魔法絵師マリカの不思議なアトリエ

O.T.I

文字の大きさ
上 下
15 / 20
幽霊婦人《シニョーラ・ファンタズマ》

家族

しおりを挟む

沢井が夏合宿の話を持ち出して3週間が経ち、その間に前期の講義のテスト期間もようやく終わりを迎えいよいよ夏休みが始まった

彰人と須田は訓練のためにサークル室ではなく朝から須田の家で2人で過ごしていた

「明日からの準備もうしたか?」

1時間の訓練が終わりいつも通り須田の膝の間でテレビを見ていると後ろから明日からのことを聞かれた

「だいたい、かな?」

「なに、まだ終わってないのあんの?」

「んー……ちょっと」

言い淀むと須田は彰人の頭上から覗き込むと聞いてきた

「海行ったことなくて、水着持ってないんですよね……」

そう言って苦笑いを見せると、そんなことかと須田は驚いた

「せっかくだし持っていくだけ持っていけば?入る入らないは行ってみてから決めればいいしさ」

須田のその言葉に悩みつつ頷くと、2人は須田の家を後にしてショッピングモールに向かった

「そっかぁ、彰人海初めてなんか」

感慨深げに横を歩く須田が呟くため、困ったように笑ってみせた

「泳ぐの苦手?」

「得意じゃないかなぁ」

「そっかそっか、まぁ海入るって言ったって足着くくらいのとこで遊ぶ程度だから怖かったら俺とビーチバレーでもしてような」

気遣うようにそう言って頭を撫でられながら歩くと、左腕をさすり喉の奥に支えるような感覚を心の奥底に押し込め明日からの夏合宿への期待で押し込めた

「これは?」

「派手すぎじゃない?!」

「目立つ方が見つけやすいなって」

「小さい子どもじゃないんだから!」

2人で彰人の水着を選んでいると、よく知った声が聞こえてきた

「相変わらず一緒にいるっすね」

「ん?お、沢井に上條じゃん。そっちも買い物?」

声に振り向くと、サークルの先輩の2人が連れ立ってその場にいた

「沢井さんが今更なって水着ないの気付いたって言い始めて」

暑い中引っ張り出され不服そうに上條がそういうと、横にいた沢井はけらけらと笑った

「いやぁ、去年遊びすぎて破けてたの忘れてて」

「事前に見るんすよ、絶対使うんすから」

「ごめんって」

パートナーとはいえDomの上條を振り回して明るく笑っている沢井の姿は、彰人にはまだまだ眩しく見えた

「山本も水着買ってるんだから俺と同じじゃん?」

「こいつはお前と違って、海行ったことないのー。一緒にすんなぁ?」

同じものを買っている彰人を仲間だと言わんばかりに沢井がそういうと、須田は一緒にするなと言い返していた

「ちぇ、まあ明日から楽しみましょう!」

拗ねた顔を一瞬作りつつ直ぐにそう明るく言って挨拶を済ませると、上條と共に会計へ歩いて行った

「あいつ、マジで嵐みたいなやつだな」

須田は2人の後ろ姿を見ながら呆れ顔でそう口にして、彰人はその言葉に小さく笑った
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

【前編完結】50のおっさん 精霊の使い魔になったけど 死んで自分の子供に生まれ変わる!?

眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
リストラされ、再就職先を見つけた帰りに、迷子の子供たちを見つけたので声をかけた。  これが全ての始まりだった。 声をかけた子供たち。実は、覚醒する前の精霊の王と女王。  なぜか真名を教えられ、知らない内に精霊王と精霊女王の加護を受けてしまう。 加護を受けたせいで、精霊の使い魔《エレメンタルファミリア》と為った50のおっさんこと芳乃《よしの》。  平凡な表の人間社会から、国から最重要危険人物に認定されてしまう。 果たして、芳乃の運命は如何に?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...