俺だけステータスが見える件～ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした～

15

ある日のこと、俺たちは冒険者ギルドに来ていた。そこで受付嬢から、とある依頼を受けることになるのだが……


「ナオト様、こちらになります」


受付嬢から依頼書を受け取った俺はその内容を確認する。そこにはこう書かれていた。


『魔族の調査をお願いします』


「……これはどういう意味だ？」


「そのままの意味ですよ」


受付嬢は笑顔で答えた。どうやら冗談ではないらしい。


「詳しく説明してくれ」


「はい。実は最近、この街の付近で魔物や魔族の姿が目撃されるようになったんです。それでギルドの方で調査を行ってほしいという依頼がきたのです」


「なるほど……」


確かにこの街の近くには森や洞窟などが多く存在する。そのため、そういった場所に潜んでいる可能性は高いだろう。


「分かった。引き受けよう」


「ありがとうございます！」


こうして俺たちは早速調査に向かうことにしたのだった。


「ここか……」


森の中を進んでいくと、そこには大きな湖があった。透き通るような水の中には魚たちが優雅に泳いでいるのが見える。とても綺麗な場所だ。だが問題はそれではない。問題は湖の底に沈んでいるものだ。


「あれは……船？」


そう、そこには巨大な船が浮かんでいたのだ！しかもただの船ではない。まるで豪華客船のような立派なデザインが施されているのだ！


「これは一体……」


俺が困惑していると、突然背後から声が聞こえてきた。


「あら？ お客さんかしら？」


振り返るとそこにいたのは美しい女性だった。年齢は20代半ばくらいだろうか？長く艶やかな黒髪に白い肌をしている。服装は黒いドレスのようなものを身につけていた。そして何より目を引いたのは彼女の背中から生えている羽である。天使のような純白の翼がそこにあったのだ！


「君は一体……」


俺がそう尋ねると、彼女は微笑みながら答えた。


「私はこの湖に住む女神です」


その言葉に俺は驚愕する。まさかこんな所に神様がいるなんて思いもしなかったからだ。だが納得できる部分もあった。確かに目の前にいる女性は普通の人間とは思えないほど美しく神々しい雰囲気を放っているからだ。


「それで？ あなたはどうしてここに？」


「実は最近、この辺りで魔物や魔族の姿が目撃されるようになったんだ。だから調査に来た」


俺は正直に答えた。すると女神様は考え込むような仕草を見せた後に言った。


「なるほど……そういうことですか」


どうやら彼女も何か知っているようだ。詳しく話を聞いてみると、なんでもこの湖には昔から魔物や魔族が棲みついているらしい。そして彼らは人間を襲わず静かに暮らしているそうだ。だが最近になってその均衡が崩れつつあるという。その原因を突き止めるためにも調査をして欲しいとのことだった。


「分かった。引き受けよう」


「ありがとうございます！」


こうして俺たちは湖の周辺を調べることにした。するとすぐに異変に気づいた。森の中に小さな小屋のようなものが建っていたのだ！


「これは……？」


恐る恐る中に入ってみると、そこには一人の男性が座っていた。年齢は30代くらいだろうか？ 整った顔立ちをしているがどこか陰鬱な雰囲気を漂わせている男性だった。彼は俺を見るとニヤリと笑って話しかけてきた。


「ようこそ我が城へ」


「あなたは一体……」


俺が尋ねると男は答えた。


「私はノワール。魔王軍の幹部だ」


ノワールと名乗った男は立ち上がるとゆっくりとこちらに近づいてきた。俺は身構えるが、彼は特に攻撃してくる様子はない。それどころか友好的な態度で接してきた。


「そう警戒するな。私はただ君たちと話がしたいだけだ」


「……分かりました」


俺の言葉を聞いてアミも臨戦態勢を解いた。それを見て安心したのか彼もまたリラックスした様子を見せている。そして俺たちに向かって話しかけてきた。


「まずは自己紹介をしよう。私は魔王軍の幹部ノワールだ」


「俺は勇者ナオトです。こっちは仲間のアミとソフィアさんです」


お互いに挨拶を済ませた後、話し合いが始まった。


「さて、早速本題に入りたいのだが……単刀直入に言おう。我々魔族は君たち人間に対して危害を加えるつもりは一切無い」


「……それは本当なのか？」


「もちろんだとも！ そもそも我々は人間と敵対するつもりなどないのだよ。ただ静かに暮らしていただけなのだからね」


彼の言葉に嘘はないようだった。現に俺たちに対して敵意を向ける素振りすら見せないからだ。


「では何故人間を襲う？」


俺が尋ねるとノワールは答えた。


「簡単なことだ。君たち人間が我々魔族の住処を荒らしているからだよ」


「どういうことだ？」


俺は疑問を投げかけるが、彼は淡々と語り続ける。


「君たち人間は我々の領土に勝手に入り込み好き勝手暴れているじゃないか？ だから我々は仕方なく反撃せざるを得なかったんだよ」


彼の言葉には怒りと憎しみが込められていた。確かに、人間と魔族の間には長い間の対立があった。だが、それを理由に暴力で解決しようとするのは避けるべきだ。


「分かった。ではどうすれば我々の共存が可能になるのか？」


俺は彼の提案を聞き出そうとした。するとノワールは一瞬考え込んでから、ゆっくりと話し始めた。


「まずはお互いの領土を尊重し合うことだ。君たち人間が我々の住処を侵さない限り、我々も攻撃しない。それが第一歩だ。そして、もう一つ提案がある。定期的に双方の代表者が会合を持ち、互いの問題や意見を交換する場を設けるのだ」


「なるほど、それは良い提案だ」


俺はその提案に賛同した。共存のための第一歩として、対話と尊重が重要だということを理解していたからだ。


「分かった。では早速、ギルドに戻ってこの提案を報告しよう」


「そうしてくれ」


ノワールはそう言って微笑んだ。彼の微笑みには少しの安堵が感じられた。


「ナオト様、これで魔族との問題が解決に向かうといいですね」


ギルドに戻ると、受付嬢がすぐに俺たちに気づき駆け寄ってきた。


「ナオト様、おかえりなさい。調査の結果はどうでしたか？」


「詳しい話は後で話すが、重要な提案がある。魔族との共存に向けた提案だ」


受付嬢は少し驚いた顔を見せたが、すぐに真剣な表情に変わった。


「分かりました。すぐにギルドマスターに報告します」


その後、ギルドマスターと面会し、ノワールの提案を詳しく説明した。ギルドマスターはその提案に真剣に耳を傾け、最終的には賛成した。


「ナオト、君のおかげで新たな道が開けるかもしれない。これからも協力していこう」


「もちろんです」


こうして、人間と魔族の共存に向けた第一歩が踏み出された。これから先、困難もあるだろうが、俺たちは必ず乗り越えてみせる。新たな冒険の幕が開ける中、俺たちは再び前へ進んでいくのだった。