【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

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レティシア12歳 鉄の公爵令嬢

第75話 表彰式

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 王都技術開発品評会の最終日。
 5日間に渡って盛り上がりを見せたそのイベントも、いよいよ閉会の時間が近付いてきた。

 午後になると、多くの来場者たちが開場中央に設営されたステージの周りに集まってくる。
 これから『品評』の結果発表が行われるのだ。

 レティシアたちモーリス商会のスタッフたちも、鉄道の運行は惜しまれながらも午前中いっぱいで終えて、今はステージ前で表彰式が始まるのを待っているところだ。



「い、いよいよだね……表彰されるかな……!?」

「大丈夫よ。会長はもっとどっしりと構えてなさいな。ねえ、リディー君?」

「ええ、まず間違いなく……少なくとも何らかの賞はいただけるでしょう」


 不安と期待の気持ちで緊張感を高めている様子の会長レティシア
 対象的に、余裕の表情の副会長アデリーヌとリディー。
 朝に話しをしていた通り、二人には絶対の自信があるようだ。


「リディーは他の出展も全部見たんだよね。……ウチ以外に目ぼしいものは無かったって、本当なの?」

「いや、目ぼしいものが無いと言うか……まぁ、例年並みといったところだ。興味深いものは幾つかあったが、うちの鉄道を超えるような成果はない……と思ってる。あくまでも俺の主観だがな」

「ふ~ん……どんなのがあった?」

「そうだな……いや、これから発表なんだから、楽しみはとっておこうか」

「ぶーー!!」

 レティシアは、勿体ぶるリディーにむくれるが……発表時間は、もう間もなくである。










『ご来場の皆様にご案内いたします……』

 拡声の魔道具によるアナウンスの声が会場中に響き渡る。

『間もなく、技術開発品評会の表彰式、並びに閉会式を執り行います。関係者、及び式典を観覧されるお客様は、会場中央の特設ステージまでお越しくださいませ……』

 アナウンスを聞いた来場者たちが、ぞろぞろと移動を始める。
 もう既に多くの人が集まっていたステージ周辺は、さらに多くの人々でごった返す。

 そして……


『お集まりの皆様!!大変長らくお待たせしました!!ただ今より、『王都技術開発品評会』の品評結果の発表と表彰式を行います!!』

 ステージに上がった司会者らしき女性の宣言とともに、ステージ脇の楽師隊が高らかにファンファーレを吹き鳴らした。

(ほぇ~……こーいうノリなんだぁ……)

 この催しは学術研究の発表の場なので、もう少し地味なものを想像していたレティシアだったが、お祭りのような雰囲気に目を丸くする。

 実際、期間中の雰囲気は、モーリス商会の鉄道乗車体験こそ遊園地のアトラクションといった感じではあったが、その他のブースでは……
 熱い議論が行われている光景がそこかしこで見られたが、賑わいを見せつつも落ち着いた雰囲気であった。


 ステージ場では引き続き、評価委員会のメンバー紹介を行っている。
 来賓席には国王ユリウスと王妃カーシャ、その護衛に付いているリュシアン、そしてアンリの姿も。


『それではみなさん!早速品評結果の発表……の前に、当イベントのおさらいをしておきましょう!』

 身振りを交え、軽妙なトークで場を盛り上げながら進行する。
 観客たちもそれにおうじて興奮の度合いが高まっている様子だ。


『このイベントはざっくり言いますと……日ごろからさまざまな研究や開発に心血を注ぎ、我々の暮らしの役に立つ革新的な技術や製品を生み出してくださった団体や個人を讃えよう!!……というものなのです!今年で五回目の開催、まだ歴史は浅いですが毎年着実に参加者は増えて……今年は何と!国内外から五十もの団体・個人が出展してくださいました!』

(そんなにあったんだ……やっぱり後でリディーには詳しく聞かないと。どんな技術だって鉄道に応用できるかもしれないんだから)


『さて、あまり引っ張りすぎてもよくないですね。それでは発表に移りたいと思います!!』


 そこで観客たちの歓声が上がる。
 やはり祭りのようなノリだ。
 もともとのアクサレナ民の気質なのかもしれない。


『最初に各種特別賞の発表からです!!まずは【有望賞】!!これから更なる成果が期待できる研究などに贈られる賞です!!』

 楽師隊のドラムロールが発表前の緊張感を演出する。
 観客たちも固唾をのんで発表を待つ……


『受賞は、アクサレナ高等学園魔道具研究会の出展、【微細魔素結晶を活用した光反応魔導素子の開発と、それを応用した映像固定化装置の可能性に関する考察】です!!!』

 沈黙から再び大歓声。
 最初の受賞から大盛りあがりである。

『それでは代表者の方、ステージにどうぞ!!』

 司会者に呼ばれ、ステージ前にいた制服姿の集団から一人の女子生徒が上がった。


『受賞おめでとうございます!!お名前をお聞かせください!』

『あ、私はアクサレナ高等学園魔道具研究会会長のプルシアと言います』


(あの子、確かアズール商会会長の娘さんだわ)

 ステージ上のプルシアを見て、アデリーヌがレティシアに耳打ちする。

(アズール商会って、モーリス商会王都支店の近くにある……あのでっかい建物だよね?)

(そうよ。出店の挨拶で伺った時に会ったのよ)

(へえ~……それにしても、まだ若い学生さん達が受賞するなんて、凄いね~)

(……そうね)

 まだ12歳の娘がそんな事を言うのに、母は少し呆れたような表情を見せるのだった。
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