【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

文字の大きさ
上 下
24 / 191
レティシア5歳 はじまり

第20話 来客

しおりを挟む
 レティシアがマティスより魔法を教えてもらうようになって数日の時が過ぎた。

 そして今日も講義を受けているのだが…



『此処に火精は集いて、小さき火を灯せ[灯火]』

 ポゥ…

 レティシアが詠唱すると、彼女の指先に小さな火が灯る。

「わわっ!?で、出来た!!出来ました!先生!!」

「うむ。見事だ。……僅か数日程度で発動させるに至るとは……」

 ごく初歩的な魔法とは言え、その習得スピードのあまりの速さに驚くマティスである。


(やはり……この娘が天賦の才能を持つのは間違いないな。おそらくは魔法系の強力なスキルを持っている。それに…到底5歳とは思えない聡明さで私の説明を即座に理解する、というのもあるだろう)

 マティスは内心でそのように分析する。

「今の詠唱と、それに伴う魔力の流れを覚えておくと良い。どの魔法の発動プロセスも、基本的には同じだから」

「はい!」

「まだ身体が出来てないから初級魔法数発が限度だろうが、繰り返し使うことでよりスムーズに行使出来るようになる」

「はい!」

 師の言葉に素直に返事をするレティシアだが、初めて使用した魔法にかなり興奮しているようだ。

(出来た!私にも魔法が!!……望まない転生だったんだから、これくらいの余録が無いとね。やっぱり異世界転生したからには魔法が使えないと!)


「よし。今日はここまでにしよう。[灯火]の魔法は小さいながら火の魔法だから、一人では練習しないようにな」

「はい!……[光明]とかなら良いですか?」

「む?そうだな、それなら構わぬが……まあ、予習しておくのは良いことだ」

「ありがとうございます!(よし!練習しまくって完璧にするぞ!)」


 このように、レティシアは順調に魔法を習得していく事になる。














「お客様?」

「ええ。お父様の懇意にしている方で、王都への道すがら我が家に寄っていくそうよ」

 ある日、レティシアはそんな話を聞いた。

 父アンリと親交のある貴族で、公爵邸のあるここイスパルナより西にある領の領主とのこと。
 最近昇爵して侯爵となったらしい。


「何でも小さな娘さんがいるらしくてね。あなたより少し小さいみたいだけど…仲良くしてあげなさいね」

「うん、分かったよ!(そう言えば、私って歳の近い友達っていないなぁ……精神年齢的に微妙だけど、少しくらいは友達がいないと寂しいよね)」

 レティシアはそう思い、来客を楽しみにするのであった。






 そして更に数日が経ち、件のお客様がやって来た。
 アンリも王都より帰宅しており、公爵家総出で迎える。

「よく来てくれたね、アーダッド殿」

「この度はお招きいただきありがとうございます、アンリ殿」

 アンリがにこやかに挨拶を交わすのは、金髪碧眼で熊のような巨躯を持つ男性。
 侯爵位を持つ高位貴族とのことだが…それっぽい服装でなければ、荒くれ者といった風体に見える。

「お、お久しぶりでございます、アンリ様、奥様」

「リファーナさん、お久しぶりですね。…そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ」

 侯爵の横に立ち、続いて挨拶をしたのは彼の奥方のようだ。
 黒髪黒目は珍しくはないが、貴族には少ない色彩だ。
 だが、淑やかな雰囲気で、夫よりは貴族婦人として違和感がないように見えるだろう。
 かなり緊張した様子だったので、アデリーヌは気遣いを見せる。

「そうそう、私達の仲だ。堅苦しい作法など不要だよ。ところで、そっちの可愛らしいお嬢さんには初めて会うね。紹介してくれるかな?」

「ああ、こいつは俺の娘でルシェーラってんです。ほら、挨拶しな」

「は、はじめまして、ルシェーラともうします!」

 母と同じようにやや緊張の面持ちで、幼いながらもしっかりと挨拶をするのは、母親譲りの黒髪と父親譲りの碧眼を持つ可愛らしい女の子だった。

「はい、はじめまして。しっかり挨拶ができて、偉いね。ルシェーラちゃんは何歳なのかな?」

「はい!わたしは3さいになりました!」

「うん、しっかりしてるね。今回は息子さんは一緒じゃないのかい?」

「それが、出発直前に熱を出しちまいまして…もう治ってるんですが、大事を取って今回は置いてきました」

「そうか、それは残念だったね……そうだ、君たちはリュシアンは知ってると思うが、レティシアは初めてだったかな?レティ、挨拶なさい」

「はい。侯爵閣下、奥様、それにルシェーラさん。初めてお目にかかります。アンリとアデリーヌの長女、レティシアと申します。以後お見知りおきのほどよろしくお願いします」

 カーテシーをしながら、そう挨拶をするレティシア。

「「……」」

 5歳児のものとは思えないしっかりした挨拶に、驚いて思わず絶句する侯爵夫妻。

「…ご丁寧な挨拶、痛み入ります。いや、こいつぁ驚きましたな。ウチのルシェーラも歳の割にはしっかりしてる方だと思ってたんですがね…」

「本当に。流石は公爵家ともなると教育も素晴らしいのですね」

 などと、彼らは感嘆した様子で褒め称えるが、アンリは複雑そうに答える。

「いやぁ……公爵家の教育の賜物というわけでは…」

「そうね…最近はすっかり慣れてきたけど、やっぱりおかしいわよねぇ…」

(そ、そんなに変だったかな……?でも、今更子供っぽく振る舞うのは抵抗があるし…別にいっか)

 少しやらかしたか?と思いながらも、結局はそう開き直るレティシアであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...