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レティシア15歳 輝く未来へ
第119話 暗殺者
しおりを挟むレティシアとカティア、ルシェーラ、ステラの四人は、同年代の女の子同士 (二人ほど男の記憶持ちだが)ということもあって、すっかり打ち解ける事ができた。
暫くは話に花を咲かせていたが、それぞれダンスの誘いを受けたのでお開きとなった。
そして、レティシアをダンスに誘った男性というのが……
「えと、カイトさん……ですよね?」
レティシアが問いかけると、彼は眉をピクリとさせ、彼女にだけ聞こえるように小声で返す。
「よく分かったな」
「そりゃあ……カティアがあんな表情見せていた相手ですから。その髪は魔法薬かなんかで?」
「ああ。……色々と事情があってな。あぁ、そうだ。俺の本当の名はテオフィルスと言うんだ」
カイト、改めテオフィルスはその素性を明かす。
レティシアは半ば察していたが、やはりレーヴェラントの王族……第三王子とのことだった。
先ほど一緒にカティアたちに挨拶をしていた、王太子アルノルトとは異母兄弟となるらしい。
そして本来は素性を隠していたが、こうしてここに来た理由は……
「なるほど~。カティアのファーストダンスの相手は譲れない……ってことですね~」
「……まあ、そういう事だ」
レティシアのズバリな指摘に、彼は頬をかきながらバツが悪そうに答えた。
「うんうん、仲がよくて羨ましい限りです。……それで、カティアはもう良いんですか?」
「この場では初対面ということになってるから……いつまでも独占するわけにもいかなくてな」
(……さっきのダンス見たら、とても初対面とは思われないと思うけど)
先ほどの甘々な雰囲気のダンスを思い出し、彼女はそんなふうに思ったが、その言葉はとりあえず飲み込んでおいた。
「それで……よかったら一曲、お相手いかがだろうか?」
「……もしかして、カティアに言われたとか?」
「あ~…………」
テオフィルスは視線をそらし言葉を濁すが、それは肯定しているのと同意だろう。
「くっ……リア充からの施しなんて……ありがたくお受けいたします!」
プライドよりも公爵令嬢としてのメンツの方が勝ったようだ。
別に誰かからダンスに誘われたいなどとは、彼女はこれっぽっちも思わないのだが……
なんせデビュタント以降ほとんど男性から誘いを受けることもなく、公爵家の沽券に関わる……と、彼女は半ば本気で思っていたのだった。
そして彼女はテオフィルスの手を取って、本当に久しぶりのダンスに繰り出すのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
テオフィルスとのダンスを終えたあと……それで機会を得たのだろうか。
レティシアは、その後も他の若い男たちからダンスの誘いを受けることになった。
ある意味、勇者が先陣を切って見せた……ということだろう。
異変が起きたのは、祝宴も半ばを過ぎた頃のことだった。
どこかまったりと落ち着いた空気が漂う中。
突然、前触れもなく、ふっ……と照明が落ちた。
『きゃーーっ!!!』
『なにっ!?なんなのっ!!?』
『陛下をお護りしろ!!!』
突然の事態に会場中が混乱に陥る。
『落ち着け!!誰か明かりの魔法を!!』
ユリウスがその場を落ち着けようとするが、暗闇で状況が把握できないままでは混乱はすぐには収まらない。
(な、何が起きたのっ!?と、とにかく私も明かりの魔法を……!)
レティシアは何とか心を落ち着けて、即座に魔法を行使する。
他にも魔法が使える者が次々と明かりを灯していくと、完全ではないにせよ視界が戻り始めた。
すると、黒装束に黒頭巾という出で立ちの怪しい人物が二人、カティアの方に迫っていくのがレティシアの目に止まった。
「テオ!!ステラを護って!!」
当の彼女はしかし、迎撃体制を取りながらもステラの方を気にして声を上げた。
「カティア!!!」
今まさに不審者の襲撃の刃が振るわれようとするのを目の当たりにし、レティシアが悲鳴を上げる。
しかしカティアは襲撃者の連携攻撃を何とか躱し、一人を掴んで投げ飛ばす。
更にもう一人が再攻撃を仕掛けてきたところ、ドレスをたくし上げながら回し蹴りを放ち、昏倒させてしまった。
最初に投げ飛ばされた方の襲撃者は、まだ戦意喪失しておらず立ち上がろうとするが……そこでようやく護衛騎士たちが駆けつけて、二人とも取り押さえる。
「流石だね…………」
カティアの実力は聖剣の試練で目の当たりにしていたレティシアだったが、無事に切り抜けられたのを確認して胸をなでおろした。
しかし、まだカティアは緊張を緩めておらず、声を張り上げる。
「テオ!!ステラは!!?」
カティアの声に、レティシアも慌てて振り向く。
すると視線の先には……
「大丈夫だ。全員倒した。カティアは大丈夫……みたいだな。まったく……肝が冷えたぞ」
と、ステラの前に立って彼女を護ったのであろうテオフィルスが答えた。
彼の周りには倒れ伏す黒尽くめが二人。
(ふぇ~……テオさんも流石だよ)
テオフィルスの実力にも改めて感心し、ひとまずは襲撃者は退けた……と、レティシアは思った。
しかし……この襲撃はまだ、ただの始まりにしか過ぎなかった。
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