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レティシア12歳 飛躍
第46話 誕生日のお祝い(デート?) 3
しおりを挟む「ふわぁ~……美味しいよぉ…!」
「あぁ、流石は高級店だな……。素材も調理も素晴らしい……」
高級東方料理店『桜梅桃李』にて。
次々と運ばれる数々の料理に舌鼓を打つ二人。
特に故郷である前世の日本の料理に近い料理を期待していたレティシアは、感激仕切りである。
うっすらと涙すら滲んでいた。
公爵家の料理人に頼んで作ってもらうこともあるが、やはり何処か少し違うと思っていたのだ。
彼女は前世も今世も料理はからきしなので、自分で作ることもできず……
それでも十分美味しいと思っていたが、この店の料理はまさに前世の味であった。
余談であるが……レティシアがこの店の料理をいたく気に入った事を知った公爵家の料理長が、足繁く通って東方料理の腕を上げて彼女を再び感激させる事になる。
「ふぅ……美味しかった。満足だよ~」
「……良く食べたものだな」
女性にはかなり多かったのだが、レティシアはすっかり平らげてしまった。
年頃の少女がそんなところを男性にみせれば恥じらうところだが……あいにくレティシアにそのような感性は無い。
「だって、こんなに美味しいんだもん。残したら勿体ないじゃない。流石にキツイけど……」
「まぁ、レティらしいな」
苦笑いしながらリディーはそう言うが、彼はレティシアのそんな貴族らしくないところを好ましいと思っていた。
「さて、食事も終わったところで……これを」
リディーがそう言ってレティシアに何かを渡す。
ラッピングされたそれは……
「あ!もしかしなくても、誕生日プレゼント?」
「そうだ。改めて……誕生日おめでとう」
「えへへ~……ありがとう!!」
満面の笑顔でレティシアはお礼を言った。
それは余りにも破戒力抜群で……不意打ちを食らったリディーは、さきほど蓋をした感情を思い出しかける。
「あ、あぁ……」
「開けてみてもい~い?」
「もちろんだ。気に入ってくれると良いが……」
「ふふ~ん、なにかな~……?」
ご機嫌で調子外れな鼻歌も出始めたレティシアは、丁寧に包を剥がしていく。
そして、その中身は……
「おぉ~っ!こ、これはっ!?」
金属製のケースに収められた様々な形をした何らかの道具。
レティシアはそれを見て目を輝かせた。
「凄い!!」
「どうだ?魔導力工具セットだ。魔導モーターを組み込んだ本体と、様々なビットを交換することで……ドリル、ドライバー、リューターなど様々な用途に使える。コンパクトに纏められるから、持ち運びも便利だぞ」
「うん!凄い凄い!」
レティシアは大喜びである。
最初リディーは、女性への贈り物としてはどうなんだ?とも思ったのだが……
彼女が花とか服とかアクセサリーなどには興味が無いことは分かっていたので、どうせなら喜んでもらえるものを……という事で考えたものだ。
「これ、どうしたの?市販のモノじゃないでしょう?」
前世ではこのような複数用途を兼用できる工具セットは珍しい物ではなかったが、レティシアはまだこの世界では見たことがなかった。
「俺がアイディアを出して、親方に作ってもらったんだ。親方も物凄く欲しがってたが……先ずはレティにプレゼントしようと思ってな」
少し照れながらリディーは説明する。
自分の為に作ってくれたと聞いたレティシアは更に感激した。
「私のために……リディー、本当にありがとう!」
「ん…そこまで喜んでもらえると、甲斐があるな」
「それで……商品化の企画書は?」
「……まだだ」
流石のレティシア会長は、あくまでも商魂逞しいのであった。
「廃鉱山?」
「うん。10年前に閉山したらしいのだけど……まだ十分な埋蔵量が見込めるんだって」
食事が終わってからも、二人は会話を続けていた。
現在の話題は、レティシアの目下の心配事であった鉄の供給問題についてだ。
「じゃあ、そこの権利を……?」
「と思って、事前に父さんに根回ししてもらって先方にはもう連絡している。権利譲渡については前向きな回答をもらってるから、あとは正式に手続きを進めれば……他にもそう言う鉱山があるみたいだけど、先ずは出来るところからね」
「そうか。流石だな」
「でさ、今度その鉄鉱山に視察に行こうと思って」
「レティが?別に会長自ら見に行かなくても良いんじゃないか?」
「それもそうなんだけど……そこの所有者になるんだったら、そこで働く坑夫さんたちもウチの従業員ってことになるでしょ?そしたら、一応は労働環境とか自分の目で見ておきたくて……」
「そうか。そういうところは真面目だよな、レティは」
「そうかな?……って、「そういうところは」って何さ。それじゃあ不真面目なとこがあるみたいじゃない」
「……国王陛下ご夫妻が初めて研究開発室にお越しくださった時とか」
「……」
「興味の無い決裁書類はろくに目を通さずにサインしたり」
「……」
「エリーシャさんからも色々聞いてる」
「……」
レティシアはそっと目を逸らすのだった。
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