「お前はもう不要だ」と婚約破棄された聖女は隣国の騎士団長に拾われ、溺愛されます

14

ある日のこと、私たちはパルという村にたどり着きました。何でも畑を荒らす魔獣を退治してほしいという依頼があったのです。


「このままでは村は全滅です」


村長さんは悲痛な表情を浮かべて訴えかけてきました。


「分かりました、魔獣退治は任せてください」


エドワードさんはすぐに快諾しました。


私たちは早速畑へ向かうことにしました。するとそこには全長3メートルを超える魔獣が暴れ回っていました。確かにこのままでは大変な被害が出てしまいそうです。


「よし、行くぞ！」


エドワードさんの号令と共に、私たち騎士団は剣を構え、魔獣に立ち向かいました。魔獣は全身を覆う黒い鱗と鋭い爪で攻撃を仕掛けてきました。私は一瞬ひるんだものの、エドワードさんの勇気に触発され、果敢に前進しました。


「分散して攻撃しろ！ 囲むんだ！」


エドワードさんの指示に従い、私たちは魔獣を取り囲むように動きました。しかし、魔獣の力は予想以上に強大で、一人ひとりの攻撃はまるで通じません。私は一度、魔獣の尾に打ち据えられて地面に叩きつけられましたが、すぐに立ち上がり再び剣を振るいました。


その時、エドワードさんが魔法の呪文を唱え始めました。彼の手から光の矢が放たれ、魔獣の目に直撃しました。魔獣が一瞬ひるんだ隙に、私たちは総攻撃をかけました。


「今だ！一斉攻撃だ！」


私たちは一丸となって魔獣に向かっていきました。エドワードさんの魔法の支援もあり、ようやく魔獣は動きを鈍らせました。最後にエドワードさんが強力な魔法を唱え、魔獣の心臓を貫く光の槍が現れました。その一撃で魔獣は倒れ、静かに動かなくなりました。

私は息を切らしながら、地面に倒れ込む魔獣を見つめました。エドワードさんが私の肩に手を置き、笑顔で言いました。


「よくやった、皆。これで村は救われた」


私たちは疲れ果てていましたが、心の中には大きな達成感がありました。村に戻ると、村人たちが歓声を上げ、私たちを出迎えてくれました。宴が開かれ、美味しい料理とお酒が振る舞われました。私たちは村人に感謝され、とても幸せな気分になりました。


「ずいぶん酔いが回ってきたようですね」


しかし、その夜の宴の途中、村長が突然立ち上がり、異様な笑みを浮かべました。


「勇者たちよ、感謝しているよ。だが、君たちにはもう一つの役割があるんだ」


村長の言葉に、私たちは困惑しました。すると、村人たちが一斉に武器を取り出し、私たちを取り囲みました。


「何をするつもりだ？」


エドワードさんが冷静に尋ねました。村長はその問いに応えました。


「実はあの魔獣は、私のペットだったんです。あなたたちをここにおびき寄せるための餌に過ぎなかった」


私はその言葉に驚き、心の中が冷えました。私たちは騙されていたのです。


「なぜこんなことを……」


「あなた方を殺せば大金が貰えるからですよ」


私たちは村人たちに囲まれ、逃げ場を失っていました。エドワードさんがすばやく私の手を取り、静かに言いました。


「お前たちの企みは既に見抜いてる。だからこそ、罠を仕掛けさせてもらった」


エドワードさんの言葉に、村長は一瞬戸惑いの表情を見せました。その隙を逃さず、エドワードさんは手を振り上げ、呪文を唱えました。突如として地面が揺れ、足元から魔法陣が浮かび上がりました。村人たちは驚き、後ずさりました。


「な、何だこれは！」


村長が叫びましたが、エドワードさんは冷静に答えました。


「これでしばらくは動けないだろう。その間に真実を話してもらおうか」


村人たちは恐怖で動けずにいましたが、村長はまだ抵抗の意思を見せていました。エドワードさんはさらに呪文を強化し、村長の動きを完全に封じました。


「さて、誰があなたに私たちを殺すように指示したのか、教えてもらおう」


村長は歯を食いしばりながらも、ついに口を開きました。


「……バルドル公爵だ。彼が、あなたたちを消せば莫大な報酬を約束すると言ってきたんだ」


その名を聞いた瞬間、エドワードさんの表情が一変しました。彼は深い溜息をつき、私に向かって言いました。


「バルドル公爵は知られています。彼の背後にはもっと大きな陰謀があるかもしれない。我々は急いで公爵の元へ向かわねばならない」


私は驚きと不安でいっぱいでしたが、エドワードさんの冷静な判断に従うことにしました。村人たちはエドワードさんの魔法によってしばらく動けない状態でしたが、いつまでもこのままにはしておけません。


「村長、あなたたちの罪は重い。しかし、これ以上の流血は望まない。もう二度とこんなことをしないと誓うなら、命だけは助けてやる」


エドワードさんの言葉に、村人たちは一斉にうなずきました。村長も悔しそうな表情を浮かべながらも、最終的には同意しました。


「わ、分かった……もう二度とこんなことはしない」


エドワードさんは頷き、魔法を解除しました。村人たちは再び動けるようになると、すぐに武器を捨て、私たちに感謝の意を示しました。


「ありがとうございます……私たちが間違っていました。どうかお許しください」


エドワードさんは静かに頷き、村人たちに背を向けました。


「奴とはいずれ決着をつけねばならない」


エドワードさんは決意を込めて言いました。私も同意して頷きました。バルドル公爵の陰謀を阻止するため、私たちは急いで旅立ちの準備を整えました。