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レティシア15歳 輝く未来へ
第141話 モテ期
しおりを挟むレティシアとユリウスの挨拶のあと。
神殿関係者が中心となって、国の守護神であるディザールや、技巧神であるオーディマに祈りを捧げるなどの神事が行われた。
(カティアとフィリップさんもいるから、ご利益ありそう)
二神の印を持つ二人がこの場にいる事を思い出し、レティシアはそう思った。
そして式典が終われば、会場はそのまま立食パーティの場となる。
係の者が素早く会場のセッティングを行い、料理や飲み物が次々と運び込まれ……あっと言う間に準備が整った。
見事な手際の良さである。
やがてパーティが始まれば、招待客たちは思い思いに交流を深め、料理を堪能し……そしてレティシアの下には多くの人々が集まるのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「レティシア様。もしよろしければ、結婚を前提に私とお付き合いを頂けないでしょうか……?」
「え~と……申し訳ありません、今は鉄道開業に向けて注力してるところなので……他の事はまだ考えられないんです」
もう何度目かになるその誘いを、やんわりと断るレティシア。
いま話をしているのは、モーリス領の隣であるリッフェル領の若き領主。
名前をヨルバルトと言い、レティシアも面識はある。
物腰柔らかな好青年で、領民からの支持も厚いらしい。
「そうですか……残念ですが、そういうことであれば仕方ありませんね。ところで、少し気の早い話ではありますが、イスパルナから西方への延伸はお考えで?」
あっさりと引き下がった彼は別の話題をふる。
婚約の話も冗談ではないだろうが、どちらかといえば鉄道の話の方が本題のように思われた。
隣の領まで鉄道が出来るのであれば、当然それは気になるところだろう。
「あ、はい。それは考えてます。先ずはアクサレナ~イスパルナを確実に開業させてからにはなりますが……ブレゼンタムまでの延伸は既に検討を始めてますね。ブレーゼン候爵閣下ともお話してますが、いずれは正式な会議体を設ける予定です。なので、ヨルバルト様にも参加をお願いすることになるかと思います」
「そうですか、良かったです。ではその連絡を待つことにしますね」
それからヨルバルトとは幾つか言葉を交わしたあと、彼は別の人と話をするため立ち去っていった。
その後もレティシアの下には多くの人が訪れる。
ヨルバルトと同じく、自領にも鉄道を引きたいとい相談と、若い男からはやはり婚約はどうか?という話も多く聞かれた。
(……モテ期到来!!)
カティアのお披露目パーティから少しずつ問い合わせも増えたりしていたのだが、こうしてひっきりなしに聞かれると、それを実感するレティシアである。
(べつに嬉しいわけじゃないけど、公爵令嬢としての面目躍如だよ!)
……結構、彼女も世間体を気にしていたようだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「……分かっていた事だけど、かなりライバルが多いね」
「……そのようだ」
工事関係者と話をしていたフィリップとリディーは、遠目にレティシアの様子を眺め、彼女の人気ぶりを改めて確認していた。
「彼女ほどの魅力的な女の子、それも高位貴族令嬢が未だに婚約者もいないというのだから、当たり前だよね。まあ、でもさ……実質的には僕と君の一騎打ちだと思うけど」
「随分、自信があるんだな」
自信ありげなフィリップに対して、リディーは懐疑的である。
友人としては仲が良いのは間違いないと思うが、そこに恋愛的な感情を見たことがない……と、彼は思っている。
そのようなことをフィリップに話すと……
「それは僕も同じだけどね。意識的なのか無意識なのか分からないけど、どういうわけか彼女はそういった感情を抑えようとしている……気がする」
それはリディーも感じていた事だ。
彼がレティシアに対して積極的になれないのは、それも理由のひとつだろう。
下手なことをすれば、今の心地よい関係が崩れてギクシャクしてしまうのでは……と。
「でも……彼女自身が言ってるように、鉄道の開業は一つの区切りだろう。その時にもう一度…………きっと、今度は答えを出してくれるはずだよ」
「…………」
その日を迎えれば、フィリップは迷いなく再びレティシアに婚約を申し込むだろう。
しかし、リディーはまだそこまでの踏ん切りはついていない。
彼は、その日が訪れるのが待ち遠しいような、不安なような……複雑な感情を抱くのだった。
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