【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

文字の大きさ
上 下
31 / 191
レティシア8歳 転機

第27話 ブレイクスルー

しおりを挟む

「レティ、アスティカントから研究論文が届いたけど…もう図書室に収蔵したから、後で確認すると良いよ」

 ある日、レティシアは夕食の場でアンリからそのような報せを受けた。

 モーリス公爵家はアスティカントに寄附を行っているので、毎年の研究成果を記した論文が送られてくるのだ。
 それはかなりの量になるのだが、レティシアは毎年欠かさずそれをチェックしている。
 当然、何か鉄道に応用できる技術が無いか確認するためだ。

「ありがとう、父さん。後で見てみるよ」

「何か画期的な研究成果があるといいね」

「うん!」

 あの日、トロッコ列車のお披露目をしてから、何かとアンリは鉄道開発の事を気にかけてくれている。
 娘の頑張りを純粋に応援したい気持ちが大部分だが、上手く行けば公爵家の利になるという打算も多少はあるのだろう。
 どちらにしてもレティシアにとっては有り難いことではある。


「そうそう、レティが作った魔道具の事なんだけど…」

 この三年間、レティシアとしては鉄道開発においてあまり成果が上がっていないと考えているが、研究開発の副産物として幾つかの魔道具が作られた。

 例えば…
 客車の快適性には必要不可欠な空調機器エアコン
 空気ばねに使うためのコンプレッサー。
 前照灯に使うための高輝度なライト。
 などなど…

 鉄道に関連しないものも幾つかあり、洗浄機能付きのトイレなどは既に公爵邸に設置されて好評だ。

 これらの魔道具の特許権利は全て製作者であるレティシアに有り、かなりの利益を上げている。


「…商会を立ち上げないかい?公爵家うちが出資しているところでも良いのだけど…利益を開発資金に当てることもスムーズに出来るし、直営が良いのでは、と思ってね」

「商会かぁ……直営と言うことは、父さんが会長ってこと?」

「いや、キミだよ」

「へ!?だ、だって、私…まだ8歳だよ?」

「別に商会の代表者に年齢制限なんて無いさ」

 事もなげにアンリはそう言う。
 レティシアが唯の幼女ではない事は今更言うまでもない。
 彼女が会長になることについては全く問題視していないのだ。

「自分が会長になれば、いちいち私を通さなくても自分の裁量で自由に資金繰りが出来ると思うけど…?」

「むむむ……確かにそれはアリかも……」

「もし設立する気なら、もちろん私やアデリーヌも手伝うよ。初期投資は今迄の魔道具の特許料で十分だね」

 それが決め手となった。

「決めた!父さん、私商会を立ち上げるよ!」

「分かった。じゃあ、諸々の手続きの準備はしておこう」

「ありがとう!」














 翌日、レティシアは早速新たな研究論文を確認するため図書室を訪れていた。

(さて…今年はどんなのが有るのかな?大抵は基礎研究が殆どだから、実用化に直結するようなものは中々無いのだけど…何か使えるモノがあれば良いね)


 図書室にやって来たレティシアは、まだ未読のものが集められている書棚を確認する。
 最近ではレティシアの為にそのような区分けをしてくれてるのだ。

「え~と…アスティカントの論文は……ここからかな?」

 きちんと整理されているので、目的のものは直ぐに見つけることができた。
 何冊かまとめて引っ張り出して、図書室に備え付けの机に広げて読み始める。

 何れは全て目を通すつもりだが、今日主に見るのは工学、土木建築、材料工学、そして魔法学の論文だ。

 集中力を高めて、殆ど速読術レベルのスピードでページをどんどん捲っていく。
 お付きのエリーシャは最初は驚いたものだが、今となっては慣れたものだ。
 彼女は、レティシアが読み終わった書物のタイトルをメモして既読の棚に収めたり、新たな書物を未読棚から持ってきたり…と主の手伝いをする。


 そうして、しばらくは読書に没頭していたのだが…

「これは……」

「お嬢様、何か見つかったのですか?」

 魔法学の論文の一つを読んでいたレティシアは、何か興味ある内容だったらしく、何度も読み返していた。

「うん。中々面白いかも、これ。……もしかしたら一番の課題が一気に解決するかも!!」

 少しずつ自分の中で整理を付け、具体的なカタチを思い描いたのか…レティシアは興奮してそう言うのだった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ

犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。 僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。 僕の夢……どこいった?

処理中です...