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レティシア15歳 輝く未来へ
第133話 無自覚な罪つくり
しおりを挟む「えっと……つまり、どういうことなんですか?」
いまだ混乱の中、とりあえずフィリップが教師として赴任した経緯を聞くレティシア。
なぜ王族が臨時教師などやることになってるのか……
「前任の先生が産休に入ることになったんで、臨時を頼まれたんだよ」
「なんでフィリップ様に……?」
「その先生は僕も生徒としてお世話になったんだけど、彼女はヴァシュロン王国ゆかりの人なんだよ。その縁で声をかけてくれたってわけ。いちおう僕は教員資格も取ってたし……。それにもともとアクサレナに来る予定だったから、丁度良いってことで話を受けることにしたんだ」
「そうだったんですか……。でも、なんで変装して偽名なんか名乗ってるんです?」
最初は、王族であることを隠すため……と、彼女は思ったのだが、そこまでする必要があるのだろうか。
異例のことかもしれないが、もともと生徒として学園に縁があるのだし、短期間なら別に不思議な話ではない……と思い直したのだ。
「驚いただろう?」
「……まさか、私をびっくりさせるためだけに?」
その問いにフィリップは直接は答えないが、その表情が『その通り』と雄弁に語っていた。
レティシアは思わずジト目を向ける。
と、そこで彼女は先程のフィリップの話の中で気になる言葉があったことを思い出す。
「そういえば、もともとアクサレナに来る予定だったって……」
「あぁ、実は……イスパルでの正式開業を待たずして、ヴァシュロンでも鉄道を建設することが決まったんだ」
「本当ですか!?」
レティシアは思わず驚きの声を上げる。
既に技術的には実用レベルまで来ているとはいえ、まだ実績もない状態で導入を決めたことが意外だったのだ。
「そこまで驚くほどのことじゃない。この前の視察には、僕をはじめとしてヴァシュロンでも実績のある有力な技術者たちが揃ってたからね」
つまり、発言権のある者たちが直接その目で確認し、実現可能性と有用性を認めたからこそ……ということである。
王族のフィリップが更に後押ししている、というのも大きいだろう。
「それじゃあ、アクサレナに用事というのは……?」
「具体的なプロジェクト立ち上げ前に、先行事例であるイスパルでのこれまでの経験を学ばせてもらおう……ってね。技術面もそうだけど、国家としてどう関わっているのか……法整備とか、組織体とか、そういうところかな」
「なるほど、そういうことだったんですね。……もう、事前に連絡してくれても良かったのに」
拗ねたように彼女は言う。
そんな素の表情を見せるのも、彼女がフィリップに気を許しているからだろう。
「あはは、ごめんごめん」
「それで、父さんや兄さんは……?」
「もちろん知ってるよ」
「……まったく」
まあ、いつもの事である。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「それじゃあ……友達を待たせてるんで、私はそろそろ行きますね」
それほど話し込んでいた訳ではないが、あまりカティアたちを待たせるわけにはいかない。
レティシアはそう思い、話を切り上げようとする。
「クラブ見学だね。レティはどこに入るか決めてるのかい?」
「私は『魔道具研究会』にしようかな~……って。あんまり活動に参加できないかもですけど」
「魔道具研か。僕もそこだったんだよ」
「あ、そうだったんですね!」
「懐かしいな……僕も後で顔を出そうかな。……おっとすまない、友達を待たせてるんだったね。さ、もう行くといいよ」
思わず引き止めてしまったことを謝り、彼はレティシアを送り出す。
そしてレティシアは、去り際に振り向いて……
「そうだ、忘れてました。……これからよろしくお願いしますね、センセイ!それでは、失礼しま~す!」
満面の笑顔でそう言ってから、彼女は出ていった。
「……参ったね。まったく、あの娘は……自分の笑顔の破壊力を分かってるのかな?」
不意を突かれて固まっていたフィリップは頬を掻きながら苦笑し、そう呟くのだった。
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