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剣聖の娘、裏組織と戦う!
従姉妹
しおりを挟むエステルとマリアベルが談笑する場へとやって来たレジーナ。
彼女はエステルの誘いに応じるが……
「…………」
「…………」
マリアベルとレジーナは笑顔を貼り付けたまま無言を貫いている。
(う~ん……やっぱり空気が重いなぁ……仲が悪いってわけでもなさそうなんだけど)
それだったらレジーナもこうして同席しないだろうとエステルは思うのだが、ではなぜ黙ったままなのか?と言われても理由が分からない。
しかし彼女は場の雰囲気に怯むような性格ではない。
戦いも会話も果敢に攻め込むのが持ち味なのだ。
だから……
「二人ともお知り合い……というか親戚同士なんですよね?何で喋らないんですか?」
なんてド直球を放り込んでくる。
流石は我らがエステルと言えよう。
「親戚……そうですわね。私と、マリアベル様やアルド陛下は、いとこ同士なんです」
「いとこ……そうね、そうだったわ」
二人の関係を説明するレジーナの言葉に、まるでその事実を忘れていたかのようなマリアベルの呟きが漏れる。
「???」
当然、彼女たちの関係を知らなかったエステルは、ますます意味が分からずコテンと首を傾げた。
その様子を見たレジーナは更に説明する。
「実は私とマリアベル様が初めてお会いしたのは、つい最近のことですわ。ですから、どう接したら良いのか……距離を測りかねてるところがありまして」
そう言いながらレジーナがマリアベルに視線を向けると、彼女も頷いて同意する。
エステルは、どうもそれだけじゃ無さそう……とは思ったものの、それ以上は聞かなかった。
そのかわり。
「じゃあ、これから仲良くしましょ~!せっかく歳も近いんだし」
と屈託なく言う。
一見お花畑な言動に見えるが、二人がお互いに険悪な感情を持っている訳では無いと見越した上でのものだろう。
エステルは女の勘は持ち合わせていないが、中々の観察眼の持ち主だ。
あるいは剣術にも通じるものがあるのもしれない。
そしてエステルに言われた二人は顔を見合わせて……お互いに、くすっと笑った。
「ふふ……そうですわね。マリアベル様、これからもこうしてお喋りしていただけたら嬉しいですわ」
「こちらこそ、レジーナ様……いえ、『様』付けはよそよそしいわね。私達はいとこ同士なんだから、もっと気軽にいきましょ」
と、二人は笑顔で言い、エステルは『うんうん』と頷くのだった。
そうして、暫くは3人でお喋りをする。
最初は他愛のない世間話だったが、ふとした流れで趣味に関する話になったとき、レジーナがエステルに聞いた。
「そういえば……エステルさんは剣術がお好きなのですか?」
「はい!……あれ?何で分かったんです?」
エステルは不思議そうに聞き返す。
レジーナの前では剣を振るった事も、話したことも無いはずだ。
「実は先日の夜、アルド陛下とエステルさんが手合わせしているところを見ていたのですよ」
「あ、そうだったんですね~」
「ええ。……お陰で翌朝、中庭は大変な惨状でしたが」
「あぅ……」
レジーナの言葉がチクリとエステルに刺さる。
因みに、アルドとエステルの激しい戦いに晒された中庭は、その日のうちに庭師の手によって見事に復旧を果たしている。
流石は後宮の庭師ともなると非常に優秀だ。
「あ~……兄様もドリスさんに怒られたって、反省してたわ」
「うう……私も陛下と戦えると思って、嬉しくてつい周りが見えてなかったです……」
しゅん……となって反省するエステル。
彼女は(特にクレイの前だと)無茶をしがちであるが、基本的には良い子なのだ。
「まあ、それは良いのですけど……あれ程の剣術、いったい何処で身につけられたのです?ダンスもお上手でしたから、運動神経に優れた方だとは思ってましたが……」
「えっと、剣はお父さんに教わりました。昔、王都で騎士をやってたって聞いてます」
「まあ、そうだったんですか……さぞかし高名な騎士でいらっしゃるのでしょうね。その方は……」
「さっきのクレイ君との手合わせも凄かったわ!」
レジーナが続けて聞こうとしたとき、マリアベルが話に割って入った。
彼女は先程行われたエステル達の手合わせが如何に凄かったかを興奮しながら語る。
そして、その後はまた別の話題へと移ったのだが……
マリアベルがわざとレジーナの質問を遮ったことに、果たして二人は気が付いただろうか?
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