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レティシア12歳 飛躍
第50話 交流
しおりを挟むギルドを出発したレティシア達一行は、イスパルナの外壁の門を潜って街の外に出る。
今回向かう廃鉱山はイスパルナの街から西へ、徒歩で一日ほどかかる山中にある。
しばらくは街道……王都アクサレナと西の辺境地域の主要都市であるブレゼンタムを結ぶ黄金街道を進み、途中で分岐する事になる。
当然日帰りは無理なので、今回は野営を行う予定だ。
(初めての野営……キャンプみたいで、ちょっと楽しみかも)
レティシアは公爵令嬢であるが、今回は馬車ではなく自らの足で歩いて行くことに。
最初は冒険者たちに随分と驚かれたものだが……彼女の今回の目的は鉱山の視察の他に冒険者の仕事ぶりを間近で見てみたい、ということもあっての選択であった。
そして、早速レティシアは彼らと交流を深めるべく話しかける。
「皆さんは、同じパーティ……なんですか?」
最初に挨拶をしたときに、お互いに顔見知りのような感じだったのでそう思ったのだが……
レティシアのその疑問には、今回のリーダー役を務めるフランツが答える。
「いや、我々は特に普段からパーティを組んでる訳では無いな。まぁ、何度か一緒に仕事をしたことがあるから、お互いの事は割と良く理解している。……だから、連携などは心配しなくても大丈夫だ」
基本的にはソロ活動中心のメンバーで、たまに他のパーティにヘルプで入ったり、今回みたいに臨時パーティを組むことがあるとの事だ。
「しかしお嬢さん……随分と荷物が少ないが、そんなんで野営とか大丈夫なのかい?」
そう聞いてきたのは盾役のジャンだ。
レティシアの事は公爵令嬢と知らされているが、彼女自身が砕けた調子なので、あまり口調にも気を使わずに話している。
それは他のメンバーも同様だ。
そして、彼が聞いてきた通り……レティシアは野外活動に適した服装をしてはいるが、荷物らしい荷物は小さな肩掛け鞄くらいで、とても数日間の旅程を想定したものとは思えなかった。
侍女が纏めて持っているのかと思えば、彼女も似たような軽装なので「本当に大丈夫か?」と彼は思ったのだ。
「大丈夫ですよ~。……ほら」
そう言ってレティシアは、どこからともなく水筒を取り出した。
彼女の小さな肩掛け鞄には、到底入るようなものでは無かった。
「え……今、どこから出したの?」
それを見ていたウルスラが唖然として呟きを漏らす。
「……まさか、収納倉庫?」
「うそっ!?[虚空倉]は神代魔法ですよ!?」
魔導士のライルがその現象から思い当たる可能性を口にし、ロミナが驚愕に驚きの声を上げた。
「あ、そうです。私は[虚空倉]が使えるので、荷物は殆どそっちに。……確かに神代魔法ですけど、割とメジャーな部類だから使い手はそれなりに居るんじゃないですか?拡張鞄の製造には必要な魔法ですし……」
マティスに見せた時は随分驚かれたものだが、レティシアが言った通り神代魔法の中では比較的使い手はいる方だとも言っていたのだ。
「その通りですけど……普通は一子相伝の秘術とか、魔道具工房の秘伝とかにされていて、そんな簡単に習得出来るようなものでもないですよ?」
と、ロミナが説明する。
「そうなんだ……公爵家の書庫にあった古い魔導書に書かれてたんだけど。細かい術式までは載ってなかったから、再現するのは確かに苦労したよ」
「流石は公爵家……と言うか、再現した……?とんでもないな……」
ライルが半ば呆れたように頭を振ってそう言う。
やはりレティシアは魔法に関しては頭抜けた才能の持ち主と言うことなのだろう。
「レティシアさん、凄いです……!」
「あ、あはは……」
ロミナが尊敬の眼差しで見つめるので、少し気恥ずかしくなって頭をかくレティシア。
だが、フランツは冷静に忠告する。
「ふむ……稀有な能力と言うのは、極力隠したほうが良いな。良からぬものに目を付けられるリスクを回避するためにもな」
「そうですね……気を付けます。次機会があればカモフラージュを考えることにしますよ」
「そうすると良いだろう」
そんなふうに、レティシアは道中に色々と冒険者たちの話を聞きながら歩みを進めていく。
人懐こいレティシアの性格もあって、街道から分岐する頃にはすっかり打ち解けることができた。
そして……道は段々と上り坂になり、山間へと分け入ってくのであった。
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