1 / 20
1
しおりを挟む
私の名前はオフィーリア・コーネリア。私はこの世界の悪役令嬢です。
幼い頃に起きたある出来事で、私は自分の正体が前世から転生した乙女ゲームの主人公であることを知りました。そして、今いる世界が「イノセント・プリンセス」というヨーロッパ風世界の名門の学園を舞台にした乙女ゲームの世界だと気付いたのです。
この乙女ゲームの主人公は平民出身で、男爵家に引き取られてから貴族の子弟が集まる王立学園に入学します。そこで彼女は華やかな世界と知り合いになっていきますが、心の傷や満たされなさを抱える攻略対象達と出会うことで、彼らになくてはならない存在となっていくのです。
私はこのゲームの主人公とは正反対の立場でした。金持ち公爵家の長女でありラインハルト王子の婚約者であるオフィーリア・コーネリアという地位と富を持った悪役令嬢として、平民出身の主人公に嫉妬し意地悪をすることで存在感を示すのです。
例えば、お金に物を言わせ、主人公と攻略対象たちの待ち合わせやデートを邪魔したり、取り巻きたちと共に陰口を言ったりといった嫌がらせをしていました。そして、主人公がどんなルートでハッピーエンドを迎えようとも、私は最後には散財を咎められて公爵家から追い出されるという最期を遂げるのでした。
この真実は私にとって衝撃的なものでありました。贅沢し放題も我が儘し放題だった今までの生活は、いずれ主人公がハッピーエンドを迎えるための舞台装置でしかなかったのです。しばらく落ち込みましたが、断罪される未来を受け入れることにしました。
悪役令嬢として断罪されたら、隠居して森の一軒家でカフェを開いて、のんびり生きていこうと決意したのです。
しかし、最近はどうも周囲の様子がおかしいように思えます。ゲームとは違う展開が起こり始めたような気がするのですが、転生した影響でしょうか? それとも何か変化があったのでしょうか?
◇
数年経ちました。今日は学園に入学してから初めての休日です。
王都の一等地にある豪華な屋敷の離れで、私は紅茶を優雅に飲んでいました。するとドアがノックされ、「どうぞ」と私が許可を出すと、異母弟であるカイトが部屋に入って来ました。
「おはようございます、姉様」
「おはよう、カイト」
三歳年下のカイトは私より一歳年下で、ふわふわした茶色の髪に私譲りの青い瞳をしています。
「姉様、今日の紅茶はなんですか?」
「ダージリンティーよ。爽やかな香りがするでしょう」
「はい! あ、そういえば昨日姉様のお友だちから頂いたレモンパイがあるんです。一緒に食べませんか?」
「あら、それは嬉しいわね」
私はカイトが持ってきたレモンパイを一口食べました。サクサクとした生地と甘酸っぱいレモンクリームが絶妙に合います。
「美味しいわね」
「そうですね。姉様のレモンパイには負けますけど」
私はふふっと笑いました。この子は私が作ったレモンパイをとても気に入ってくれているのです。
「姉様が学園に通うようになって、僕は寂しいです」
「あら、嬉しいことを言ってくれるわね」
私はカイトの頭を撫でました。するとカイトは笑顔になります。
「姉様が学園で良い人に出会えるように祈っています!」
「ありがとう、カイト」
この子は本当に可愛いですね。私は義弟をぎゅっと抱きしめました。
「姉様、苦しいです」
「あら、ごめんなさい。あなたがあまりにも可愛かったから」
カイトは少し恥ずかしそうに頬を染めました。
「僕はもう子供ではありません。でも、姉様が僕を可愛がってくれるのは嬉しいです」
そう言って、カイトは私の胸に顔を埋めました。私は再び弟の頭を撫でます。するとカイトは気持ち良さそうに目を細めました。この子は昔から甘えん坊なのですね。
「姉様」
「なあに?」
「僕は、姉様のことを世界で一番愛しています」
可愛い義弟からの思わぬ告白に、私は驚いてしまいました。この子はなんて良い子なのでしょう。私がカイトの頬に軽く口づけすると、彼はさらに強く私に抱きついてきました。そして、私の胸に顔を押しつけてきます。
「もうっ! くすぐったいわ!」
「ごめんなさい」と謝りながらも、カイトは私の胸に顔を埋めたままでした。本当に甘えん坊さんですね。でも、そんなところも可愛いです。
「姉様、愛しています」
「私もよ」
私は義弟をぎゅっと抱きしめ返しました。するとカイトは嬉しそうに笑います。その笑顔を見ると、私まで幸せな気持ちになります。私はこれからもずっとこの子の姉として生きていこうと決意しました。
幼い頃に起きたある出来事で、私は自分の正体が前世から転生した乙女ゲームの主人公であることを知りました。そして、今いる世界が「イノセント・プリンセス」というヨーロッパ風世界の名門の学園を舞台にした乙女ゲームの世界だと気付いたのです。
この乙女ゲームの主人公は平民出身で、男爵家に引き取られてから貴族の子弟が集まる王立学園に入学します。そこで彼女は華やかな世界と知り合いになっていきますが、心の傷や満たされなさを抱える攻略対象達と出会うことで、彼らになくてはならない存在となっていくのです。
私はこのゲームの主人公とは正反対の立場でした。金持ち公爵家の長女でありラインハルト王子の婚約者であるオフィーリア・コーネリアという地位と富を持った悪役令嬢として、平民出身の主人公に嫉妬し意地悪をすることで存在感を示すのです。
例えば、お金に物を言わせ、主人公と攻略対象たちの待ち合わせやデートを邪魔したり、取り巻きたちと共に陰口を言ったりといった嫌がらせをしていました。そして、主人公がどんなルートでハッピーエンドを迎えようとも、私は最後には散財を咎められて公爵家から追い出されるという最期を遂げるのでした。
この真実は私にとって衝撃的なものでありました。贅沢し放題も我が儘し放題だった今までの生活は、いずれ主人公がハッピーエンドを迎えるための舞台装置でしかなかったのです。しばらく落ち込みましたが、断罪される未来を受け入れることにしました。
悪役令嬢として断罪されたら、隠居して森の一軒家でカフェを開いて、のんびり生きていこうと決意したのです。
しかし、最近はどうも周囲の様子がおかしいように思えます。ゲームとは違う展開が起こり始めたような気がするのですが、転生した影響でしょうか? それとも何か変化があったのでしょうか?
