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レティシア15歳 輝く未来へ

第132話 予期せぬ再会

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「じゃあ、ホームルームはこんなとこだな。今日はこれで終わりだが、明日から早速授業があるからな。遅刻しないように。ああ、それから…今日はお前たちの先輩どもが校内の各場所でクラブ活動の紹介をやってる。このまま帰っても良いが、興味があれば見ておくといい」

 ホームルームが終わり、スレインが締めくくった。
 これで新入生の今日の予定は終わりとなるが、放課後にクラブ見学の時間が設けられているとのことだった。









 ホームルームが終わったあとの教室にて。
 レティシアはすぐには帰らず、友人同士で集まって話をしていた。
 隣のクラスからメリエルも来ている。

 そのような集まりは彼女たちだけでなく、教室内に似たような光景があちこちで見られた。



「ねえ皆、クラブ活動見ていく?」
 
「私はねぇ、『魔道具研究会』を見てみたかったんだよね。商会の仕事もあるから、あまり活動できないかもだけど……」

 カティアの問いにレティシアが答える。
 ある程度は商会の仕事も任せられるようになったとはいえ、彼女は会長としてやるべきことも多々あるので、どこかに所属するにしても活動は限定的になるだろう。

 そしてレティシア以外のメンバーも、既に興味のあるクラブがあるらしい。

 ルシェーラとメリエルは『武術クラブ』。
 ルシェーラは分かるが、メリエルは……?
 彼女の武術の試験内容が散々な結果だったことを知っているカティアは随分驚いたが、苦手を克服したいとのことらしい。

 ステラは『乗馬クラブ』。
 意外だとレティシアは思ったが、想像してみると結構絵になるな……と思い直した。

 シフィルは『攻撃魔法研究会』。
 何やら物騒な響きだが、活動内容は魔法を使った競技……スポーツのようなものだ。

 そしてカティアは『演劇クラブ』と『合唱クラブ』のどちらかで悩んでいるようだった。



 それから彼女たちは、実際にそれぞれの希望のクラブを皆で順番に見学することにしたのだが……

「あ、ちょっと私は職員室に用事があるから……先に行っててもらえる?あとから合流するから」

 と、レティシアが言う。


「職員室……?どうしたの?」

 入学初日から職員室に用事があることを不思議に思い、カティアが聞き返す。

「え~と……ちょっと手続きの関係で……」

「ふぅん?まあ、いっか。じゃあ、後でね!」

 レティシアは少し言葉を濁しながら答え、カティアはその様子に訝りながらも了承した。









「……さて」

 カティアたちと分かれたレティシアは職員室を目指す。
 まだ校内には多くの生徒が残っており、楽しそうな笑い声があちこちから聞こえてくる。

(……いいね、活気があって)

 楽しそうな雰囲気につられ、彼女は自然と笑みを浮かべる。


 そして職員室の前までやって来ると、少し緊張しながらノックしてから扉を開けた。

「失礼しま~す……」

 遠慮がちに挨拶をして、中の様子を伺いながら部屋に入ると……


「ん?……何だ、レティシアじゃないか。どうした?」

 と、担任のスレインが声をかけてきた。
 レティシアが、何と応えようか……と悩んでいると。


「あ、彼女が用事があるのは僕だと思います、スレイン先生」

 と、別の男性が話しかけてきた。
 入学式の挨拶で『ジャック』と名乗った、魔道具工学担当の教師である。


「……そうなのか?」

「あ、はい……ちょっと商会の関係で」

「あ~、なるほど」

 レティシアがモーリス商会の会長であることは学園の教師たちの間でも知られている事だ。
 鉄道をはじめとして、数々の発明をしていることも。

 一方で、スレインはジャックが魔道具工学を専門としていることは知っているが、その経歴まで押さえているわけではない。
 しかし、二人の様子から仕事関係の知り合いらしい……と、思ったのだろう。


「ちょっと会議室をお借りしますね。レティシアさん、こちらへ」

 そう言ってジャックは、職員室に併設された会議室にレティシアを案内する。

(……私用で使っていいのかな?)

 と彼女は思ったが、スレインも他の教師も特に咎める事はなかったので気にしないことにした。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 職員会議室でジャックと二人きりになったレティシア。
 彼女はさっそく切り出した。

「え~と……フィリップ様、ですよね?」

 それは問いかけの形ではあるものの、既に彼女は確信している。
 入学式の時は遠目ということもあり半信半疑であったが、こうして近くで見てみると……
 顔の造作や雰囲気から、彼で間違いないと思ったのだ。


「いやぁ、良く分かったね。すぐに気が付いてくれて嬉しいよ」

 言葉通り嬉しそうに笑みを浮かべながら、ジャックは言った。

 そして彼は、右手首にはめていた腕輪を外す。
 すると……彼の髪と瞳の色が、レティシアが知るものへと変化したではないか。


「魔道具……?」

「そう。これヴァシュロン王家うちに代々伝わる神代遺物アーティファクトなんだよ。『変化の腕輪』って言ってね、本来は姿そのものも変化させられるんだけど」

 こともなげに彼は言うが、神代遺物アーティファクトといえば現代の技術では再現できない貴重な魔道具である。



「久しぶりだね、レティ。あらためて……入学おめでとう」

 笑みを深めて彼はそう言う。
 しかし、なぜ彼が学園に彼……それも教師としているのか……レティシアはわけがわからず、ただ戸惑うばかりだった。


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