【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

文字の大きさ
上 下
146 / 191
レティシア15歳 輝く未来へ

第130話 入学式

しおりを挟む


「新たな門出となるこの良き日に、新入生の皆様を代表してご挨拶申し上げる大役を任されたこと、まことに嬉しく思います」

 全校生徒と職員、父兄や来賓の注目を集めながら、カティアが新入生代表挨拶の言葉を述べる。



 予定通り大ホールにて始まった学園の入学式。
 学園長の挨拶に始まり、今はカティアによる新入生代表挨拶の真っ最中である。

 およそ千人近くの若者たちが一堂に会するのは、レティシアがこの世界に転生してから初めて見る圧巻の光景だ。
 そんな中にあって、カティアは緊張の様子を見せつつも堂々と壇上に立ち、歌姫仕込みのよく通る声をホールの隅々まで響かせていた。


「私達は今日、この栄えあるアクサレナ高等学園の生徒として一歩を踏み出します。それは、私達自身の日々の努力のみならず、保護者の皆様のお力添えがあったからこそであり、その感謝の念を忘れてはなりません」

 そこで彼女は一息つく。
 ここまでは例年の定型文のようなもので、ここから先は彼女自身の想いを言葉に乗せる。


「さて、これからの学園での生活にあたっては勉学に励むのはもとより、新たな出会いを通じて様々な人間関係が築かれることでしょう。私は、かつて母よりこう言われました。『学生時代に築いた人脈というのは特別なもの』だと。この学園で出会った友人は、何にも代え難い一生の宝であると。この学園においては身分の別に依らず、皆等しくただ一人の学園生に過ぎません。願わくはそれを建前で終わらせることなく、対等な立場で交流をはかり、かけがえのない友人と出会えるよう切に願います」

 大切な想いを込めて、カティアは言葉を紡ぐ。
 それは彼女自身が入学を目指した理由であるが、皆にとってもそうあって欲しいとの願いを込めて挨拶の言葉としているのだ。


(ごめん、わたし建前とか言ってたわ……)

 内心で反省するレティシア。
 彼女自身は身分によって相手を見下すような事はしないのだが、他の貴族の中にはそうでない者も居るだろう……と、思っていたのだ。
 そのあたりはリディーの『学院』時代の話や、自分自身の社交界での経験を踏まえてのものである。

 しかし王女のカティアが率先してそう言ってくれるなら、そのあたりの風通しはかなり良くなりそう……と、彼女は思った。


「最後に、三年間と言うのは長いようであり短くもあります。その輝かしい日々の一つ一つを大切にし、皆が笑顔で学園を羽ばたいて行けることを心より願って、挨拶の言葉とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました」

 カティアが挨拶を終えて壇上で一礼すると、大きな拍手が巻き起こった。

(いやぁ……やっぱカティアが挨拶してくれて正解だよ。私にはあんな立派な事は言えないね)

 しみじみとレティシアは思った。

 そして、カティアが席に戻るまでの間、大きな拍手の音は鳴り止むことがなかったのである。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




 その後も式典は滞りなく進行し、1年生担当の教員紹介となる。

 レティシアたち1年1組の担任はスレインという男性教師。
 担当教科は武術で、もとA冒険者という異色の経歴の持ち主だ。

 その他の担任や教科担当の紹介が進み、最後に短期の客員教諭の紹介があったのだが……

 その中の一人を見たときレティシアは、『どこかで会った事があるような……』という感覚を覚えた。



「みなさんはじめまして。私は選択科目の魔道具工学基礎を担当するジャックと申します。短い期間ではありますが、これからよろしくお願いします」

 そのようににこやかに挨拶した彼は……教師と言うよりは、どちらかというと学生のような若々しい見た目をしている。

 そして、彼はレティシアがいる方に視線を向け、どこかいたずらっぽい笑みを浮かべた。

(!!まさか……?いや、そんなはずは……)

 彼の表情を見たレティシアは、とある人物を思い浮かべるが、彼がここにいるはずがないと一旦は否定する。

 しかし、髪も瞳も色が違うが……顔の造作は彼女の記憶にある人物によく似ていた。
 何より、今もまだ明らかにレティシアの方を見ているではないか。


(やっぱり…………なんであの人がここに?)



 式典の終わりを告げるアナウンスが流れるが、レティシアの耳にそれが入ることはなかった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。 僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。 僕の夢……どこいった?

処理中です...