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レティシア15歳 輝く未来へ
第125話 イベント
しおりを挟むモーリス商会王都本店のある西大広場に向かうレティシアたち一行。
人混みは更に増し、まっすぐ歩くことすら困難なほどだ。
「この辺は普段から人が多いけど、今日は殺人的な混雑だね……」
「はぐれないように気をつけないとですわ」
「まぁ、はぐれたらモーリス商会の前で待ち合わせすれば良いよ」
いま彼女たちが歩いている通りをまっすぐ進めば辿り着くので、迷うことはないだろう。
そして人をかき分けながら、途中気になった店やパフォーマンスなども見学するなど、しっかり祭りの雰囲気を楽しみつつ……彼女たちは西大広場までやってきた。
それから、レティシアを先頭にモーリス商会の方に向かうと……商会の建物が面する一画は、背の高い仮設の壁で仕切られたイベント会場のようになっている。
会場入口らしきゲートには長蛇の列が出来ていた。
「『モーリス商会技術開発部 成果発表会』……?」
ゲートに掲げられた看板を見上げ、カティアがそれを読み上げる。
「そう!『アクサレナ技術開発品評会』ってあるじゃない?あれの縮小版みたいな感じのイベントだよ!」
かつてモーリス商会が特別賞を授与された大規模イベントに倣い、これまで開発してきた製品や研究成果……だけでなく、開発中のものも含めて発表する独自企画である。
既にモーリス商会の名は広く一般にも知れ渡っており、長蛇の列を見てもその関心の高さをうかがわせる。
「凄い大盛況ですわね」
「それじゃあ私たちも並ぼうか」
カティアは当然のように言う。
特権階級の力を使って……などという発想は彼女には無いようだ。
それにはさすがのレティシアも苦笑して言う。
「いやいや、会長がここにいるんですから。スタッフ用の通用口から入れてもらうよ」
そう言って彼女は入場待ちの列とは別の、スタッフ通用口らしき方へと案内する。
「すみません、こちらは関係者以外は……って、会長じゃないですか」
通用口のそばにいた男性スタッフが三人を止めようとするが、すぐにレティシアが一緒にいることに気がついた。
「お疲れ様~、入って良い?」
「ええ、それはもちろんですが……今日はご友人の方とお祭りを見て回る予定では……?」
「そだよ。だから、うちのイベントも見てもらおうかと」
そう言って彼女はカティアとルシェーラを視線で示しながら言う。
「あ、これは失礼しました。ようこそお越しくださいました。ではご案内いたします」
「あ、いいよいいよ。忙しいでしょ?私が案内するからだいじょ~ぶ。あ、リディーはいる?彼も忙しいかもしれないけど……」
今回のイベントの総責任者はリディーなので、顔見せしても邪魔になるかと彼女は思ったのだが……
「副会長なら……ちょうど休憩中ですね。今なら事務室の方にいらっしゃると思いますよ」
「そっか、じゃあちょっとだけ顔だそうかな?さ、二人ともど~ぞ」
「「おじゃまします(わ)」」
そうして三人は、モーリス商会の中へと入っていった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「リディーさんて、副会長なんだ?」
「うん。前は母さんが副会長だったんだけど……技術開発部門長とか設計主任とかいろいろ兼任してもらってるから、結構負担かけちゃってるんだよね。うちのスタッフはみんな有能だけど、人材はいくらでも欲しいところだねぇ……」
モーリス商会を立ち上げた頃からすれば、比べ物にならないくらいにスタッフは増えている。
しかしそれに応じて事業も拡大してきているので、常に募集しているような状態である。
そんな話をしながら、一階二階の店舗スペースを通り抜け、三階事務所へと上がる。
そして、リディーの事務室の扉をレティシアがノックした。
「どうぞ。開いてますよ」
中から入室許可の声が聞こえたので、扉を開いて3人は入室する。
「おじゃましま~す」
「失礼いたしますわ」
「お仕事中にすみません……」
「何だ、レティか。それに皆さんもお揃いで……」
椅子から立ち上がりながら、彼は三人を迎える。
今日は遊びに行くと聞いていたので、彼は少し意外そうな表情をしていた。
「『何だ』とはご挨拶だね。もっと会長を敬いなさい!」
「せっかくの祭りなんだから、こんなところに顔を出してないで、色々見回ってくれば良いだろうに」
苦笑しながら彼はそう言う。
彼からすれば、レティシアには同年代の友人ともっと交流してもらいたい……という気持ちなのだろう。
「カティアとルシェーラちゃんに、ウチのイベントを案内しようと思ってさ。いちおう、挨拶がてら責任者の許可をもらおうかと」
「律儀だな……会長なんだから、堂々と見ていけばいいだろう。……でも、まあ折角お二人にお越しいただいたので……私がご案内しましょう」
王族、高位貴族のご令嬢が足を運んでくれたからには、責任者として自ら案内しなければ……と、彼は申し出る。
「え?いいよいいよ。休憩中でしょ?」
「そうなんだが……今日は特に他にやることも無くてな。それに、今回は細かいところは関わってないだろ?案内役なら俺のほうが適任だな」
「……そぉ?じゃあ、お願いしちゃおっかな」
どこか嬉しそうにレティシアは言う。
そしてそんな二人のやり取りを見ていたカティアとルシェーラは、なにやらコソコソ囁やきあっていた。
「どしたの、二人とも?何かニヤニヤしてるけど……」
「「何でもないよ(ですわ)!」」
「……?」
レティシアは不思議そうに首を傾げた。
そして少女たちは、リディーの案内のもとモーリス商会のイベントを見学することになるのだった。
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