【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

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レティシア12歳 飛躍

第52話 冒険者の戦い

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 山道を進み、何者かの気配を感じ……恐らくは魔物と予測して戦闘態勢をとる冒険者たち。

 レティシアは彼らの後方に控えるが、いざとなれば魔法による支援も行うつもりである。

(だけど……下手に手出しすと、かえって連携の邪魔になりかねないからね。よく見極めないと)




 そして、程なく気配の正体が明らかになる。
 ガサガサ……と繁みを揺らして現れたのは……

『ぐるぅ…………』




「ほう……トロールか」

「ひい、ふう、み……5体。ウルスラ、これで全部か?」

「ええ、他に潜んでるヤツはいないみたい」


 トロール。
 2メートルを優に超える毛むくじゃらの巨体を持つ人型の魔物だ。
 見た目通りの怪力とタフネスに加えて、多少の傷は即座に再生してしまうという厄介な能力を持つ。
 ギルドが指定する脅威度は単体でCランクだ。


「つ、強いの?」

「初級の冒険者だと単体でも危険だが……まぁ俺達なら問題ない。もちろん、油断は出来んが。ウルスラとライルは念の為レティシア嬢の護衛を」

 レティシアにそう答え、仲間に指示を出してから前に出るフランツ。
 その足取りはなんの気負いもなく、言葉通りの余裕を伺わせる。


『ぐぉーーーーっっ!!!』

 それを見たトロールが、戦闘開始を告げる雄叫びを上げた!!



 まずは先頭にいたトロールがフランツに向かって拳を振り下ろす!!


 ドゴォッ!!


 強烈な一撃が地面を抉るが、フランツは悠々とそれを躱して……

 
 チン……


 いつの間に抜き放ったのか……レティシアが気がついたときには既に反りのある剣を鞘に収めるところだった。
 そして……


 ズズン………!


 拳を振り下ろした姿勢のまま、地響きを立てて倒れ伏す。
 遅れて首筋から大量の血飛沫が噴き上がり、ポロリと首が落ちた。


(ひぇーーっっ!!グロいっ!?っていうか、いつの間に斬ったの!?)


 あまりの早業に、レティシアは目を見開いて驚愕する。
 初めて魔物の死体を見て悲鳴を上げそうにもなるが、それは何とか飲み込んだ。



『『『ガァーーーッッッ!!!!』』』


 残ったトロール達は仲間が倒されたのを見て激昂する!!


 しかし、またもや無造作に歩みを進めたフランツが、これまた目にも留まらぬ早業で一体の首を斬り落とす。
 如何に再生能力に優れていようとも、そうなってしまえば全く関係がない。



 残る3体のうち一体は、盾役のジャンが後衛を護りつつ迎え撃つ。
 トロールの拳を大盾で受け止めてから、長柄斧ポールアクスに遠心力をたっぷりと乗せてスイングした。
 それは狙い違わず一撃でトロールの首を落とす。


 その間にフランツがもう一体を仕留めて、残りの一体はロミナが攻撃魔法で牽制し足止めしていた。

 その最後の一体に向かったのは……


「せぇーーーいっっ!!!」

 裂帛の気合で剣を振るったのは、なんとエリーシャだった!
 その一撃は、動きを止めていたトロールの首を難なく斬り飛ばしてしまう!!


「え、エリーシャっ!?」

 長年使えてくれた彼女の意外な実力に、驚愕の声を上げるレティシアだった。






















「殆どフランツの旦那が倒しちまって……もっと俺らの見せ場が欲しかったぜ」

「どんなときも油断せずに全力をもって事にあたる。冒険者の鉄則だ。そんなことを言ってたら、いつか足をすくわれるぞ?」

「わぁ~ってますよ、今回だって手は抜いてませんぜ」

「ジャンは一体仕留めたんだから良いでしょ。それに、まだこれからいくらでも戦う機会はあるわよ」

 戦闘が終了して、特に何でもなかったように振る舞う冒険者たち。
 先の戦闘と、その様子に頼もしさを覚えるレティシア。

 そして……


「それにしても……エリーシャさんには驚いたわ」

「ああ。見事な剣の腕前だな。流石は公爵家の使用人ともなると戦闘能力も優れてるのだな」

「メイドの嗜みです」

「いやいやいや……私もエリーシャがそんなに強いなんて知らなかったんだけど?」

 何でもないような感じでさらっと言うエリーシャに、ツッコミを入れるレティシア。


(いや、バトルメイドはお約束だけどさ……リアルにいるとは思わなかったよ?……え?他のメイドさん達もそんななの?メイドの嗜みとは一体……?)


 ……ちょっと、それを聞くのは何だか怖いと思う彼女であった。
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