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レティシア5歳 はじまり
第7話 神話
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======================
むかしむかし。
この世界では人間と12柱の神様が一緒に暮らしていました。
その頃の世界は、人間の住める場所はほんのわずかで、強い魔物が世界中のいたるところにいました。
神様は人間のために、その強い魔物を退治してくれました。
時には強い人間が神様と一緒に魔物を退治することもありました。
そうして、少しずつ人間の住めるところが増えていきました。
しかし、やがて人間たちは神様の力を頼るだけになってしまいました。
それを悲しんだ神様はみんなで相談しました。
たくさん話をしました。
自分たちが一緒にいると人間たちはダメになってしまう。
そう考えた神様は、人間が自分たちの力で生きていこうと努力するように、この世界から出ていくことに決めました。
だけど、ある一柱の女神様だけは世界から出ていくことを悩んでいました。
自分たちが出ていってしまったら、本当に人間はこの世界で生きていけるのか?
そう心配したからです。
そんな女神様の優しい心を知った一部の人間は、自分たちを恥ずかしいと思いました。
そして、その人たちは神様に言いました。
自分たちは大丈夫です。
みんなの力を合わせれば、きっとこの世界で生きて行けます。
そう、約束しました。
それを聞いた女神様も、とうとうこの世界から出ていくことを決めました。
でも、女神様はやっぱり心配でした。
だから、他の神様に相談して、自分たちの力を正しい心を持った人間に分け与えることにしました。
そして、12柱の神様の力をもらった12人は、人間たちのリーダーとなりました。
やがて彼らはそれぞれ国をつくり、そこで王様になりました。
そして、人間たちは神様に約束した通り、みんなで力を合わせて国を大きくしていきました。
おしまい。
======================
「ねえ、エリーシャ。私達の国……イスパル王国も12の国の一つってことなの?」
絵本を読み終わったレティシアはエリーシャに質問する。
読んでいる途中でも、分からない単語や言い回しがあればその都度聞いていた。
「はい、そうですよ。イスパル王国は武神ディザール様の力を受け継いでいるのです」
「へえ~……王様がその力を持ってるの?」
「はい、イスパル王家の方が遥か昔の時代から力を受け継いでいるそうです。ただ……王族の方誰しもが力を使える訳ではなく、資質を持った方だけが使えるらしいですが」
「ふ~ん……」
(実際に何らかの力あるみたいな話しぶりだね。魔法がある世界なんだから、おかしくないのかもしれない)
「他にはどんな国が、なんの神様の力をもらったの?」
「そうですね……イスパルの周辺国ですと、リヴェティアラ様のレーヴェラント王国、オキュパロス様のカカロニア王国、エメリナ様のウィラー王国……などですかね」
(この辺は一般常識だろうから覚えておかないとね……)
この時は、実際に力を持つ者たちと親しくなるとは夢にも思っていなかった。
その後もレティシアは、図書室から借りてきた本を読み、言葉と知識を勉強するのだった。
「本を読みあさっている?いい事じゃないか」
レティシアが本を読むようになって数日経ったある日。
レティシアの母……アデリーヌが夫であるアンリに、レティシアの様子がおかしいと相談したところ、アンリはそのように返事をした。
「それはそうなんだけど…………前はあんなにお転婆で手を焼いていたくらいだったのに、あれ以来すっかり大人しくなってしまって…………やっぱり打ちどころがおかしかったのかしら?」
何気に失礼なことを言う。
レティシアは目立たないようになどと考えていたが、その思いとは裏腹にバッチリ怪しまれていた。
いや、怪しんでいるというよりは、心配しているというのが正しいだろう。
「成長してるという事だろう?色々なものに興味を持つ年頃だろうし、別におかしくはないと思うが……」
「そう……よね……」
夫にそう言われて、一応は納得したかのような返事を返すが、やはりどこか腑に落ちない様子である。
「そろそろ家庭教師も付けようと考えていたところだ。あの子が勉強に興味を持っているなら、私達はそれを伸ばしてやらないと」
「ええ、それは分かってるわ。出来れば、あの子が学びたいと思っていることを出来るだけ叶えてあげたいわね」
「そうだね。折を見てレティに聞いてみてくれるかい?」
「分かったわ。ところで、リュシアンはやっぱり騎士になるつもりなのかしら?」
「ああ、意志は固そうだね。まあ、公爵家を継ぐことも考えて勉学も疎かにはしていないし、私としては構わないと思ってるが」
「私は……あまり賛成はしたくは無いのだけど。戦乱が終結したとは言え、いつまたあんな戦いが起きるかもしれないのだし……」
「君が心配する気持ちは分かるけどね……あの子が自分で決めた事だから」
「分かってるわ。公爵家も武神の血筋ですものね……」
分かってはいても、母親が息子を心配するのは当然のことではあった。
むかしむかし。
この世界では人間と12柱の神様が一緒に暮らしていました。
その頃の世界は、人間の住める場所はほんのわずかで、強い魔物が世界中のいたるところにいました。
神様は人間のために、その強い魔物を退治してくれました。
時には強い人間が神様と一緒に魔物を退治することもありました。
そうして、少しずつ人間の住めるところが増えていきました。
しかし、やがて人間たちは神様の力を頼るだけになってしまいました。
それを悲しんだ神様はみんなで相談しました。
たくさん話をしました。
自分たちが一緒にいると人間たちはダメになってしまう。
そう考えた神様は、人間が自分たちの力で生きていこうと努力するように、この世界から出ていくことに決めました。
だけど、ある一柱の女神様だけは世界から出ていくことを悩んでいました。
自分たちが出ていってしまったら、本当に人間はこの世界で生きていけるのか?