◇
数年経ちました。今日は学園に入学してから初めての休日です。
王都の一等地にある豪華な屋敷の離れで、私は紅茶を優雅に飲んでいました。するとドアがノックされ、「どうぞ」と私が許可を出すと、異母弟であるカイトが部屋に入って来ました。
「おはようございます、姉様」
「おはよう、カイト」
三歳年下のカイトは私より一歳年下で、ふわふわした茶色の髪に私譲りの青い瞳をしています。
「姉様、今日の紅茶はなんですか?」
「ダージリンティーよ。爽やかな香りがするでしょう」
「はい! あ、そういえば昨日姉様のお友だちから頂いたレモンパイがあるんです。一緒に食べませんか?」
「あら、それは嬉しいわね」
私はカイトが持ってきたレモンパイを一口食べました。サクサクとした生地と甘酸っぱいレモンクリームが絶妙に合います。
「美味しいわね」
「そうですね。姉様のレモンパイには負けますけど」
私はふふっと笑いました。この子は私が作ったレモンパイをとても気に入ってくれているのです。
「姉様が学園に通うようになって、僕は寂しいです」
「あら、嬉しいことを言ってくれるわね」
私はカイトの頭を撫でました。するとカイトは笑顔になります。
「姉様が学園で良い人に出会えるように祈っています!」
「ありがとう、カイト」
この子は本当に可愛いですね。私は義弟をぎゅっと抱きしめました。
「姉様、苦しいです」
「あら、ごめんなさい。あなたがあまりにも可愛かったから」
カイトは少し恥ずかしそうに頬を染めました。
「僕はもう子供ではありません。でも、姉様が僕を可愛がってくれるのは嬉しいです」
そう言って、カイトは私の胸に顔を埋めました。私は再び弟の頭を撫でます。するとカイトは気持ち良さそうに目を細めました。この子は昔から甘えん坊なのですね。
「姉様」
「なあに?」
「僕は、姉様のことを世界で一番愛しています」
可愛い義弟からの思わぬ告白に、私は驚いてしまいました。この子はなんて良い子なのでしょう。私がカイトの頬に軽く口づけすると、彼はさらに強く私に抱きついてきました。そして、私の胸に顔を押しつけてきます。
「もうっ! くすぐったいわ!」
「ごめんなさい」と謝りながらも、カイトは私の胸に顔を埋めたままでした。本当に甘えん坊さんですね。でも、そんなところも可愛いです。
「姉様、愛しています」
「私もよ」
私は義弟をぎゅっと抱きしめ返しました。するとカイトは嬉しそうに笑います。その笑顔を見ると、私まで幸せな気持ちになります。私はこれからもずっとこの子の姉として生きていこうと決意しました。
356
お気に入りに追加
354
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
悪役令嬢の兄に転生したので、妹を聖女に生まれ変わらせます
平山和人
恋愛
名門貴族のカイトはある日、この世界が乙女ゲームの世界であることに気がつく。妹のクロエは主人公を事あるごとにいびる悪役令嬢として登場する。そして、彼女はどのルートにおいても断罪の運命をたどり、最後は悲惨な結末を迎えるのだった。
そのことを回避しようとカイトはクロエの悪役令嬢化を阻止し、妹を聖女として育て、数多の死亡フラグをねじ伏せていくのであった。
【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します
大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。
「私あなたみたいな男性好みじゃないの」
「僕から逃げられると思っているの?」
そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。
すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。
これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない!
「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」
嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。
私は命を守るため。
彼は偽物の妻を得るため。
お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。
「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」
アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。
転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!?
ハッピーエンド保証します。
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる