【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

文字の大きさ
上 下
108 / 191
レティシア15歳 時代の変革者たち

第94話 聖剣を求めて

しおりを挟む


 レティシアは自室で僅かばかりの睡眠を取ってから、朝食の席に向かった。
 もちろん十分に寝ることはできなかったので、少し寝ぼけていた彼女は無作法をアデリーヌに注意される。
 それでも、食べているうちに段々と目も覚めるのだった。



 そして、新たな友人となったカティアは午後には出発してしまうため……折角だからと、今日一日は彼女たちと一緒に過ごすことにした。

 きのう聞いた話では、ディザール神殿総本山に用事があるとのことだったが……
 晩餐の席で聞いた話では、何でも武神ディザールの神託により聖剣を譲り受けに行くとか。
 その話にはレティシアも興味を示し、ひと目でいいから聖剣を見てみたいと思った。


 その前に、鍛錬場でカティアとリュシアンが手合わせをすることになった。
 どうやら道中で約束をしていたらしい。
 鍛錬場は公爵家の敷地の外れにあるのだが、リュシアンが公爵家を出て以来、レティシアはほとんど顔を見せたことがない場所である。


 そして鍛錬場で行われた手合わせは……
 カティア対リュシアンの戦いは引き分けに終わった。
 息をもつかせぬ高度な攻防の応酬に、ギャラリーたちは大いに盛り上がったが……レティシアはほとんどわけも分からないまま終わってしまった。
 少なくとも二人が相当な達人であることだけは理解できたが。

 手合わせはそれだけで終わらず、続いてリュシアン対ルシェーラの婚約者対決と……
 なんと、ミーティアもやりたいと言い出して、カイトと手合わせを行ったのだ。

 婚約者対決は一日の長によりリュシアンが勝利を収め、ミーティア対カイトの戦いは引き分けとなった。
 カイトは防御主体でほとんど攻撃をしなかったとは言え、幼い女の子が見せた戦闘能力の高さに、カティアたち以外の誰もが驚きを見せていた。

 もちろんレティシアは、どちらの戦いも何が何だか分からないうちに終わってしまったのだが。




 そしてその後は予定通り、カティア、カイト、ミーティア、レティシアの四人は、ディザール神殿へと向かうのであった。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「あ~、折角だからもっと観光したかったね~」

「ね~」

 カティアとミーティアが残念そうに言い、カイトもそれに頷く。

 イスパルナは『古都』と呼ばれるくらいに歴史のある街だ。
 だから歴史的建造物などの見どころも多く、観光客も多く訪れる。

 彼女たち一行も本来はここで何泊かする予定だったらしいのだが、リッフェル領で事件に巻き込まれたことで、予定が押しているとのこと。


「まあまあ……あともう少ししたら、ここから王都まで鉄道で繋がるよ。そしたら改めて観光に来ればいいじゃない。その時は私が案内してあげるよ」

 現在の計画通りに開業すれば、イスパルナ~アクサレナ間の所要時間は5~6時間ほどとなる予定だ。
 日帰りは厳しいが、これまでよりも気軽に行き来できるようになるのは間違いないだろう。


「ありがとう、レティ。その時は頼むね。ところで……今日は列車に乗せてくれるって言ってたけど、準備の方は大丈夫なの?乗せてもらう身でそんな事言うのもなんだけど」

「大丈夫。もう指示はしてるし、あとは優秀なスタッフが動いてくれてるから」

 出掛けにパーシャに伝言を頼んでおいたのだ。
 事前に大事な来客があることは伝えていたから、レティシアが今日一日不在になるかもしれない事は関係各所も既に認識済みではある。
 列車の準備もリディーや親方がいれば問題ない。


「そうなんだ。……昨日徹夜なんてしてるから、何でも自分でやらないと気がすまないのかと思ってた」

「そりゃあ計画の立案段階はね……やっぱり私がやらないといけないものは沢山あるけど、最近はほとんどの事が任せられるようになったし、頼りになる人もいるから」

 そう言いながら彼女は、自然とリディーの顔を思い浮かべる。
 今回も彼に簡単な伝言をしただけだが、それだけで何もかも上手いことやってくれるだろう……という信頼があった。

 自覚はあまりないが、レティシアは彼に甘えてもいるのだ。
 彼女がそうする相手はごく限られる。
 それこそ家族以外には……リディーくらいしかいないだろう。


「なるほど……。それで、わざわざ神殿までついてくるのは何でなの?」

「え~、せっかく友だちができたんだから、できるだけ一緒にいたいな~……って思ってるだけだよ~」

「……その心は?」

「聖剣を早くこの目で見てみたい」

「あぁ……ミーハーなのか……」

「だって!存在は知られてるのに厳重に保管されているから、殆どの人は目にした事がないようなシロモノだよ!そりゃあ誰だって興味が湧くってものでしょ」

 以前レティシアが父に聞いた話では、大かな祭りの時などに公開されることもあるらしいのだが……少なくとも彼女が知る限り、近年公開されたという話は聞いたことがなかった。


 そして一行は、ディザール神殿総本山へとやったきた。

 果たして……カティアたちは無事に聖剣を手にすることができるのだろうか?
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。 僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。 僕の夢……どこいった?

処理中です...