「お前はもう不要だ」と婚約破棄された聖女は隣国の騎士団長に拾われ、溺愛されます

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騎士団で働き始めてからそろそろ三ヶ月になるが、私はまだ新しい環境に慣れずにいた。同僚たちとの関係も良好とは言い難い。特に、団長であるエドワードさんとは距離が遠いと感じることが多かった。それでも充実した日々を送っていると思っていた。そんな時、たまたま団長室の前を通りかかった時に偶然にも彼と出くわしたのだ。


「やあ、お疲れ様」


彼は笑顔で挨拶してくれたが、私は緊張のあまり上手く言葉を返すことができなかった。すると彼は不思議そうな顔をして、私の顔を覗き込んできた。


「どうした？ 顔色が悪いぞ」


私は恥ずかしさのあまり目を逸らしてしまったが、彼は心配そうな表情を浮かべていた。


「団長！ これ確認お願いします！」


彼女は書類を手渡すと、すぐに立ち去った。エドワードさんはその書類に目を通すと、満足そうにうなずいていた。


「よし、これでOKだ」


そう言うと、彼は私に向き直り優しく微笑みかけてくれた。その表情を見た瞬間、私の胸は高鳴った。


（ああ、やっぱりかっこいいな……）


そんなことを考えているうちに、いつの間にか彼の目は私を見つめていた。慌てて目を逸らすと、今度は彼が不思議そうな顔をしたがすぐに微笑んでくれた。その笑顔にドキッとしたが、同時に不安にもなった。この感情は一体何だろう？


「あ、あの……」


恐る恐る声を出すと、彼は優しい口調で答えてくれた。


「何か悩み事でもあるのか？」


「いえ、なんでもないです」


私は慌てて否定したが、彼はまだ心配そうな顔をしていた。


「遠慮せずに相談してくれよ」


「はい……」


私は俯きながらも小さく返事をした。すると彼は私の肩に手を置きながら言ってくれた。


「何かあったらすぐに言ってくれよな」


エドワードさんはそう言い残すと、再び机に戻って仕事を始めた。


「……」


私は彼の後ろ姿を見つめながら、しばらくその場を動けなかった。心臓の鼓動が速くなり、呼吸が苦しくなる。


「私……一体どうしちゃったんだろう？」


自問自答しながら、私は自分の感情を整理し始めた。これは単なる憧れなのか？ それともそれ以上の何かなのか？ そんなことを考えているうちに時間が経ち、いつの間にか夕方になっていた。


「そろそろ帰ろうかな……」


そう呟いた瞬間、背後に人の気配を感じた。振り返るとそこには団長が立っていた。彼は優しく微笑みながら話しかけてきた。


「もう仕事は終わったのかい？」


「はい、終わりました」


私が答えると、彼は少し考えるような仕草をしてから言った。


「もし時間があれば食事でもどうかな？ もちろん奢るよ」


突然の申し出に驚いたが、断る理由もないので了承することにした。私たちは連れ立って騎士団本部を出て、近くのレストランへと向かった。道中は他愛もない会話が続いたが、私にとってはとても居心地の良い時間だった。


レストランに着くと窓際の席に案内された。メニューを見ると見慣れない料理名ばかりが並んでいる。しかしエドワードさんは慣れた手つきで注文を済ませたようだ。数分後には美味しそうな料理が次々と運ばれてきた。


「いただきます」


私たちは同時に手を合わせて食事を始めた。一口食べるたびに、その美味しさに感動してしまう。エドワードさんも満足そうに微笑んでいた。


「どうだい？ 美味しいだろう？」


「はい、とてもおいしいです」


私は素直に感想を述べた。その後も会話は弾み、気づけばあっという間に時間が過ぎていた。最後にデザートを食べて店を出た頃にはすっかり日も暮れていて、夜空には星が輝いていた。


「今日はありがとうございました」


別れ際になって、改めて感謝の意を伝えた。すると彼は一瞬驚いたような表情を浮かべてから言った。


「こちらこそありがとう。楽しかったよ」


彼がそう言った瞬間、胸の奥がズキンと痛んだような気がしたが、それでも笑顔で応えた。


「また機会があったら一緒に食事をしようね」


その言葉に、私はドキッとした。そして同時に確信したのだ。これは恋なのだと。