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レティシア12歳 飛躍
第45話 誕生日のお祝い(デート?) 2
しおりを挟むモーリス商会を出たレティシアとリディーは、アンリが紹介してくれたレストランに向う。
そのお店は、リュシアンやレティシアが生まれる前……アンリとアデリーヌが恋人として付き合っていた時に良く食べに行っていたらしい。
今でも記念日などは、二人だけで行くとか。
(まぁ、今も変わらずお熱いことで……ゴチソウサマ)
公爵夫妻が懇意にしてると言うだけあって、貴族御用達の超高級レストラン……と言う程ではなく、高級店には違いないが庶民もたまの贅沢にと選ぶくらいのお店である。
ただ、それほど厳しくはないがドレスコードはあるらしい。
本日のレティシアの服装はメイドたちによる渾身のコーディネートなので問題なし。
そしてリディーも今日は正装していた。
「今日は随分と気合が入った格好だな?」
「ウチのメイド隊がね~。ちょっと怖かったよ……」
普段の彼女は服には無頓着で、動きやすい服であれば何でも……と言う有様。
だから、エリーシャを始めとするメイド達は、最高の素材なのに勿体ない……と、常々思っていたのだ。
だから、主を着飾らせる機会があると知れば、挙ってその腕を振るおうと集まってくる。
当然、コーディネートについては皆様々な意見があるので、時としてメイド達による争いが勃発するのである。
(……最後はエリーシャが取りまとめてくれたけどさ。ドレスを決める、髪型を決める……と言う度に言い争いが始まるんだもん。結局何時間かかったことやら……)
自分を置き去りにして始まる女達の戦いを思い出してゲンナリするレティシアであった。
「そーいうリディーも……正装しているのは初めて見たね」
「そうだったか?……まぁ、今まで機会がなかったからな。変か?」
「ううん、すごく似合っててカッコいいよ」
「そ、そうか。あ~、その、レティも良く似合ってると思うぞ」
レティシアがごく自然に褒めてくるのに少し照れながら、お返しに彼女を褒めるリディー。
実際、いつにも増して着飾った彼女は……その年齢よりも大人びて見え、とても魅力的な女性に見えた。
そう思うと、普段は可愛らしい年相応の少女……妹みたいな感じに思っていた彼女が、急に異性として意識される。
(何を考えてるんだ俺は。レティはまだ12歳だぞ?7つも下の少女を意識するだなんて……)
初めて沸き起こる感情に戸惑うリディーであったが……
「えへへ~、ありがとう!」
当のレティシアは、いつも通りの天真爛漫さで褒められた事を素直に喜ぶ。
(……ふ。どんなに着飾っても、中身は普段のレティであることに違いは無いな)
普段と変わらないレティシアの様子に、芽生えかけた自分の感情に蓋をするのだった。
「ここだよ!『東方料理 桜梅桃李』!」
「へえ……東方料理のお店なのか。こんなところがあるなんて、知らなかったな……」
イスパル王国があるカルヴァード大陸の東側には別の大陸がある。
その東大陸の極東部には、カルヴァードとは大きく異なった独自の文化を持つ地域がある。
近年その『東方文化』が流行りつつあるが、今回レティシア達がやってきた店は、東方料理を提供することで有名な歴史ある老舗だ。
(東方料理って、要するに前世で言うところの和食なんだよね。たまにウチの料理長に頼んで東方料理を作ってもらったりするけど……専門店という事だから凄く楽しみだよ!)
前世日本人のレティシアとしては、やはり日本の料理が恋しくなる事がある。
この世界でも似たような地域があって、似たような料理があった事は彼女にとって幸運な事であったに違いない。
(いつか行ってみたいなぁ……もし、鉄道でそこまで繋がったら……)
彼女の夢は大きく広がるのであった。
店は東方料理専門と言うだけあって、周りの建物とは異なる木造であり、その一画だけ独特な存在感を放っていた。
(うん、まさに日本家屋。老舗の料亭みたいな感じ?……そんなところに行ったことなんて無いけど)
店の中に入ると土間の玄関になっていて、板敷の広い廊下が奥に続く。
そこで和装をした店員の女性が丁寧に出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ。ご予約のお客様でしょうか?」
「ええ。予約してます、レティシア=モーリスです」
「レティシア様……はい、2名様でのご予約を頂いておりますね。本日は『桜梅桃李』にようこそおいでくださいました。お部屋にご案内させて頂きます。お履物はこちらでお脱ぎになってお上がり下さいませ」
「はい。……リディー、行きましょ」
「あ、あぁ……」
リディーはレティシアから、貴族向けの超高級店ではないと聞いていたのだが……それでも彼にとっては場違いに感じるくらいの高級な雰囲気であり、レティシアに促されたものの気後れしてしまう。
(普段はあまり感じないが……やはり公爵令嬢なんだよな……)
慣れた感じのレティシアの様子を見て、リディーは普段は忘れがちのその事実を改めて認識するのであった。
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