構えろ」
「はい!」
私は言われた通りに、両手で木剣を中段に構える。すると、いきなりお兄様が踏み込んできて、私の左脇から打ち込んできた。咄嗟に身体を捻って避けるが、攻撃はまだ終わらない。今度は上段からの振り下ろしだ。私は何とか受け流したが、体勢を崩してしまった。そこにすかさず追撃が入る。今度は突きだ。私は体勢を立て直そうとするが、間に合わずに右肩を突かれてしまう。
「うっ……」思わずうめき声が出る。だが、お兄様の手は緩まない。今度は横薙ぎの攻撃が来たので、慌てて後ろに飛び退く。しかし、それも読まれていたようで、すぐに距離を詰められてしまった。そして再び攻撃が始まる。何度も打ち込まれる剣撃を必死に防ぐが、徐々に押され始める。ついにバランスを崩してしまい、尻餅をつくように転んでしまったところで、お兄様の猛攻が終わった。
「ふむ、基礎はできているようだな。だが、まだ隙だらけだ」
そう言いながらも、お兄様は少し満足げな表情を浮かべていた。私は肩で息をしながら起き上がる。
「あの……お兄様、少し休憩を頂けないでしょうか?」
「何を言っているんだ? これくらいで音を上げてどうする」
「でも……」
私が言い淀んでいる間に、お兄様は再び剣を構えた。どうやら休ませてもらえないようだ。仕方なく私も木剣を構えるが、正直言って勝てる気がしない。それでもやるしかない。私は覚悟を決めて、お兄様に向かっていった。
それから数時間後、すっかり日が落ちてしまった頃になってようやく訓練が終わった。全身汗まみれで、服もボロボロだ。だが、不思議と疲労感はそれほど感じなかった。むしろ充実感があるくらいだ。
「今日はここまでにしておこう」
そう言ってお兄様は屋敷に戻っていった。私もその後に続いていく。
「明日からも毎日続けるからな」
「はい、わかりました!」
それからというもの、私は毎日訓練を続けた。最初は辛かったが、徐々に体力もついてきて、動きも良くなっていった。そしてある日のこと、お兄様から新しい課題を与えられた。
「今日は実戦形式の訓練だ」
「実戦ですか?」
「そうだ。これから俺と手合わせしてもらう」
そう言って、お兄様は木剣を構える。私も慌てて自分の木剣を構えた。
「いくぞ!」
お兄様が踏み込んでくると同時に、鋭い一撃を放ってきた。それを何とか受け流すが、すぐに次の攻撃が飛んでくる。防戦一方になりながらも、必死に応戦するが、やはり力の差がありすぎるようだ。結局最後は首元に剣先を突きつけられてしまい、私の負けが確定した。
「まだまだだな」
お兄様はそう言って、木剣を下ろした。私もその場にへたり込む。全身汗まみれで呼吸も荒い状態だったが、不思議と気分は晴れやかだった。
「お兄様、ありがとうございます!」
私は立ち上がって頭を下げた。すると、お兄様は少し照れくさそうにしながらも微笑んでくれた。
それから毎日のように訓練を続けていった結果、次第にお兄様の動きについていけるようになっていった。同時に自分の力もついていることを実感するようになり、自信もついてきたように思う。そしてついには、お兄様から一本取ることに成功したのだ。
「やった! お兄様から一本取りました!」
私は思わず大喜びしてしまった。これでようやく一人前になれた気がしたからだ。だが、お兄様は少し不満げな様子だった。
「まあ、及第点といったところか」そう言うと、お兄様は木剣を置いて腕を組んでしまった。そして、私に近づいてきてこう言ったのだ。
「これから本格的な修行を始めるぞ」
「はい! よろしくお願いします!」
これから更に厳しい訓練が始まるかもしれないが、お兄様と一緒なら乗り越えられる気がした。
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