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31 黒幕……?
しおりを挟むSIDE:ゼノン
メリア殿が予想した通り、呪いの起点となる品が娘への贈り物の中に紛れていた。
それは一見して唯のヌイグルミにしか見えなかったが……メリア殿の聖銀鏡の力によって呪いの根源はついに暴かれた。
しかし、パティエット様の神器を保有しているとは。
流石は森の魔女の後継者と言ったところか。
彼女の薬師としての実力、頭脳、そして異能の力……
先代の森の魔女メルセデス=ウィラーは、その強大な力によってウィラー大森林を不可侵領域として維持してきた訳だが、今代でもそれは健在という事だな。
それよりも、今は……
「これをロザリーに贈ったのは、確か……」
「ベルガー様です。お誕生日のお祝いに、と」
俺の呟きにグリーナが答える。
ベルガー……先ほど父と話をした時に思い浮かんだ人物の一人だ。
父の監視対象にも含まれているはず。
「ベルガー……と言うのは?」
「我が国の貴族……ランフェルト公爵家の当主だ。王家の傍流でもある」
ベルガー=ランフェルトは我がデルフィア王国の中でも、王家に次ぐ力を持った貴族家だ。
いまメリア殿に答えたように、過去に王家から枝分かれした傍流であり、王位継承権も持つ家柄だ。
故に、野心を持つこと自体は不思議ではないが……
「……あの小心者が、随分と大胆なことをしでかしたものだ」
少し、腑に落ちない。
黒幕の候補の一人として考えてはいたものの、普段の気弱な人物像からは意外な気もしたのだ。
しかしこうして証拠が出た以上は……
「何れにせよ……身柄を押さえ、証拠を突きつけねばなるまい」
「では、これで事件解決……ですかね?」
メリア殿が、ホッとしたように言うが……
果たして、すんなりと捕縛されてくれるかどうか。
もう一波乱ありそうな……そんな漠然とした不安を感じるのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
SIDE:メリア
一先ず黒幕が分かったことだし、私の役目もこれで終わりかしらね?
まだ、犯人を確保して、尋問して、裁判にかけて……と、やることは山積みだとは思うけど、もう私が出来ることは無いだろう。
ロザリンデ王女が完全に回復するまでは見届けようとは思うけど、それが終われば家に帰ることになるでしょう。
「メリア、お疲れさま」
「メリア、ありがとうございます。我々の任務が完遂できたのは、あなたのおかげです」
客室へ戻る道すがら、イェニーとグレンが労いと感謝の言葉をかけてくれた。
「ロザリンデ王女を助けることができて、私も嬉しいわ。もう少し診させてもらうけど……それが終われば、私は森に帰るわ」
「そっか…………あ、そうだ!わざわざここまで来てくれたんだから、デルフィニアの観光をしていったらどうかしら?私、案内するわよ」
森に帰ると伝えたら、イェニーは少し寂しそうにしてくれた。
そして、そんな提案をしてきた。
「そうね……折角だし、そうさせてもらおうかしら?」
「是非そうして!グレン様もご一緒にいかがです?」
「そうですね……お邪魔じゃなければ、ご一緒させてもらってもよろしいですか?」
「邪魔なわけ無いじゃない。よろしくね」
確かに、はるばる遠くまで来たのだから観光はしたいわね。
別に急いで帰る必要もないしね。
『王』なんて言ったってそんなものなのよ。
あ、レヴィも一緒に連れていけるかしら……?
あの子も退屈してるだろうし、散歩させてあげないとね。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
SIDE:???
どうやら屋敷の監視が強化されたようだ。
おそらくは犯人の目星がついたのだろう。
そして、証拠が固まれば……勅命を受けた騎士たちが大挙して屋敷に押し寄せてくるに違いない。
……もはやこれまで。
だが、ただでは済まさぬ。
それほど時間的な余裕はあるまいが……
例え証拠を固めても即座に動けるわけでもないだろう。
その間に、反撃の準備はさせてもらう。
例え王都を火の海に沈めてでも……私だけは生き残ってみせる。
さあ……目にもの見せてくれよう!!
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