【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

文字の大きさ
上 下
158 / 191
レティシア15歳 輝く未来へ

第142話 クラス対抗戦

しおりを挟む


 入学から数ヶ月が経ち、レティシアが学園の生活にもすっかり慣れたころ。
 その話題が上がったのは、学園の授業の合間の休み時間……彼女がいつものように教室で友人たちとお喋りしていたときのことだ。



「『対抗戦』?」

「そう。学園の目玉イベントの一つね。……カティア、知らなかったの?」

 小首をかしげて聞き返すカティアに対して、最初にその話を始めたシフィルが、やや呆れたように言った。

「そう言えば年間スケジュールで見たような気がするけど。でも、どんなイベントなのか詳細は確認してなかったな……」

「変なところで抜けてるわよね、あなたって。じゃあ、詳しい事は分からないのね」

「私も、よく分かんない!教えて、シフィル!」

「……メリエルもか。他の皆は分かってるわよね?」

 その言葉に、レティシア、ルシェーラ、ステラは揃って頷いた。

「でも、私も概略を知ってるだけで、別にそれほど詳しいわけじゃないよ」

 一応、レティシアはそう補足した。


 そしてクラブ活動の先輩から聞いたらしいシフィルが説明する。
 それによると……簡単に言えば様々な競技をクラス別対抗で競い合う大会と言うことだ。


(要するに、前世の運動会みたいなものだよね)

(そんな感じかな。スポーツ以外の競技もあるみたいだけど)

 カティアの耳打ちにレティシアが囁やき返す。

 陸上競技や球技はイメージが近いかもしれない、
 しかし、球技は彼女たちの前世のものとはかなり違うし、チェス(のようなもの)や、クイズ大会などもあったりする。

 そして、その中でも注目なのは。

「花形は『武術対抗戦』『魔法対抗戦』『魔法競技』『サバイバル』あたりみたい。ぜひ、そのどれかには出たいところだけど……私とカティアは『武術対抗戦』は出場禁止だって」

「え……なんで?」

 シフィルの言葉に、カティアが目を丸くして言う。

「ほら、私達は武神杯の本戦出場者だから。学生のレベルとは違いすぎる……だって。スレイン先生に言われたのよ」

「……解せぬ」

「まあまあ。あなた達が出たら他の対戦者は……死、あるのみ!だからね。しょ~がないよ。そうすると、ウチのクラスはルシェーラちゃんで決まりかな?」

「順当だね。それで良いんじゃない?反対も無いだろうし。でも来年は私達と同じで出場禁止になったりして」

 レティシアの言葉にカティアも同意する。
 彼女の話によれば、ルシェーラは以前より成長著しかったが、最近のダンジョン攻略で更に力を付けているとのこと。
 こと武術の実力だけで言えば、カティアやシフィルとも実力差は無いらしいので、来年出場禁止になるというのもあながち冗談ではないかもしれないが……

「……そうでしょうか?」

 当の本人はまだまだ二人には及ばないと考えているようだ。



「そしたら、私は『魔法競技』に出ようかな……」

 シフィルは魔法競技のクラブに入ってるので適任だろう。


「ん~……私はどうしようかな……『魔法対抗戦』は、うちのクラスには『最終兵器魔法少女』のレティがいるし」

「……物騒な名前つけないでよ」

 カティアが付けた変なあだ名にレティシアは不服そうに言うが、他の皆は納得顔だ。


「2組はメリエルで決まりでしょ?でも、レティ対メリエルの魔法対決なんてやったら……学校なんか吹き飛んじゃいそうね」

「「そんな事しないよ!?」」

 今度はシフィルが言うと、当人たちから鋭いツッコミが入った。
 ……しかし、『できない』ではなく、『しない』というあたりが恐ろしい。

 この学園ではレティシアとメリエルが、全学年を通じても突出した魔法力を持っており、事実上の二強だろう。


「でも私は実戦はからっきしだし……」

「いや、あなたの場合は開幕飽和攻撃で全部ゴリ押しできるでしょ。対抗できるのなんて、それこそメリエルくらいよ」

 自信なさげなレティシアに、事もなげにシフィルが言う。

「私達より出禁にすべきでは……」

 ぽつりとカティアが零すと、やはり他の皆も頷いた。





「みんな盛り上がってるけど……他の子たちの希望もあるのよ。たぶん、そろそろホームルームで話し合う事になるんじゃないかしら?」

 自分たちが出場したい競技で盛り上がる彼女たちだが、ステラが冷静に言う。
 彼女自身は、これと言って特に出たい競技はないらしい。


「あぁ、それなら……スレイン先生が、今日のホームルームで決めるって言ってましたよ」

 ちょうど彼女たちの近くを通りがかったクラス長のユーグが、ステラの言葉を聞きつけて答えた。


 そして彼の言葉通り、その日のうちに『対抗戦』で誰がどの競技に出場するのかが決まる。

 その結果、概ね彼女たちが話をしていた通りとなった。
 決定したのは以下の通り。

 レティシア…………『魔法対抗戦』
 カティア、ステラ…………『サバイバル』
 ルシェーラ…………『武術対抗戦』
 シフィル…………『魔法競技(マギ・ボール)』

 2組のメリエルも、レティシアと同じく『魔法対抗戦』に決まったようだ。
 果たして、校舎は大丈夫なのだろうか。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...