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同期の話
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週末、彼に御曹司の件について報告すると彼は苦笑した。
どうやらよくあることらしい。
御曹司は御曹司とは言え一介のサラリーマン。職場では親のコネ等全くない状態らしい。
その上営業となればいろいろ付き合いがあるようで、今回も接待が入ったんじゃないかとの事。
月曜日、いつものように仕事をし、帰ろうとすれば女子社員がちらちら見る方に御曹司が立っていた。
「三杉さんっ。」
御曹司が駆け寄り、あたしはため息をついた。
「この間は本当に申し訳なかった。」
「どうでもいいわ、貴重な時間が戻ってくるわけじゃないし。」
「あの日は…。」
「私、言い訳なんて聞きたくないの。
話はそれだけ?」
「彼女は、まだ仕事中だろうか?」
彼女!
あの子のことを諦めきれずに来たの、この御曹司は。
「おふざけも大概にしてくださる?
私達、御曹司様のお遊びに付き合わされる程暇じゃないの。
あの子に手を出したらただじゃおかないから。」
しかし。
2週間後、彼女から報告があった。
「とりあえず友達から始めることにしました。」
よほど彼女をお気に召したらしい。
そんな風に私が密かに惹かれていた彼女は男と付き合い始めていた。
そしてその1年後、私は慣れ親しんだ姓を新たにした。
4月に入って2週目の月曜日。
私は人事部の部長に呼び出された。
私のような平社員が呼び出されるなんて珍しいことがある。
「実はだね、九州の工場にある支社の女性社員が休職することになってね。」
それが本社勤務の私と何が関係あるのだろうか?
まさか私が転勤?
そんなわけはない。
既婚女性に簡単に転勤を命じるようではこの会社もおしまいだ。
「はい…。」
「君の同期の生産管理部の彼女が引き受けてくれることになった。」
「えっ?」
私が声をあげると人事部長も苦笑していた。
「そうだよね。
ダメ元で声をかけてみたんだが即答しそうな勢いだったと聞いたよ。」
彼女はあの御曹司と付き合って3年。
そろそろ結婚の話が出てもおかしくはないだろうに。
「いい人材なのに残念だと生産管理部も言っているんだが、まあ、九州の事情もあるからね。」
「事情って伺っても?」
「30代後半のベテラン女性なんだがおめでた婚でね。体調を悪くして緊急入院をしたそうだ。今は落ち着いているがギリギリ間で働かせるのはね。まあ、僕の従姉妹なんだが、そんな血縁関係は関係なく、女性が働きやすい職場をって言っているからね。」
「そう、なんですね。」
高齢出産になるのだろうか。
大変そうだ。
「話がそれてしまったね。
実は生産管理部の彼女が内密に転勤したいと言っていてね。
かといって書類関係は総務部を通さずには話にはならないだろうから、彼女と同期の君にお願いをしたくて呼び出したんだ。」
「彼女の転勤に関する書類を私が処理する、ということですね。
かしこまりました。」
「申し訳ないがよろしくお願いする。」
そして彼女が転勤することを知っているのは人事部長と人事部係長補佐、ちなみに同期の男だ、と生産管理部の役職者、総務部長と私、あとは一応社長と副社長らしい。
「それにしても、どうして彼女が?」
選ばれたのだろうか。
「九州からの要望だったんだよ。」
内緒だけどね、と人事部長は教えてくれた。
どうやらよくあることらしい。
御曹司は御曹司とは言え一介のサラリーマン。職場では親のコネ等全くない状態らしい。
その上営業となればいろいろ付き合いがあるようで、今回も接待が入ったんじゃないかとの事。
月曜日、いつものように仕事をし、帰ろうとすれば女子社員がちらちら見る方に御曹司が立っていた。
「三杉さんっ。」
御曹司が駆け寄り、あたしはため息をついた。
「この間は本当に申し訳なかった。」
「どうでもいいわ、貴重な時間が戻ってくるわけじゃないし。」
「あの日は…。」
「私、言い訳なんて聞きたくないの。
話はそれだけ?」
「彼女は、まだ仕事中だろうか?」
彼女!
あの子のことを諦めきれずに来たの、この御曹司は。
「おふざけも大概にしてくださる?
私達、御曹司様のお遊びに付き合わされる程暇じゃないの。
あの子に手を出したらただじゃおかないから。」
しかし。
2週間後、彼女から報告があった。
「とりあえず友達から始めることにしました。」
よほど彼女をお気に召したらしい。
そんな風に私が密かに惹かれていた彼女は男と付き合い始めていた。
そしてその1年後、私は慣れ親しんだ姓を新たにした。
4月に入って2週目の月曜日。
私は人事部の部長に呼び出された。
私のような平社員が呼び出されるなんて珍しいことがある。
「実はだね、九州の工場にある支社の女性社員が休職することになってね。」
それが本社勤務の私と何が関係あるのだろうか?
まさか私が転勤?
そんなわけはない。
既婚女性に簡単に転勤を命じるようではこの会社もおしまいだ。
「はい…。」
「君の同期の生産管理部の彼女が引き受けてくれることになった。」
「えっ?」
私が声をあげると人事部長も苦笑していた。
「そうだよね。
ダメ元で声をかけてみたんだが即答しそうな勢いだったと聞いたよ。」
彼女はあの御曹司と付き合って3年。
そろそろ結婚の話が出てもおかしくはないだろうに。
「いい人材なのに残念だと生産管理部も言っているんだが、まあ、九州の事情もあるからね。」
「事情って伺っても?」
「30代後半のベテラン女性なんだがおめでた婚でね。体調を悪くして緊急入院をしたそうだ。今は落ち着いているがギリギリ間で働かせるのはね。まあ、僕の従姉妹なんだが、そんな血縁関係は関係なく、女性が働きやすい職場をって言っているからね。」
「そう、なんですね。」
高齢出産になるのだろうか。
大変そうだ。
「話がそれてしまったね。
実は生産管理部の彼女が内密に転勤したいと言っていてね。
かといって書類関係は総務部を通さずには話にはならないだろうから、彼女と同期の君にお願いをしたくて呼び出したんだ。」
「彼女の転勤に関する書類を私が処理する、ということですね。
かしこまりました。」
「申し訳ないがよろしくお願いする。」
そして彼女が転勤することを知っているのは人事部長と人事部係長補佐、ちなみに同期の男だ、と生産管理部の役職者、総務部長と私、あとは一応社長と副社長らしい。
「それにしても、どうして彼女が?」
選ばれたのだろうか。
「九州からの要望だったんだよ。」
内緒だけどね、と人事部長は教えてくれた。
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