別れの理由

梨花

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男の話

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俺は仕事に行き、何度か彼女のLINEにメッセージを送ってみたが何の連絡も来なかった。

夜、1度家に戻って再び彼女の住むアパートに行ってみた。
灯りはついていない。
しかし朝とは何か違う。
しばらく眺めていて気がついたのは彼女の部屋の新聞受けもポストも目張りがしてあった。
ひょっとして、今日引っ越した?
どうしたら彼女のことが聞き出せる?
落ち着け。
彼女との共通の知り合いは…いない。
彼女の交友関係なんて俺は知らなかった。
彼女の友人を紹介されたことなんてなくて。
そして思い出したのは彼女と知り合った合コンの幹事だった。
彼は大学の同期で、同期ばかり集められた合コンだった。
早速電話をしてみる。
「遅い時間に悪い。」
『久しぶりだな。』
電話の向こうで彼は苦笑していた。
「ごめん、急いでるんだ。
3年前に俺が最後に合コンしたときの女性の幹事の人と連絡取れないかな?」
『3年前の合コンて、あれか!
お前がしつこく口説き落としたっていう!』
一部の知り合いには有名な話になっているようだ。
「あぁ。
彼女に逃げられた。」
『あぁ。いかにも普通の子だったから、逆に目立ってたからなぁ。』
逃げられたのは当然と言いたげだ。
「彼女が今どこにいるのか知りたいんだ。」
『向こうの幹事は高校の友達だから連絡はつくと思うけど、その子がどこにいるか知っているかどうかはわからないぞ?』
「それでも、構わない。」

家に帰ってしばらくぼんやりしているとスマホがなった。
登録はしていない番号だった。
「もしもし。」
『お久しぶりです。私、3年前の合コンの女子の幹事をしていた三杉です。』
あぁ、とりあえず彼女への手がかりを捕まえた。
「遅い時間に申し訳ない。」
『いえ、問題ありません。』
「早速なんだけど、彼女が何処にいるのか教えて欲しいんだ。」
『それは、個人情報ですので教えられません。』
あっさり即答された。
「どうしても、彼女と会って話がしたい。
彼女の誤解を解きたいんだ。」
『では会ってお話をして、その誤解が解けると思っていますか?
今こうして彼女への連絡手段も彼女の行き先もわからない状態で。』
「っ…。
どんな状況であれ、俺はそうするつもりです。」
電話の向こうでため息が聞こえた。
『遅すぎだって、思わないんですか?』
「そうかもしれない。
でも、何もしないまま終わりたくないんだ。」
くすくすと電話の向こうで笑い声がする。
『今まで何もしなかったのに、今更でしょう?』
何もしなかったって。
「そんなことはないっ。」
『そんなこと言ったって、彼女は貴方のこと知らないでしょう?』
俺のことを、知らない?
「どういう意味…。」
『貴方が貴方の働く会社の創業者一族だって、気がついてないと思いますよ。』
確かにそんな話はしたことがない。
大抵俺自身の名前と社名を言えば気がつかれるけど。
『そういう所謂ブランドに彼女が興味がないのは知ってますよね?』
「あぁ。」
名前や見た目に左右される女じゃない。
彼女に惹かれた理由の1つだ。
『もし、彼女が貴方のことを知っていたら彼女はもっと早い時点で貴方の元を去っていたと思いますよ。』
それは。
ブランドに左右されないってことは、最初からブランドの名前を冠した俺は駄目だってこと?
『それでも足掻いてみたいですか?』
ゲームでもするかのように電話の向こうの女は言った。
「ああ。」
それでも、なんとしてでも取り戻したい。
『わかりました。
1度だけ、チャンスをあげます。
チャンスの神様は前髪しかないって知ってますか?』
「いや?」
チャンスの神様っていきなりなんだ?
『チャンスの神様は前髪しかないので来たと思ったらしっかり捕まえないと駄目だという話です。
つまり。
今までのように約束を守れなければゲームセットですよ。』
「あんた、何を…。」
『やだなぁ。
週の中頃になると駅のホームでため息ついてる彼女をよく見かけたって後輩が言ってただけですよ?』
約束が駄目になるのは大抵水曜か木曜で。
残念そうな素振りを見せなかったのは俺の目の前では見せなかっただけのこと、だった?
『とにかく、貴方の為に話をする場を作りますから、決まったら連絡しますから、その日1分でも遅刻すればそこで終了ですのでご了解くださいね。』
「わかった。」
怖い女だと思った。
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