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レティシア15歳 輝く未来へ
第146話 対抗戦三日目〜サバイバル(1)
しおりを挟むクラス対抗戦の三日目。
この日の目玉は何と言っても『サバイバル』だ。
全クラスから男女二名ずつの代表選手が一度に参加し、競技名どおり生き残りをかけて戦うというもの。
競技フィールドとなるのは、屋内を除く学園の全敷地内。
くじ引きによって全選手バラバラの状態でスタート、索敵と戦闘を繰り返し……制限時間となるか、生き残りが五人となった時点で終了となる。
1年1組の代表は、カティア、ステラ、ユーグと、フリードという男子生徒。
クラスの中でも指折りの実力者たちだ。
しかし、ステラとユーグは後衛戦力なので、この二人といかに早く合流して護れるか……が、鍵となるというのが、事前の打ち合わせで話されていたことだ。
全選手には魔道具の地図が配布される。
それは、最初は味方のクラスメイトだけが光点で示されるが、一定時間経過後、あるいは生き残りが一定人数となった時点で全選手の位置情報が開示されるというものだ。
これを駆使して、仲間同士合流して戦うのか、単独行動するのか……あらかじめ示し合わせた行動指針とも照らしながらも臨機応変に作戦を組み立てる必要がある。
そして、学園敷地内の随所に設けられた魔道具により、競技中の映像が大講堂のモニターに投影され、選手以外の学園生たちはそこで観戦することになる。
レティシアとルシェーラ、シフィル……それにメリエルも、モニターに注目しながら開始の合図を待っていた。
(やっぱり、ところどころハイテクだよね……ライブカメラはあるのに、写真は最近まで無かったのはチグハグな気もするけど)
そんなふうに、レティシアはこれまでも何度か抱いた感想を思い出す。
彼女が推進する『鉄道』が比較的短期間で実現に漕ぎ着けようとしているのも、もともとそんな素地があるからだろう。
そして全選手がくじで決められた初期配置につき、いよいよサバイバル戦がはじまる。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『さあ、いよいよ始まりましたサバイバル!学園を舞台に繰り広げられる生き残りをかけた熱い戦い!果たして、選手たちはどんなドラマを見せてくれるのでしょうか!?』
全校アナウンスで開始が告げられると、大講堂には実況アナウンスの声が響き渡った。
「生で見るのとはまた違った趣きだね(パブリックビューイングみたいな感じ?)」
「情報が多すぎてちょっと見づらいですわ……でも、とりあえずはカティアさんたちに注目しておきましょうか」
なにせ学園敷地内の各地から情報が送られてくるので、モニターの映像は選手たちの動向に応じて目まぐるしく切り替わる。
ただ、特に注目すべき選手は集中して映し出されるようで、カティアはそのうちの一人だ。
『今回の注目選手をご紹介しましょう!先ずは……いまモニター15に映っておりますのは……みなさまもよくご存知の生徒会長、3年1組のアルフレド選手です!』
「あ、ルシェーラちゃんのお兄さんだね」
実況アナウンスの紹介に、レティシアが呟く。
ルシェーラとは幼少の頃から何度も会っているが、彼女の兄と初めて会ったのは学園に入学してからのこと。
彼は初等学園から王都に住んでいたので機会が無かったのだ。
「お兄様は指揮官タイプですから、合流されると厄介ですわよ」
モニターを見ながらルシェーラは言う。
ルシェーラも頭脳明晰明晰だが、どちらかと言えば武闘派だ。
そんな妹とは対象的に、兄は知略に優れているらしい。
サバイバル戦に出場する以上は、ある程度の実戦もこなせるだろう。
そして実況アナウンスは有力選手の紹介を続けるが……
『最後に、何と言っても今回の最注目はこの方でしょう!!1年1組カティア選手です!』
「それはそうよね。武神杯の優勝者、ブレゼンタムとレーヴェラントを救った英雄……ちょっと学生が相手するのは酷じゃないかしら?」
「シフィルとカティアは武術対抗戦は出禁だったんだよね。こっちは何でOKなの?」
シフィルの言葉に同意しながら、メリエルがそんな疑問を投げかける。
それに答えるのはルシェーラ。
「武術対抗戦は一対一ですので、レベル差を覆すのはなかなか難しいですわ。でも、こちらは不意打ちや複数人数で取り囲んだりする事もできますし、強敵を倒すために一時的に共闘する……なんてことも考えられます。作戦次第では例えカティアさんでも油断は出来ませんわよ」
「そっか~、なるほどね~」
「それでもやっぱりカティアは最後まで生き残るとは思うけどね」
「……ですわね。油断禁物なのは当然ですが……カティアさんは感覚も鋭いので不意打ちも難しいでしょうし、生半可な実力では何人集まっても攻略は困難だと思いますわ」
シフィルは武神杯でカティアと直接戦っているし、ルシェーラも様々な事件で共に戦ってきた経験がある。
実力をよく知る彼女たちならば、そのような結論になるのは当然か。
だが、武術の実力者二人の言葉を聞きながら、レティシアは思う。
(確かにカティアが強いのは分かるんだけど……何か波乱が起こりそうな予感がするんだよね。それに、ルシェーラちゃんも言葉ほどには楽観視してないみたいだし)
それは、なんとなく……という程度の単なる彼女の勘に過ぎない。
果たしてそれは現実となるのか……
既に戦いは始まり、各選手たちは息を潜めながら慎重に行動を開始していた。
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