【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

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レティシア15歳 輝く未来へ

第138話 休み明け

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 更に時は過ぎ……年が明け、学園の冬休みも終わった。

 久しぶり学園に登校したレティシアは、同級生たちと再会し、お互いに近況を報告し合う。
 学園では同様の姿があちこちに見られ、冬休み中の静けさから一転して活気を取り戻していた。




「カティア、レーヴェラントでは大変だったみたいだね」

「そうなんだよ~……もう、色々あってさ」

 レティシアが話を振ると、カティアはレーヴェラント王国での出来事を語り始めた。

 彼女はテオフィルスと正式に婚約するため、かの国を訪れた。
 そして、婚約自体はすんなりと成立し、諸々の手続きも滞りなく進んだのだが……


 レーヴェラントでは北部のグラナ帝国との国境地帯に不穏な動きが見られ、警戒態勢が敷かれていた。
 それはカティアも出発前から認識しており、何か事が起これば彼女も力になるつもりであった。
 そして、その懸念は現実のものとなる。

 レーヴェラントはグラナ帝国の動きを警戒するため、国軍の戦力を国境付近に集めていたのだが……
 手薄になっていた王都レーヴェンハイムの隙を突くように魔物の軍勢レギオンが現れて侵攻を始めたのだ。
 それは、かつてプレゼンタムで起こったものとは比較にならないほど大規模なもので、王都は陥落の危機にさらされることになった。

 しかし、カティアの能力……プレゼンタムでカティアが英雄と呼ばれる所以ゆえんとなった『絶唱』というスキルの力により、何とか魔物の軍勢を撃破することができたのだった。


「流石は英雄『星光の歌姫ディーヴァ・アストライア』だよね~」

「その二つ名はやめて……。でも、私の『絶唱』は味方の能力を底上げするだけだからね。実際に戦ってくれた皆が頑張ってくれたから勝てたんだよ」

 それは謙遜ではなく、本心からの言葉。
 さらに彼女は続けて言う。

「テオがシギルの力で『絶唱』そのものの効果も引き上げてくれたのも大きいし……あと、『魔族』が私のこと狙ってきたんだけど、ミーティアとフェレーネお義母かあさまが護ってくれたんだ。だから……ブレゼンタムの時もそうだけど、皆の勝利だね」

 フェレーネはテオフィルスの実母、レーヴェラント王の側室だ。
 聞けば元々は平民とのことで、同じく平民として暮らしていたカティアの事をたいそう気に入ったらしい。
 しかも彼女は高ランクの冒険者でもあり、その点でもカティアと話が合ったようだ。


「でね……初めてお会いしたとき、お義母さまは身重だったんだけど……滞在中に出産されたんだ。テオの年の離れた妹ちゃんってことになるんだけど、私が『ティアラ』って名前をつけたんだよ」

 カティアが訪問したタイミングでの出産だった事もあり、縁を感じたフェレーネからの頼みだったとのこと。
 そして、自分に縁があるのなら……ということで、『カティア』とレーヴェラントの守護神である女神『リヴェティアラ』から名付けられたのである。


「ふむふむ……しゅうとめさまとも良好な関係を築けそうって事か。何よりだねぇ」

「本当ですわね。私もアデリーヌ様には可愛がって頂いてますし、幸せなことですわ」

「ルシェーラちゃんは小さい頃から兄さんの婚約者だから、父さんも母さんも実の娘みたいに思ってるよ」

 なお、ルシェーラはレティシアの年下の義姉と言うことになる。




「でも……グラナ帝国か。また戦争を起こそうとしてるのかな……」

 明るい話から一転して、レティシアは不安そうな表情で言う。

 ブレゼンタムやレーヴェラントでの魔軍侵攻、リッフェル領での事件、王都で起きたミーティア誘拐事件……カティアがこれまで関わってきた数々の出来事の裏には、グラナ帝国を本拠とする『黒神教』が暗躍していた。
 それらの不穏な動きから、グラナ帝国が再び侵攻を始めるのではないか……と、レティシアは心配になったのだ。

「可能性は、高いかもしれない。そして、それ以上に……」

 カティアは途中で言葉を濁す。
 彼女はグラナの侵攻などよりも、もっと大きな何か・・が起きると漠然と感じている。
 それが何なのかはまだわからないが……それは、そう先のことではない。
 そして、自分はそれに大きく関わる運命にある……と。


「今は各国にも警戒を呼びかけてるし、とにかくグラナの動向には目を光らせておかないとね。……まあ、それは置いといて。ルシェーラたちは休みの間どうだったの?みんなで冒険者の活動するとか言ってたけど」


 そして話題は、ルシェーラと寮生組へと移る。
 彼女たちは休み前に予定していた通り、冒険者として活動を行っていた。
 
「私達はダンジョンに挑戦してましたわ」

「結構頑張ったよね。順調に10階層まで攻略できたし」

「ちょっと無理した気もするけど……」

「でも、いい経験になったよ!」

 ルシェーラ、シフィル、ステラ、メリエルがそれぞれ言う。

 彼女たちが挑戦した『ダンジョン』とは、世界各地にある特殊な地下領域であり、アクサレナ近郊にも何箇所か入口がある。
 アクサレナ・ダンジョンは世界最大級の規模と言われ、未だ最深部まで到達したという報告はされていない。
 現在の到達記録はおよそ30階層程度だが……研究者によれば、その倍以上の階層があるだろうと予測されている。

「冬休みだけでそこまで攻略するなんて、みんな凄いね」

 カティアは彼女たちの攻略ペースの速さに驚くが、彼女たちの実力なら納得もしている。

 パーティ構成としては……
 前衛アタッカーのルシェーラ。
 武器も魔法も得意で前・後衛ともにこなせる万能型のシフィル。
 弓による支援と戦闘指揮、そしていざとなればシギルを使う事ができるステラ。
 レティシアにも匹敵する魔法の才能を持ち、魔法による攻撃、支援、防御、回復と幅広い役割が可能なメリエル。
 彼女たちのパーティは、非常にバランスが取れてると言えた。


(ダンジョンか……話には聞いたことがあるけど、なんかゲームみたいなんだよね。まあ、私が関わることはないだろうけど)

 例え彼女に稀有な魔法の才があっても、実戦闘でそれを発揮できるとも限らない。
 彼女はその事をよく理解していた。



「レティシアさんは商会のお仕事で忙しかったのですわよね?」

 ひと通りダンジョンでの出来事を話し終えたルシェーラが、最後にレティシアに話をふる。


「うん。鉄道事業もいよいよ大詰めって感じだから。ほとんどそれ関連の仕事をやってたよ。……あ、そうだ。もう少ししたら、アクサレナ駅の起工式をやるんだ。良かったらみんなも見に来てね」

 先日の都市計画会議の中で、アドレアン伯爵から提案されたそのイベントは、滞りなく調整も進んで近日中に行われることになっていた。

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