上 下
31 / 44

送ってもらいました。

しおりを挟む
同期で友人の彩華に社内メールを送る。
やはり1人で社外を歩くのは不安だから。
アラサーの女の子が不安がるのはオカシイと自分でも思うけど。
彩華から了解のメールがきた。

定時は17時半。
まとめた書類は各々に社内メールで送る。
あたしは荷物を持って更衣室に行き、カバンに荷物を入れ替える。
携帯を確認すると大樹からメールが着ていた。
駅前のカフェにいるらしい。
あたしは同期にそこまで一緒に行くとメールを送る。
「行こうか?」
先に更衣室に来ていた彩華が声をかけ、あたし達は更衣室を出た。

「聞きたい事がいくつかあるんですが。」
彩華に言われてあたしは頷く。
「足のこと。あと今日のデートの相手。それから今日現れたコピー?のアメリカ支社の人。」
あたし達は上がってきたエレベーターに乗る。
「足は一昨日の同窓会で階段から落ちた時にやった。
今日のデートの相手は原本。
それから最後に言ってた人こそ原本その人です。」
エレベーター内にはあたし達以外にも人がいるからはっきりとは言えなかった。
階段から落ちた時の具体的なことも。
原本と呼んでる人の名前も。
でも彩華にはそれだけで満足したふうだった。
ひょっとするとこの場ではこれ以上聞けないことだと理解しているのかもしれない。

エレベーターを降りると相原と出くわした。
「また、いるぞ。」
また、ですか。
「どうする?」
大樹をカフェで待たせている以上、さっさと行かないと。
「時間がない。出るよ。」
「神村、まだ来てないみたいだけど?」
相原が言う。
「うん、大樹から買い物に付き合えって。」
相原はあたしの言葉を聞いて苦笑する。
「必死だなぁ。
途中までオレも一緒に行くか?」
あたしは首を振った。
「大丈夫。相原、まだ仕事残ってるでしょ?」
「そうだけどさ。」
「ありがとう。彩華もいるし大丈夫だよ。」
「…気をつけて行けよ。」
「うん。」

自動ドアを抜ければそこにはビジネスバッグを持った元婚約者がいた。
「深和っ。」
今にも泣きそうな顔にあたしはひいた。
「御用件は弁護士を通してお願いします。」
「やり直したいんだっ。」
「御用件は弁護士を通してお願いします。」
「深和、どうしてそんな事言うの?」
それはこっちのセリフだ!
「婚約破棄された相手と話をしたくないからです。
人と約束してますので。」
「待って!」
肩を掴まれてあたしは思わず彩華の腕を掴んだ。
「いい加減にしてくれませんか?彼女嫌がってるの分からないんですか?
一方的に婚約破棄して、彼女が弁護士を依頼したら執拗に追い回しておいて、何を今更寄りを戻そうとしているんですか?」
「それはっ…。」
「言い訳を聞きたいんじゃないんですよ。彼女の立場にたったら、仕事ごときで浮気するような男と寄りを戻したところでまた浮気されるのが関の山です。行くわよ。」
あたしは唖然と彩華を見ていたが、引きずられるようにしてその場を去った。
「なんなのよ、あの男。馬鹿じゃないの。」
「うん…。」
馬鹿でどうしようもない男だ。
どうしてあたしはあんな男と付き合っていたのか分からない。
「待ち合わせはどこ?」
尋ねられてあたしは駅前のカフェの名前を告げる。
「わかった。」
その後は黙って2人で歩いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最近様子のおかしい夫と女の密会現場をおさえてやった

家紋武範
恋愛
 最近夫の行動が怪しく見える。ひょっとしたら浮気ではないかと、出掛ける後をつけてみると、そこには女がいた──。

王女の朝の身支度

sleepingangel02
恋愛
政略結婚で愛のない夫婦。夫の国王は,何人もの側室がいて,王女はないがしろ。それどころか,王女担当まで用意する始末。さて,その行方は?

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

【完結】伯爵の愛は狂い咲く

白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。 実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。 だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。 仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ! そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。 両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。 「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、 その渦に巻き込んでいくのだった… アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。 異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点) 《完結しました》

慰み者の姫は新皇帝に溺愛される

苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。 皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。 ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。 早速、二人の初夜が始まった。

腹黒王子は、食べ頃を待っている

月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...