【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

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レティシア15歳 輝く未来へ

第160話 救出開始

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 レティシアが最後に目撃された場所、関係しそうな場所の捜索は、騎士団や他の者たちに任せ、リディーはモーリス商会に急いで戻る。


「リディーさん!!会長は……」

「まだ見つかりません。ですが、手がかりはある。顧客との取引関連の書類を持ってきてもらえませんか。片っ端から」

「は、はいっ!」

 物静かだが鬼気迫るリディーの様子に、先に商会に戻っていたエリーシャは気圧されながらも即座に指示されたことに従う。



 そして、リディーは集められた資料を、レティシアばりの速読ぶりで確認していった。

 そして……


「……あった。これだ。この特徴的な筆跡……間違いない」

 その書類は、ある貴族家からの発注書。
 そこに記載された文字の特徴が、紙片に書かれていたそれと一致する……と、リディーは断じた。


 と、リディーが次の行動を開始しようとしたタイミングで……

「リディー!」

「フィリップ……ちょうど良かった。レティの居場所の目星が付いた。一緒に来てくれるか?」

「本当かい!?学園の方には全く手がかりはなかったんだけど……。よし、そこに行こう!」

「エリーシャさん、俺達は先にここ・・に行くから、リュシアン様に伝言をお願いします」

 そう言って彼は発注書に何か書き込んでから、エリーシャにそれを手渡す。


「これは……リグレ公爵家の……分かりました!!」


 そうして今度は、レティシアの救出に向けてそれぞれが動き始めた。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「リディー!リグレ公爵家って言ってたよね!?そっちは方向が……」

 疾走するリディーと並びながら、フィリップは慌てたように言う。


「本邸の方じゃない。リグレ公爵閣下の目の届くところで、そんな大それたことなど出来ないだろう。今から向かうのは、ボンクラ息子のセーフハウスの方だ」

「セーフハウス……なるほど。しかし、ボンクラ息子とは君もなかなか言うね。まあ、全くその通りなんだけど」

 フィリップも腸が煮えくり返るほどの怒りを持っているのは同じだ。
 リディーの言いようを意外とは思いつつも、全面的に同意する。

 レティシアの過去のトラブルと紐づけて、既に彼らは犯人を断定しているようだ。


「3年前の話……直接はレティからは聞かなかったが、噂は俺にも届いたからな。一応暫くは、アンリ様も俺もレティの身辺は警戒していたんだが。まさか今になって……」

 自分を責めるように、リディーは苦々しい表情で言う。

「君のせいじゃないでしょ。しかし、歪んだ思想の高位貴族ってのは、ホント厄介だね……」

「ああ。ここまで腐ったやつは見たことがない」

 リディーは学院生時代にいけ好かない・・・・・・貴族と接したこともあるが、精々がイヤミを言われるくらいだった。
 ……そもそも貴族云々の前に誘拐は犯罪なのだが。


 そして彼らは街を駆け抜ける。
 レティシアがダミアンに攫われたのならば……一刻の猶予も無い、と。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 貴族にしてはやや小ぶりだが、隠れ家セーフハウスと言うには立派な屋敷……その門前までやってきたリディーとフィリップ。


「ここか……どうする?リュシアンたちを待つ?」

 レティシアの事を考えれば、すぐにでも突撃したいところだが……流石に二人だけで突貫するのは危険だと、フィリップは考える。

「いや……時間が惜しい」

「分かった」

 リディーは一瞬たりとも逡巡することもなく決断し、フィリップも腹をくくる。
 二人とも、一刻も早くレティシアを救出しなければ……という想いは同じだった。


「だけど、真正面からは……って!?」

「[水龍]」

 どうやって侵入しようかと考えようとしたフィリップは、いきなり魔法を行使したリディーに仰天する。

 魔法で生み出された水の龍は、派手な音を立てて鉄の門を吹き飛ばしてしまった。


「ちょっ!?」

「俺は正面から陽動しながら行く。フィリップは裏手から……」

「……分かった。無茶しないでよ?」


 リディーをその場に残して駆け出したフィリップは、庭木の影に身を潜ませながら屋敷の裏手を目指す。

 そして、騒ぎを聞きつけた警備の者らしき男たちが屋敷の中から現れた。
 


「何だ!?てめぇ何者だ!!」 

「レティシアを返してもらいに来た」

「あん?何のことだ?」

 知っててとぼけているのか、本当に知らないのかはリディーには判断は付かなかったが、今の彼には関係なかった。

 そしてリディーが男たちの注目を集めている間、フィリップは素早く身を翻して屋敷の影に消えた。

 それを見届けたリディーは、再び魔法を使おうとするが……


「む……?」

「へへ……てめぇ、魔法使いだろ?この屋敷の敷地内じゃあ、魔法は使えねぇぜ」

 男たちの言う通り、リディーの魔法は発動しなかった。


「魔封じの結界か。なるほど、レティが捕まったわけだ。……だが、問題はない」

 魔法が使えないと言われても、彼は焦ることなく悠々と歩き始める。


「けっ!ハッタリだ!!野郎ども!畳んじまいな!!」

「「「おうっ!!」」」

 魔法が使えなければ、どう見ても荒事に馴れてるようには見えないリディーを彼らは侮っていた。

 しかしリディーは、彼らが襲いかかってきても悠然とした歩みを止めない。

 そして……


「[雷縛網]」

 リディーが魔法の引き金を引くと、バチバチと音を立てる雷光の網が男たちを一網打尽にしてしまう。

 それは殺傷力の低い捕縛用の雷撃魔法だ。

 魔法を受けた男たちは身体を痙攣させて動けなくなるが、意識は保っていた。


「な、なんで……魔法が……」

「魔封じの結界は確かに魔導士にとって厄介なものだが、対処法が無いわけじゃない」

「ば、ばかな……」

 それを最後に、男たちはパタリと動かなくなった。



「流石にマティス先生も、学院の秘術までは教えてなかったみたいだな。全部片付いたら、レティには対処法を伝えておくか」


 アスティカント学院魔法科を、弱冠15歳という若さで卒業した天才児。
 魔力の大きさや、使える魔法の種類はレティシアに及ばないものの……彼も不世出の魔導士であることに違いはなかった。


 そして、何事もなかったように彼は、レティシアを救出すべく屋敷に向かって歩いていくのだった。

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