体育館と図書室の狭間

梨花

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週の明けた月曜の教室にはいつもと変わらない佐々木氏がいた。
お腹を下して、熱を出していたんだと話しているのが聞こえた。


昼休み、図書室で本を選び、今日はいつもの窓際の席には行かず、机に向かって座る。
「あんた、何も言わなかったんだな。」
向かいの席に座った男が言った。
「誰にも聞かれなかったからね。
…どうなの?」
私は尋ねた。
「まあ普通に歩けるし走れるんじゃね?」
微妙に遠回しな言い方。
「ふうん。」
それ以上は何も言わない。
「週末の試合までは何も言わないでくれ。」
「わかってる。」
私がこの間と同じ返事をすると男は席を離れた。

3日で恐らく捻挫したと思われる足が簡単に治るわけがない。
腫れは引いているかもしれないが、跳んだときの着地の衝撃は。
足に自分の体重以上の負荷がかかるはずで。
いつから練習を再開するか知らないが、週末の試合までは辛いだろうとは容易に想像できた。

その夜。
中学の時の友人である北見葉留佳から電話がきた。
「今度の土曜日、北高と練習試合があっていくんだけど会えないかなあ?」
葉留佳は高校に入ってすぐにバスケ部の男と付き合い始めたと聞いていた。
彼女が通う城南高校はバスケが強いらしく、県下でも一二を争うらしい。
そんな相手との試合となれば気合いも入っていたのだろうか。
私は佐々木氏のことを思い出していた。
「大丈夫だと思うよ。」


佐々木氏の昼練はその翌日から再開された。
ただし彼1人ではなく、バスケ部全体としての練習。
私はただ、彼の怪我が酷くならないことだけを願った。
彼のプライドの為に。


葉留佳からの話では練習試合は午後からだそうで、私は彼女と昼過ぎに昇降口で待ち合わせた。
「久しぶりだね。」
最後に彼女に会ったのは去年の夏休みだった。
顔を合わせなくても偶に電話やメールで連絡は取っていたからそれ程でもないとはおもっていたが。
「…綺麗になったね。」
私は驚いた。
「よく、言われる。」
そう答えて彼女ははにかんだ。
「でも、あたしはそんなに変わってはないつもりなんだけどね。」
私たちは靴を履き替えて体育館へ向かう。
「でも、前とは違う。」
「うん。
多少の努力はしてる。
彼に釣り合う女になりたいからね。」
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