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レティシア15歳 輝く未来へ
第117話 ダンスと壁の花
しおりを挟むカティアや国王夫妻への挨拶を終えたあと、レティシアは面識のある人と挨拶を交わしたり、鉄道に興味を持つ有力諸侯と顔つなぎしたり……これまで出席してきた夜会と同じように、精力的に動いていた。
それがある程度落ち着くと、暫くは食事に集中する。
そして、ふと気になってカティアの方を確認すると、彼女は国王夫妻とともに他国からの来賓客と話をしているようだ。
そして彼女は、来賓客らしき一人……淡い金髪の貴公子からダンスの誘いを受けるところだった。
(誰だろ?一緒にいるのは確か、レーヴェラントの王太子殿下だったよね……。あれ?あの人、どこかで見たような……)
記憶の片隅に何が引掛かかるような感じがし、レティシアは遠目ながらまじまじと男性の顔を見る。
やがて二人はダンスホールとなった会場の中央に進み出て、楽団が奏でる優雅な音楽に合わせて踊り始めた。
二人とも楽しげにクルクルと回る。
特にカティアの表情は晴れやかで……二人の仲睦まじい雰囲気が感じられた。
そしてレティシアは、その表情を見て合点がいった。
(なるほど。あの人は……お~お~、見せつけてくれちゃってまぁ……)
ダンスパートナーの貴公子……彼が、カティアの想い人であるカイトであることに、レティシアは気がつくのだった。
彼の髪は本来、茶褐色のはずだが、おそらく魔法薬か何かで色を変えたのだろう……と、当たりをつける。
彼女は聖剣の試練に挑んだ際に、彼が印……レーヴェラント王族が受け継いでいるはずの、リヴェティアラのそれを発動させているのを見ている。
それも確信に至った理由の一つだ。
そして、踊り始めた時は少しぎこちなかった二人のダンスだったが、今はすっかり自分たちの世界に入り込んでいるようだった。
そんな二人は、もちろん注目の的であるが、あの雰囲気を見た他の男たちはどうするのだろうか……と、レティシアは少し興味が湧いた。
(しかし、美男美少女の組み合わせはホントに絵になるねぇ……。ルシェーラちゃんと兄さんも中々様になってるし。あの娘大人っぽいから年齢差もあまり感じさせないし)
カティアたちに注目していると、もう一人の親友と兄も踊り始めていたのに気付く。
そしてそれだけでなく……
(ありゃ、父さんと母さんまで……仲が良いのは娘として喜ぶべきことなんだろうけど、あまり両親のアツアツぶりを見せられるのは少しフクザツだよ……)
友人や知り合い、身内のリア充ぶりに比べ、自分は誰にも誘われない……と、彼女はだんだんとやさぐれた気持ちになってきた。
(確かに以前やらかしてしまったとは思うんだけど、それでビビってなんて……全く情けない。別に誘われたいわけじゃないんだけどさ。……あ~あ、せめてリディーでもいてくれたら相手してくれるのになぁ)
自業自得と言えばそうなのだが、確かにもう3年も前のことであるし、流石に尾を引きすぎかもしれない。
しかし、彼女の全力の魔力解放は、魔王もかくや……というほどのプレッシャーを周囲に与えるのだ。
男たちが尻込みするのも無理からぬことだろう。
そんなふうに、レティシアが一人寂しく壁の花になっていると、ルシェーラの父……アーダッドが声をかけてきた。
「どうした、レティシア。踊らねぇのか?」
「あ、アーダッドおじさん……いえ、踊りたくても誘われないんですよ」
「あ~、アレか……。まったく……武神の国の男がいつまでも情ねぇもんだ」
「ホントですよ!もっと言ってやってくださいよ!……それより、そう言うおじさんこそどうなんです?」
「俺ぁ柄じゃねぇからなぁ……妻もいねえし。まぁ、挨拶周りして、あとは美味ぇもんでも食ってるわ」
「ルシェーラちゃんのエスコートも、兄さんに取られちゃいましたもんね」
「ん……」
娘を取られた父は、それはそれは情けない顔をした。
そして、そんな顔を見たレティシアは、何となく思いつきで言う。
「……おじさん、私と踊ります?」
「いや、勘弁してくれ……」
「ですよね~」
もちろん彼の顔は、ますます情けないものとなった。
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