そう心配したからです。
そんな女神様の優しい心を知った一部の人間は、自分たちを恥ずかしいと思いました。
そして、その人たちは神様に言いました。
自分たちは大丈夫です。
みんなの力を合わせれば、きっとこの世界で生きて行けます。
そう、約束しました。
それを聞いた女神様も、とうとうこの世界から出ていくことを決めました。
でも、女神様はやっぱり心配でした。
だから、他の神様に相談して、自分たちの力を正しい心を持った人間に分け与えることにしました。
そして、12柱の神様の力をもらった12人は、人間たちのリーダーとなりました。
やがて彼らはそれぞれ国をつくり、そこで王様になりました。
そして、人間たちは神様に約束した通り、みんなで力を合わせて国を大きくしていきました。
おしまい。
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「ねえ、エリーシャ。私達の国……イスパル王国も12の国の一つってことなの?」
絵本を読み終わったレティシアはエリーシャに質問する。
読んでいる途中でも、分からない単語や言い回しがあればその都度聞いていた。
「はい、そうですよ。イスパル王国は武神ディザール様の力を受け継いでいるのです」
「へえ~……王様がその力を持ってるの?」
「はい、イスパル王家の方が遥か昔の時代から力を受け継いでいるそうです。ただ……王族の方誰しもが力を使える訳ではなく、資質を持った方だけが使えるらしいですが」
「ふ~ん……」
(実際に何らかの力あるみたいな話しぶりだね。魔法がある世界なんだから、おかしくないのかもしれない)
「他にはどんな国が、なんの神様の力をもらったの?」
「そうですね……イスパルの周辺国ですと、リヴェティアラ様のレーヴェラント王国、オキュパロス様のカカロニア王国、エメリナ様のウィラー王国……などですかね」
(この辺は一般常識だろうから覚えておかないとね……)
この時は、実際に力を持つ者たちと親しくなるとは夢にも思っていなかった。
その後もレティシアは、図書室から借りてきた本を読み、言葉と知識を勉強するのだった。
「本を読みあさっている?いい事じゃないか」
レティシアが本を読むようになって数日経ったある日。
レティシアの母……アデリーヌが夫であるアンリに、レティシアの様子がおかしいと相談したところ、アンリはそのように返事をした。
「それはそうなんだけど…………前はあんなにお転婆で手を焼いていたくらいだったのに、あれ以来すっかり大人しくなってしまって…………やっぱり打ちどころがおかしかったのかしら?」
何気に失礼なことを言う。
レティシアは目立たないようになどと考えていたが、その思いとは裏腹にバッチリ怪しまれていた。
いや、怪しんでいるというよりは、心配しているというのが正しいだろう。
「成長してるという事だろう?色々なものに興味を持つ年頃だろうし、別におかしくはないと思うが……」
「そう……よね……」
夫にそう言われて、一応は納得したかのような返事を返すが、やはりどこか腑に落ちない様子である。
「そろそろ家庭教師も付けようと考えていたところだ。あの子が勉強に興味を持っているなら、私達はそれを伸ばしてやらないと」
「ええ、それは分かってるわ。出来れば、あの子が学びたいと思っていることを出来るだけ叶えてあげたいわね」
「そうだね。折を見てレティに聞いてみてくれるかい?」
「分かったわ。ところで、リュシアンはやっぱり騎士になるつもりなのかしら?」
「ああ、意志は固そうだね。まあ、公爵家を継ぐことも考えて勉学も疎かにはしていないし、私としては構わないと思ってるが」
「私は……あまり賛成はしたくは無いのだけど。戦乱が終結したとは言え、いつまたあんな戦いが起きるかもしれないのだし……」
「君が心配する気持ちは分かるけどね……あの子が自分で決めた事だから」
「分かってるわ。公爵家も武神の血筋ですものね……」
分かってはいても、母親が息子を心配するのは当然のことではあった。
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