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剣聖の娘、騎士登用試験を受ける……?

第二の課題……?

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 見事なダンスを披露するエステル。

 楽士隊が奏でる曲は佳境を迎え、彼女のステップも冴え渡る。
 曲調は段々と激しいものになり、それに合わせて連続ステップ、ターンを繰り返す。

 そしてフィナーレ。
 エステルは最後に大きくターンしてから、パートナーであるクレハの腕の中に収まって、ピタッ……と止まる。
 バッチリ決まった。


 ダンスが終わると二人は優雅に一礼する。
 エステルの挨拶はダンスと同じように見様見真似であるはずだが、堂に入ったもので実に様になっていた。



 驚くべき能力を発揮して、ダンス初挑戦ながら見事にやり切ったエステル。
 それを知るのはパートナーを務めたクレハだけだろう。
 その彼女も、エステルから直接聞いてなければ分からなかったはずである。


(エステル様……なんと凄いお方でしょうか。この方のパートナーを務めさせて頂いたのは、とても光栄な事だったのかも知れませんね……)

 エステルの才能の片鱗を見せつけられた彼女の心のなかで、高揚する気分とともにそんな思いが沸き起こるのだった。















「皆様、とても素晴らしいダンスを披露してくださいました。まさに、淑女のお手本となる技量の高さを示して頂きました」

 ダンスを終えた令嬢たちに、ドリスが称賛の言葉を送る。
 ここに集められた者は、何れも名家のご令嬢ばかり。
 当然夜会への出席なども多く、場数を踏んでるだろう。
 ……約一名を除いて。


 このメンバーの中で、全く悟られないどころか最高レベルの技量を見せたエステルが異常すぎる。
 ただテクニックを盗むだけなら、あるいは他にも同じ事が出来る者がいるかもしれない。
 しかしそれだけでは人を魅了することなど不可能だ。
 エステルのダンスは、彼女の溌剌さが良く表現されていた。
 元気で明るい彼女の内面が溢れ出し、見る者を楽しい気分にさせたのだ。




「さて、続いて次の課題ですが……場所を移しますので、私のあとに続いてお越しくださいませ」

 そう言ってドリスはダンスホールから出ていき、令嬢たちがあとに付いていく。


 エステルもそれに続こうとしたとき……彼女に声をかける者がいた。
 歳はエステルと同じくらいに見える。
 この場にいる令嬢たちは皆、見目麗しい者ばかりだが、彼女もその例に漏れず……白銀の髪と翠の瞳を持つ非常に美しい少女だった。
 少しキツそうなのが玉に瑕か。


「ちょっと……そこの貴女?エステルさんだったかしら?」

「ほぇ?私?」

 エステルは突然声をかけられ、びっくりして間の抜けた声が漏れる。


「そうよ。……あなた、ダンスは中々のものでしたが……調子に乗らないことね!」

「?」

 どうやら少女のライバル心に火がついたようだが、エステルはよく分かってない様子で小首を傾げる。


「国王陛下のパートナーに相応しいのは、この私!ミレー候爵家の長女たる私、ミレイユ・ミレーなのです!」

「あ、私はエステルって言います。よろしく~」

 取り敢えず、自己紹介された……と思ったエステルは、自分の名前を名乗る。

「エステルさんね。しっかり覚えたわ!貴女には負けないわよ!!」

「うん!一緒に頑張ろうね!!」

 一方的なライバル宣言にも、エステルはいつもの調子で満面の笑顔で返す。
 そして内心では……

(これってライバル……つまり、お友達になろう!って事だよね!嬉しいなぁ)


 エステル・ブレーンは人の言葉を自分の都合のいいように変換してくれる。
 さっきの有能ぶりはどこにいった。


「……っ!?ふ、ふんっ!!な、馴れ合しくしないでよね!私達はライバルなのよ!」

 屈託のない笑顔で返されたミレイユは、顔を赤くしてそんな事を言うが……ちょっと嬉しそうな雰囲気を隠しきれなかった。
 何ともわかり易いツンデレだ。



 そんなやり取りもありつつ、エステルたちは次の課題を行うという場所へとやってきた。

 その場所とは……



「さあ、ここが次の課題の会場となります」

 ドリスの言葉に、令嬢たちの間に戸惑いの空気が流れる。
 何故なら、その場所は貴族の令嬢が普段は立ち入らないようなところだから。


「……厨房?」

 誰かの呟きが漏れる。

 そう、そこは料理人が腕を振るう厨房であった。




 果たして、ここで行われる課題とはいったい何なのであろうか……?
 そしてエステルは、ここでも見事課題をクリアすることは出来るのだろうか?


 後宮審査会、第二ラウンドの始まりである。
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