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レティシア12歳 鉄の公爵令嬢

第74話 品評会最終日

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 王都技術開発品評会は5日間に渡って開催され、今日はいよいよ最終日。

 レティシアたちモーリス商会のメンバーは、連日次々と訪れる来訪者への対応に追われていたが、そんな慌ただしい日々も今日で終わりとなる。



「……というわけで、今日も一日頑張っていきましょー!!ご安全に!!」

「「「ご安全に!!」」」

 毎朝行われていた開場時間前の朝礼。
 レティシアが、最後まで無事に終わることを願って大きな声を上げると、出展スタッフたちもいつも以上に気合の入った声で唱和した。
 
(工事現場か!……ってツッコミはなしで)








「さて、今日がいよいよ最後だね……午後には表彰式があるんだっけ、副会長母さん

 開場前のミーティングも終わり、時間まで少し余裕ができたレティシアが、母アデリーヌに話題を振る。

「そうよ。式典にはアンリも来るみたいよ」

「兄さんも今日は陛下の護衛があるらしいし……家族みんなで締めくくれて良かったよ」

 ここ最近は一家が王都に集まっているが、今回の品評会が終われば、レティシアたちはイスパルナに帰る事になる。
 リュシアンが独り立ちしている今、一家が全員揃う機会は中々無いので、その時間を大切に過ごしたい……と、レティシアは思っていた。


「そうね……そうだわ、帰ったらお祝いしましょうか?」

 娘の言葉に少し寂しさが含まれているのを感じっ取ったアデリーヌが、そんな提案をした。
 しかし、レティシアはいまいちピンとこない様子である。

「お祝い……?なんの?」

「もちろん、金賞受賞の」

 何を当たり前のことを……とでも言うように母は答える。

「いや、まだ決まってないでしょ……」

「もう決まったも同然よ。あんなに人が集まったブースは他にないもの」

 レティシアは冷静にツッコむが、母は当たり前のようにそう断言した。
 事実、最も集客したのは、鉄道乗車体験ではあるのだが。

「別に、人気だけで評価が決まるわけじゃないでしょ?」

 あくまでも、今回の催しは『技術開発品評会』である。
 レティシアが言う通り、たくさん集客したからと言っても、それが技術の評価に繋がるわけではない。

 しかし、それでもアデリーヌの自信に揺らぎは見られない。

「それはそうだけど、今回は他に目ぼしい出展は無かった……って、リディー君が言ってたわ」

 と言うように、リディーの見る目と言葉を信用しているのが、自信の理由であった。
 彼女的にリディーは、娘婿候補筆頭(他にいない)として考えてるくらいに信頼している。
 彼が平民であることは特に気にしておらず、重要なのは能力と人柄だ。
 モーリス商会副会長として彼と接するうちに、それらを見定めてきたのである。


「……リディー、ちゃっかり見回ってたのか。ズルい」

 少し拗ねたように彼女は言うが、他の出展を見たかったというよりは、リディーにおいていかれたのが面白くない……という自覚はあまり無いだろう。


「私が敵情視察をお願いしたの。業務命令よ(ホントはデートを兼ねてレティも一緒に……って思ったのだけど、流石に二人抜ける程の余力は無かったわね……)」

「?」

 レティシアは、母の言葉に微妙な雰囲気を感じたが、それが何なのかは分からなかった。









 さて、母娘の会話にあった『品評』についてだが……

 アデリーヌが「受賞間違いなし」、と言っていた『金賞』は、最も優れていると評価された成果に対して授与される。
 その他、評価結果に応じて『銀賞』『銅賞』なども合わせて表彰されるのだ。

 それらは国の『教育文化推進室』が選定した有識者による評価委員会によって議論された後、いくつかの選考を経て、最終的には彼らの投票によって決定される。

 なのでレティシアが言った通り、集客の多寡によって決まるものではない。
 ……とは言え、委員会メンバーの心象には影響するかもしれないが。


 そして評価委員会による選考から漏れたものに対しても……
 有力貴族、アクサレナの主だった商会の代表者たち、そして一般来訪者による投票など、各々の特別表彰があるのだ。



 果たして、モーリス商会出展の鉄道は『金賞』を受賞できるのか?

 今日も多くの来場者に対応しながら、レティシアたちは緊張の面持ちで結果発表を待つのであった。

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