【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I

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レティシア5歳 はじまり

第5話 始まり

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 ようやく心の整理をつける事ができたレティシア。
 まだ悲しみが癒やされた訳ではないだろうが、その瞳には前に進もうとする決意の光が宿っていた。

 先ずは、心配をかけた家族に謝らなければと思い、部屋を出ようとする。

「……って、流石に寝間着のままじゃマズイよね。エリーシャは外に居るかな……?」

 流石に幼い身とは言え、寝間着のまま邸内を彷徨くのは憚られる。
 着替えをお願いするためにエリーシャを呼ぼうと部屋の扉に近付く。
 すると、扉の外から何やら賑やかな声が聞こえてきた。
 会話の内容までは分からないが、何だか楽しそうな雰囲気を感じる。

 気になって、そお~……っと扉を開けると……

「父さまたち…………なにをしてるの?」

「!レティシアっ!?も、もう大丈夫なのかい!?」

「あら、レティ…………どうやら、立ち直ったみたいね?」

「レティ……え~と、これは父様がね…………」

 廊下そこにいたのは父、母、兄であった。
 それだけでなく、廊下なのに何故かテーブルが置かれて、更にその上には様々な料理が……
 宴会でも開かれていたかのような雰囲気だ。

「え……と?」

「いや~……こうやって楽しそうな雰囲気を出していたら、レティも気になって出てきてくれるかな、と思ってね。…………ほら、実際出てきてくれたじゃないか」

「……声が聞こえて出てきたわけじゃないけど」

(……わたしゃどこぞの太陽神様かいな。……裸踊りとかじゃなくて良かったよ)

 レティシアは内心呆れながら……それでも自分のために一生懸命考えてくれたことが嬉しく、また、そこまで心配をかけたことに申し訳なくなった。


「その……心配かけてごめんなさい。もうわたしは大丈夫だよ」

「そうか……良かったよ。でも、まだ辛いようだったら無理してはいけないよ?」

「そうね、今のあなたの様子を見る限り、本当に大丈夫だとは思うけど……アンリの言う通りね」

「レティ、何時でも僕達が側にいる。辛いことがあったら遠慮なく頼るんだよ」

 皆、何故レティシアが泣いていたのかは聞かない。
 彼女自身が心の整理をつけたのが分かったからだ。
 それでも、彼女を気遣う言葉をかけるのは忘れない。
 あなたには、私達がついているのだと。

「……はい!みんなありがとう!」

 そして、その気持ちを受け取ったレティシアは、前世の記憶を取り戻してから初めて心からの笑みを浮かべるのだった。






「と言うことで…………レティも食べてくかい?」

「いや、早く片付けようよ…………」















 そして、その次の日の朝。

 レティシアは、まだ癒えない悲しみを抱えながらも、前向きになれたためか思いの外ぐっすりと寝ることができた。
 そして、早起きして改めて状況を整理してみることにした。

「私はレティシア。5歳の…………女の子だ。つまり、転生で転性した、と」

 前世男の記憶を持つレティシアにとっては随分衝撃的な事であるはずなのだが、もはや今更な事でもあるので落ち着いてそれを受け止めることが出来ている。

「ん~……将来男と結婚させられたりするのかなぁ……そもそも今の自我的にはどっちなんだろ?」

 身体は間違いなく女なのだが、前世の男の記憶と現世の女の記憶を併せ持つ自分は、一体どちらの感情を持つのかが分からなかった。

「……ま、いいか。そのうち分かるだろうし……だいじょ~ぶ、何とかなるなる!」

 塞ぎ込んでいた時は鳴りを潜めていた彼女本来の楽天的で前向きな気質が本領を発揮して、考えても分からない事はそれ以上深く考えることをアッサリ放棄する。
 その性格は前世も同じであり、性別は違えど、それはやはり同一人物であることの証左なのかもしれない。


「それで、ここはイスパル王国で、ウチはモーリス公爵家……」

 5歳の娘の知識でも、そこまでは分かった。
 だが、イスパル王国がどのような国なのか、モーリス公爵家が国内でどのような立場なのか……そういうところまでは流石に分からない。

「ま、その辺は追々調べていけば良いでしょ。あとは、魔法……か」

 ここが異世界であると決定付けたもの。
 前世との明確な相違点。
 母や使用人が簡単な生活補助のものを使うところを見ただけだが、それは紛れもなく魔法だった。

「どの程度の事が出来るのか……自分も使えるのかは分からないけど。せっかく異世界に生まれたんだから覚えなきゃ損でしょ」

 さっそく一つの目標が出来たのは、もう彼女が立ち直っている証拠なのかもしれない。


「5歳程度の知識だとこのくらいかな…………よし、魔法もそうだけど、当面はこの世界の知識を学ぶところからだね!確かウチには図書室があったよね………………本を読むにしても、先ずは字を覚えなきゃ、か」





 こうして、彼女の異世界生活における第一歩が始まろうとするのだった。
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