ファンタスティック・ノイズ

O.T.I

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異能の目覚め

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「頼み事が、『異界』に囚われた人を救出する……というのは分かりました。そもそも僕たちも相原さんを助けるためにここに来たから、目的は同じなんですけど。でも、僕たちには特別な力なんてありませんし、一体どうすれば良いのか……。『適性』というのはそれに関係してるんですよね?」

 巫さんの頼み事について、出来るだけ協力はしたいと思うけど、その点が気がかりだった。
 果たして、僕達が持つ『適性』とは一体何なのか?

 その問いについては、ゼアルさんが答えてくれる。


「俺が『適性』と言っているのは、つまりだ……お前たちは異界への適応力が高い、ということだ」

「異界への適応力……?」

 まだ今いちピンとこない僕は疑問を呟く。


「そもそも、最初にあなた達がこの場所にやって来れたのも、それが理由よ」

 ゼアルさんの言葉を引き継いで、巫さんが続けて説明する。


「適応力のある俺たちだからこそ、この『幽世かくりよ』に来ることが出来た。ってことは……誰もがここに来れるわけではない?」

 巫さんの説明を聞いて、自らに言い聞かせるようにしながら、レンヤは呟いた。
 そして、ゼアルさんも巫さんも、それを肯定するように頷く。

「そういうこった。更に言えば……カナメや俺の『護り』があったとはいえ、幽世・異界から現界に戻り、再びまたここにやってくる……なんてのはそうそう出来る事では無え。その事実こそが、お前たちの適応力の高さを示している」

 ……って、昨日はそんなに危うかったのか。
 僕達の『適応力』とやらが高くなかったら、未だに迷ってたかもしれないんだ。
 そう思うとゾッとする。


「それともう一つ。異界への適応力が高いということは、異界の者との親和性も高いということ」

「……もしかして、ファナちゃんがユウキに懐いてるのは、それが理由?」

 異界の者との親和性……
 確かにファナは『異界の者』だけど。
 でも、妖精さんはあんなに沢山いたのに、ついてきたのは彼女だけだ。

「それは理由の一つね。あとは、その子とユウキさんの相性自体が良いのでしょう」

 相性……要するに僕を好きになってくれたって事だよね。
 何だか嬉しいなぁ……


「ユウキ!スキ!」

「……ふへ」

「あらあら……顔がだらしなくなってるわよ、ユウキ」

「あのクールな先輩が……」

「貴重だな」

 ……ん?
 後輩ふたりのコメントがおかしいぞ?
 クール?
 僕が?

「……一年生の間で、僕はクールキャラになってるの?」

「ええ。クールでミステリアス……って言われてますよ」

 なにそれ。
 と言うかさっきも思ったけど、何で僕が後輩たちの間で話題になってるの?


「はっはっは!!クールでミステリアスか!傑作だな!」

「あははは!!無口で無表情でぼ~っとしてるだけよねぇ……!」

 レンヤとスミカがお腹を抱えて笑いながら言う。
 ……キミたち、失礼じゃないか?



「と、ともかく。僕達に適性があるのは分かりました。あとは、具体的にどうすれば良いのか……」

「それもそうだけど、『異界』には危険もあるのよね。私はそれが心配なんだけど」

 僕が言い終わる前にスミカがそう言うが、たしかにそれは心配だね……

 自慢じゃないけど、僕は強くないから。
 得体のしれない……それこそ漫画とかゲームに出てくるようなモンスターが出てきても、逃げるくらいしか出来ないと思う。


「それなら、俺が何とかしてやる」

「ゼアルさん、良いんですか?あなた程の力を持ってると、影響が……」

「いや、俺が直接力を貸すわけじゃねぇ。……ちょっと待ってろ」


 そう言ってゼアルさんは目を閉じて集中し始めた。


『……我、赤竜王ゼアルの名において、汝らの秘めたる力をここに呼び醒まさん』

 彼が唱える言葉は聞いたことがないもの。
 でも、何故かその意味は分かった。

 そしてゼアルさんの身体から淡い光が発せられ……その光は僕達を包み込む。


「これ……は……?」

「なに……?身体の奥から……」

 レンヤとスミカから驚きの声が上がる。
 その理由は僕にも分かる。
 たぶん、僕と同じような現象が起こっているのだろう。

 お腹のあたりから生じた熱が、血流のように全身を巡り力が漲る。
 身体を作り変えられるような感覚を覚えるが、そこに恐怖はなく、ただ高揚感に包まれる。


「おぅ、やっぱり俺が見込んでいた通りだな」

「彼らにも、『異能』の力が……?」

「せ、先輩たち……!」

「何が起きてるんだ!?」


 ゼアルさんや巫さん、後輩二人の話し声が聞こえてくるけど、頭の中に入ってこない……
 そうしている間にも、自分の存在そのものが変わるような感覚が続いている。


「大丈夫だ、心配いらねえ。あいつらの秘められた才能を叩き起こしただけだ。……さあ、どんな力に目覚めるかな?」


 ゼアルさんが笑いながらそんな事を言う。

 一体……僕たちはどうなってしまうんだ?
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