【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

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レティシア12歳 飛躍

第62話 主従

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 レティシアが社交界デビューの話を聞かされた翌日。
 今日も彼女はモーリス商会の会長室で書類仕事をしていた。

 何かと決裁が多く、その分を鉄道開発の作業に時間を取れないのが最近の悩みのタネであった。


「ねぇ、エリーシャ?」

「何でしょうか、お嬢様?」


 ふと……気分転換と言うわけではないだろうが、昨日の話を思い出したレティシアは、秘書(のような役割)のエリーシャに話しかける。


「エリーシャは結婚はまだしないの?」


 エリーシャはレティシアが5歳の時から専属メイドとして仕えている。
 その時、彼女は15歳……それから7年経ち、今は22歳だ。
 もう既に結婚していてもおかしくない年齢と言える。


「また突然ですね……。まぁ、そんなに慌ててするつもりはないですけど、そもそもお相手がいませんから……」

「そうなの?エリーシャは美人だし、よく気が付くし、優しいし……引く手数多だと思うんだけど」

「ふふ、ありがとうございます。でも、今は恋愛よりも仕事が楽しいですから」

「本当?……えへへ~、そう言ってもらえると嬉しいな~。でも、良い人ができたらちゃんと言ってね。仕事のせいで行き遅れなんてなったら……私の責任問題だよ」

「そんなことは……でも、ありがとうございます。ですが、急にどうしたんですか?」


 今までそんな話題をふられた記憶が無いエリーシャは、不思議そうに聞く。
 これまでずっと側で仕えてきたが……恋愛に興味がある素振りすら見せたことがなかったのだ。


「うん、それがね……」

 レティシアは、昨日の公爵夫妻との会話を思い出し、エリーシャに説明する。


 ………………
 …………
 ……








「……と言うわけなんだよ」

「あぁ、なるほどですね。確かに、お嬢様でしたら婚約者……婚約者候補くらいは、いらっしゃるのが普通かもしれませんね」

 レティシアの説明を聞いたエリーシャは、納得した様子で言った。


「まぁ……そう、だよねぇ……」

「……お嬢様は、リディーさんが好きなんじゃないですか?」

 エリーシャは言おうかどうか迷ったが、いまいちピンと来ていない様子のレティシアに言う。

 普段の様子を見れば、少なからず好意を寄せているのは明白だ。
 しかし、それが恋愛感情によるものなのかは、エリーシャにも分かっていなかった。
 しかし、例え今はそうでなくても、意識させることで自覚することもあるかも知れない……そう思ったのだ。


「リディー……?う~ん……そういうのとは、ちょっと違うと思うんだけど……」

 やはりしっくりきていない様子のレティシアだが……


(まぁ、でも……誰かと結婚しなければならない、って言うのなら……リディーは有りかなぁ?行き遅れたら貰ってもらおうか……でも、彼は凄いイケメンだし、その頃にはとっくに良い人を見つけてそうだけど)


 そんなふうに考えると、何かモヤモヤした感情が湧き上がるのだが……それが何故なのか、彼女は分からなかった。










「まぁ、その話はいいや。とにかく、近日中には王都に出発するんだけど……エリーシャも一緒に来てくれる?」

「はい、もちろんです。……あ、そうだ。いい機会ですから、パーシャも連れて行ってもらえませんか?」


 パーシャというのは、最近使用人として公爵家に仕えるようになったエリーシャの従妹いとこだ。

 現在、レティシアの専属メイドはエリーシャなのだが、最近何かと商会の方で秘書的な仕事が増えてきたので、そちらの方に専念したいと主人共々考えていた。
 なので、専属メイドはパーシャに引き継ごうとしているのである。


「あ、そうだね~。もう結構仕事にも慣れたみたいだし……流石エリーシャの従妹は優秀だよね~」

「私など大した事はありませんけど……そう言っていただけるとあの娘も喜びます」


 主人にそう評されて嬉しそうに言うエリーシャ。

 ……本当は、ずっと側に仕えたい言うのが本音なのだが、主人のために彼女は常に最善の選択を考えるのであった。

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