27 / 191
レティシア5歳 はじまり
第23話 婚約話
しおりを挟む「どぉおりゃあーーーっ!!!」
怒号とともに槍戦斧が豪快に振るわれる!!
ドゴォっ!!
刃引きしてるとは言え、直撃すれば大怪我…命の危険すら有り得る容赦ない一撃だが、リュシアンはそれを紙一重で避けて、こちらも当たればただでは済まない神速の突きを放つ!!
「フッ!!」
「なんのっ!!」
ガキィッ!!
攻撃直後の不安定な体勢を狙われたにもかかわらず、侯爵は無理矢理得物を引いて槍を弾く!
既に手合わせが始まってからかなりの時間が経った。
その間お互いに一歩も譲らず、有効打は今の所無し。
目まぐるしく入れ替わる攻防に、レティシアはわけが分からず既に戦いを目で追うのを諦めている。
彼女の信じ難いことに、ルシェーラははっきりと動きを把握しているらしく、逐一報告をしてくれているのだ。
(う~ん……これは、転生チートは私には無理だなぁ……いや、鉄道開発は知識チートの賜物か?ワンチャン、魔法チートもまだ期待できるかも)
何れにしても、武術は自分には向かないな…と早々に見切りをつけるのであった。
延々と続くと思われた勝負だったが、決着の時はそれから暫くしてやってきた。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
「…流石に身体が出来てねぇだろうから、そろそろ体力も限界だろ」
「い、いえ……まだまだやれます!!」
「無茶すんな。今の時点で互角なんだから…俺程度なんざ直ぐ追い越しちまうだろ。ここまでだ」
「……はい。ありがとうございます」
有無を言わせず侯爵は終了を宣告し、渋々ながらリュシアンはそれを受け入れる。
一先ずは引き分けという形だが、戦いを続けていれば自分が負けていたであろうことは彼自身か良く分かっていることだろう。
「そんな悔しそうな顔をするなって。……一つアドバイスなんだがな。個人の武勇を突き詰めるのもいいけどよ、お前は騎士志望なんだろ?ならば、求められる資質は強さだけじゃねぇ。騎士って言うのは国を、国民を守るのが役割だ。そのために自分がどう有るべきなのか、よく考えるんだな」
「どうあるべきか…」
「まあ、偉そうに言ってるがよ。俺だって大戦では色んなやつに助けられてどうにか生き延びることができたんだ。一人では成せないことも、多くの仲間の力があれば、な」
「…はい」
「いやしかし、久しぶりに良い運動が出来たぜ。ここのところ事務仕事ばかりだったからなぁ…礼を言うぜ、リュシアン」
「いえ、こちらこそ胸を貸していただき、ありがとうございました」
こうして二人の手合わせは終わったのだが…
「おとうさま!リュシアンさま!おふたりともすごかったですわ!!」
武術大好き幼女、ルシェーラが二人に称賛の言葉をかける。
戦闘中もそうだったが、今も興奮冷めやらぬ様子。
もともと父の事は尊敬していたが、今回の手合せでリュシアンの株が爆上がりである。
「おう。ありがとな」
「ありがとう、ルシェーラちゃん」
二人とも相好を崩してルシェーラにお礼を言う。
だが、そこで予想もしない無邪気な爆弾発言が飛び出した。
「リュシアンさま、すごくかっこよかったですわ!!わたくし、リュシアンさまのおよめさんになりたいです!!」
「な、なにっ!?」
「まあ…」
「あら!いいわね~!リュシアンはまだ婚約者もいないし…」
即座にアデリーヌが反応する。
手合わせにはさしたる興味もなかった様子だったが、こと恋愛関連の話は大好物らしくノリノリで話を膨らませようとする。
「…母様。流石にルシェーラちゃんとは年齢差が…」
「何言ってるのよ。そのくらいの年の差なんて貴族では当たり前にあるわよ。あなたもそろそろ考えなければいけないし、侯爵のお嬢さんなら申し分ないし…ねえ、あなた?」
「え?あ、ああ…そうだね……だけど、ルシェーラちゃんはまだ小さいし……急いで決めなくても」
「ウチとしては問題ないですわ。ねぇ、あなた?」
「い、いや、俺ぁ…」
リファーナもどうやら乗り気のようだ。
だが、侯爵としては複雑な様子。
(…もはや兄さんの意思は関係なさそう。何か悟ったような顔になってるよ…)
母親二人のノリノリの様子を見て、「口出ししても無駄」と考えてるようだ。
そうして、リュシアンの婚約話はトントン拍子に進んでいくのだった。
本人の意見はそれ以上聞かれることもなく…
10
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
少し残念なお嬢様の異世界英雄譚
雛山
ファンタジー
性格以外はほぼ完璧な少し残念なお嬢様が、事故で亡くなったけど。
美少女魔王様に召喚されてしまいましたとさ。
お嬢様を呼んだ魔王様は、お嬢様に自分の国を助けてとお願いします。
美少女大好きサブカル大好きの残念お嬢様は根拠も無しに安請け合い。
そんなお嬢様が異世界でモンスター相手にステゴロ無双しつつ、変な仲間たちと魔王様のお国を再建するために冒険者になってみたり特産物を作ったりと頑張るお話です。
©雛山 2019/3/4

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる