【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

文字の大きさ
上 下
53 / 191
レティシア12歳 飛躍

第46話 誕生日のお祝い(デート?) 3

しおりを挟む


「ふわぁ~……美味しいよぉ…!」

「あぁ、流石は高級店だな……。素材も調理も素晴らしい……」


 高級東方料理店『桜梅桃李』にて。
 次々と運ばれる数々の料理に舌鼓を打つ二人。

 特に故郷である前世の日本の料理に近い料理を期待していたレティシアは、感激仕切りである。
 うっすらと涙すら滲んでいた。

 公爵家の料理人に頼んで作ってもらうこともあるが、やはり何処か少し違うと思っていたのだ。
 彼女は前世も今世も料理はからきしなので、自分で作ることもできず……
 それでも十分美味しいと思っていたが、この店の料理はまさに前世の味であった。


 余談であるが……レティシアがこの店の料理をいたく気に入った事を知った公爵家の料理長が、足繁く通って東方料理の腕を上げて彼女を再び感激させる事になる。









「ふぅ……美味しかった。満足だよ~」

「……良く食べたものだな」

 女性にはかなり多かったのだが、レティシアはすっかり平らげてしまった。
 年頃の少女がそんなところを男性にみせれば恥じらうところだが……あいにくレティシアにそのような感性は無い。

「だって、こんなに美味しいんだもん。残したら勿体ないじゃない。流石にキツイけど……」

「まぁ、レティらしいな」

 苦笑いしながらリディーはそう言うが、彼はレティシアのそんな貴族らしくないところを好ましいと思っていた。



「さて、食事も終わったところで……これを」

 リディーがそう言ってレティシアに何かを渡す。
 ラッピングされたそれは……

「あ!もしかしなくても、誕生日プレゼント?」

「そうだ。改めて……誕生日おめでとう」

「えへへ~……ありがとう!!」

 満面の笑顔でレティシアはお礼を言った。

 それは余りにも破戒力抜群で……不意打ちを食らったリディーは、さきほど蓋をした感情を思い出しかける。


「あ、あぁ……」

「開けてみてもい~い?」

「もちろんだ。気に入ってくれると良いが……」

「ふふ~ん、なにかな~……?」

 ご機嫌で調子外れな鼻歌も出始めたレティシアは、丁寧に包を剥がしていく。

 そして、その中身は……


「おぉ~っ!こ、これはっ!?」

 金属製のケースに収められた様々な形をした何らかの道具。
 レティシアはそれを見て目を輝かせた。

「凄い!!」

「どうだ?魔導力工具セットだ。魔導モーターを組み込んだ本体と、様々なビットを交換することで……ドリル、ドライバー、リューターなど様々な用途に使える。コンパクトに纏められるから、持ち運びも便利だぞ」

「うん!凄い凄い!」

 レティシアは大喜びである。

 最初リディーは、女性への贈り物としてはどうなんだ?とも思ったのだが……
 彼女が花とか服とかアクセサリーなどには興味が無いことは分かっていたので、どうせなら喜んでもらえるものを……という事で考えたものだ。


「これ、どうしたの?市販のモノじゃないでしょう?」

 前世ではこのような複数用途を兼用できる工具セットは珍しい物ではなかったが、レティシアはまだこの世界では見たことがなかった。

「俺がアイディアを出して、親方に作ってもらったんだ。親方も物凄く欲しがってたが……先ずはレティにプレゼントしようと思ってな」

 少し照れながらリディーは説明する。
 自分の為に作ってくれたと聞いたレティシアは更に感激した。

「私のために……リディー、本当にありがとう!」

「ん…そこまで喜んでもらえると、甲斐があるな」

「それで……商品化の企画書は?」

「……まだだ」


 流石のレティシア会長は、あくまでも商魂逞しいのであった。













「廃鉱山?」

「うん。10年前に閉山したらしいのだけど……まだ十分な埋蔵量が見込めるんだって」

 食事が終わってからも、二人は会話を続けていた。
 現在の話題は、レティシアの目下の心配事であった鉄の供給問題についてだ。


「じゃあ、そこの権利を……?」

「と思って、事前に父さんに根回ししてもらって先方にはもう連絡している。権利譲渡については前向きな回答をもらってるから、あとは正式に手続きを進めれば……他にもそう言う鉱山があるみたいだけど、先ずは出来るところからね」

「そうか。流石だな」

「でさ、今度その鉄鉱山に視察に行こうと思って」

「レティが?別に会長自ら見に行かなくても良いんじゃないか?」

「それもそうなんだけど……そこの所有者になるんだったら、そこで働く坑夫さんたちもウチの従業員ってことになるでしょ?そしたら、一応は労働環境とか自分の目で見ておきたくて……」

「そうか。そういうところは真面目だよな、レティは」

「そうかな?……って、「そういうところ」って何さ。それじゃあ不真面目なとこがあるみたいじゃない」

「……国王陛下ご夫妻が初めて研究開発室ラボにお越しくださった時とか」

「……」

「興味の無い決裁書類はろくに目を通さずにサインしたり」

「……」

「エリーシャさんからも色々聞いてる」

「……」


 レティシアはそっと目を逸らすのだった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...