67 / 191
レティシア12歳 飛躍
第57話 決戦
しおりを挟むついにオークキングとの決戦が始まった。
先ず先手を切ったのは相手方……!
『『『ブギーーーっ!!!』』』
オークメイジ3体が魔法発動、石礫や火の玉が飛来する!!
しかし、それらはライルが展開していた魔法防御の結界に阻まれ、味方に到達することはなかった。
オークメイジ……と言うより、魔物が扱う魔法は人間が使う『詠唱魔法』とは区別して『原初魔法』と呼ばれる。
その魔物固有の生まれつき能力として使うことが出来るのだ。
それは逆に言えば……魔物の知識さえあれば対処はし易いということでもある。
ただ、詠唱は不要である上に威力も大きい傾向にあるので油断は禁物だ。
オークメイジの魔法が不発に終わったのを確認して、両陣営の前衛が前に出る。
棍棒や石斧で武装したハイオーク5体に対するのは、フランツとジャンの二人。
数の上では不利だが……それを補うようにロミナの魔法が飛ぶ!
「[氷霜]!!」
使ったのは強烈な冷気を浴びせる中級魔法だ。
空気中の水分を凍結させ、キラキラと輝く冷気がハイオークの一体に襲いかかる!!
『ブギャーーーッッ!!?』
瞬く間に全身が氷と霜で覆われて、その巨体が凍りつく!
「うしっ!!止めだっ!!!」
バキィンッッ!!
そこにジャンが振るったポールアクスが叩き込まれ、凍結したハイオークの身体を粉々に打ち砕いた!!
ロミナとジャンが連携して一体を倒している間に、フランツはもう一体に肉薄して……相手の棍棒の大振りを躱しながら逆袈裟に斬り上げる!!
ザシュッ!!!
『プギャッ!?』
「む?……浅いか?」
フランツの斬撃はスピードこそ申し分なかったものの、オークの分厚い脂肪に阻まれて致命傷とはならなかった。
『ピギーーーッッッ!!!』
ガインッ!!!
即座に反撃に転じたハイオークの棍棒を、フランツは剣で弾き飛ばす!!
「っ!流石にパワーはあるな。だが……!!」
がら空きになったオークの首を狙って、神速の突きが放たれる!
ヒュッ……ドスッ!!
フランツの剣が首を貫いて、ハイオークは絶命する。
残ったハイオーク3体は怯むことは無いものの、あっさりと仲間を倒されたことによって慎重になった様子。
迂闊な攻撃は危険であると理解したのだろう。
後衛のオークメイジと合わせて、連携を取り始めた。
流石にそうなると、冒険者サイドも迂闊に攻める事は難しくなる。
「ね、ねえ……あれヤバくない?」
後方で戦いに巻き込まれないように様子を見守っていたレティシアが、不穏な空気を感じ取って傍らに控えるエリーシャに聞く。
「……確かに。皆さんも気がついてるとは思うのですが……」
取り巻きのオークたちが思いの外的確な連携を見せ始めた事により、フランツたち冒険者との攻防は拮抗しているように見える。
そして、その間にオークキングと言えば……
「力を……溜めてる?何だか光ってるし!!」
レティシアが言う通り、オークキングは取り巻きたちが冒険者チームを抑えている間、踏ん張って全身を震わせ……薄っすらと燐光すら帯び始めている。
「チッ……!でかいのが来るぞ!!」
「みんな!!下がれ!!」
フランツとジャンが警告を発する!!
そして、次の瞬間……!!
『ブォーーーーーーッッッッ!!!!』
オークキングの咆哮が坑内に響き渡る!!
そして渾身の力で両腕を振り下ろす!!!
ドゴォーーーーーンッッッ!!!
爆音とともに衝撃波が襲いかかる!!!
既に後方へと退避しようとしていたフランツとジャンであったが、攻撃範囲から完全に逃れることは出来ずに衝撃波を浴びる!!
「ぐっ!?」
「うおーっっ!?」
二人は大きく吹き飛ばされ、壁に強く身体を打ち付けてしまう。
「フランツさん!ジャンさん!」
「大丈夫だっ!」
「嬢ちゃん!下がってろ!!」
思わずレティシアが悲鳴を上げるが、二人は何とか心配させまいと声を張り上げて無事をアピールする。
一先ず二人が返事をしたことにホッとするレティシアだったが……
(ちょっと……状況が悪いかも?)
命は取り留めたとは言え、少なからずダメージは負ったはず。
前衛二人が抑えられなくなれば……数の上でも不利な上、まだノーダメージのオークキングも残っている。
明らかに状況が悪い。
起死回生の一手を打つか……あるいは撤退か。
判断が求められる。
それはレティシアも素人ながら感じていた。
(……こうなったら私も)
そして、彼女は密かに決意するのだった。
10
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる