ホワイトデー ラプソディ

梨花

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3月13日木曜日

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朝礼が終わり、各自自分の仕事に取り掛かる。
営業の面々はいくつかの仕事をあたしたち営業補佐に押し付けて外回りへと行った。

「ふう。」
昨夜の事を引きずっている自覚はある。
キーボードを打つ指がいつもに比べて冴えない。
内線の電話がなった。
「はい、営業木崎です。」
『総務柏木です。
村田主任より電話です。』
外からかかってきた電話だった。
「ありがとうございます。」
プチと音がして電話がつながる。
「木崎です。」
『俺だ。』
「オレオレ詐欺はかける番号が間違っています。」
電話の向こうでくすりと笑い声がした。
『村田だ。
午後から行くところに持っていく資料が俺のデスクに置いてないか?』
ちらっと主任のデスクを見る。
「いっぱいあってわかりかねます。」
『グリーンのクリアファイルに茶封筒が突っ込んであるやつ。』
「あー。わかりました。」
『11時半に◯◯駅に持ってきて。』
今は10時半。
あと30分は余裕がある。
「わかりました。」
『あと、ランチ何が食べたいか考えとけ。』
「わかりました」
いつもならもっとくだけた返事ができるが他の社員の手前、業務連絡の返事。
『じゃあよろしくな。』
電話を切る。
「村田主任ですか?」
笠井くん、1年前に入社してきた若い男の子が声をかけてきた。
「うん。
書類忘れたから届けて欲しいって。」
あたしは立ち上がり、課長のもとに向かう。
「村田主任が書類を忘れたそうで、11時半に◯◯駅に届けて欲しいということですので後ほど行ってきます。」
「村田が?
珍しいな。」
「はい。
明日は雪ですかね。」
「あー、それは困るな。
じゃあ、戻りは1時半ぐらいだな。」
外にでたついでにランチもどうぞということらしい。
「ありがとうございます。出る前にまた声をかけます。」
「ああ。」

 あたしの業務時間が1時間削られてしまい、ましてやさっきまでだらだらといつもの半分のペースでしか出来ていない資料作りを大急ぎで仕上げる。
急いだ分、グラフの色使いは適当になった。
仕上げたものの誤字脱字のチェックをして、担当者に社内メールの添付ファイルで送った。
付箋に『社内メールで依頼された資料送りました』と書き、シャチハタを押す。
最近のシャチハタは素晴らしい。
オーダーでフルネーム。
カバーも定番から可愛い柄まである。
オーダーでキャラクターまで入れられるのもあるけど仕事上それはちょっと問題なので。
普通に姓だけの朱肉色のものと、フルネームの丸ゴシックの紫を持っている。
プライベートの連絡は丸ゴシック。
そして今回も丸ゴシック。
送ったファイルはパソコンに保存して一度パソコンの電源を落とした。
付箋を担当者のパソコンに貼り付けて時計をみれば11時を回っていた。
財布と村田主任に頼まれた書類を握りしめて課長のところへ向かおうとして、向こうからこちらに気がつかれた。
追い払うような手の仕草。
肩に電話を挟んでもう片方の手にはペンがある。
忙しそうだと理解すればあたしは頭を下げて更衣室に向かった。

更衣室で自分のバッグに財布と書類をいれ、携帯と定期、化粧ポーチを確認してあたしは会社を出た。
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