7 / 191
レティシア5歳 はじまり
第5話 始まり
しおりを挟む
ようやく心の整理をつける事ができたレティシア。
まだ悲しみが癒やされた訳ではないだろうが、その瞳には前に進もうとする決意の光が宿っていた。
先ずは、心配をかけた家族に謝らなければと思い、部屋を出ようとする。
「……って、流石に寝間着のままじゃマズイよね。エリーシャは外に居るかな……?」
流石に幼い身とは言え、寝間着のまま邸内を彷徨くのは憚られる。
着替えをお願いするためにエリーシャを呼ぼうと部屋の扉に近付く。
すると、扉の外から何やら賑やかな声が聞こえてきた。
会話の内容までは分からないが、何だか楽しそうな雰囲気を感じる。
気になって、そお~……っと扉を開けると……
「父さまたち…………なにをしてるの?」
「!レティシアっ!?も、もう大丈夫なのかい!?」
「あら、レティ…………どうやら、立ち直ったみたいね?」
「レティ……え~と、これは父様がね…………」
廊下にいたのは父、母、兄であった。
それだけでなく、廊下なのに何故かテーブルが置かれて、更にその上には様々な料理が……
宴会でも開かれていたかのような雰囲気だ。
「え……と?」
「いや~……こうやって楽しそうな雰囲気を出していたら、レティも気になって出てきてくれるかな、と思ってね。…………ほら、実際出てきてくれたじゃないか」
「……声が聞こえて出てきたわけじゃないけど」
(……わたしゃどこぞの太陽神様かいな。……裸踊りとかじゃなくて良かったよ)
レティシアは内心呆れながら……それでも自分のために一生懸命考えてくれたことが嬉しく、また、そこまで心配をかけたことに申し訳なくなった。
「その……心配かけてごめんなさい。もうわたしは大丈夫だよ」
「そうか……良かったよ。でも、まだ辛いようだったら無理してはいけないよ?」
「そうね、今のあなたの様子を見る限り、本当に大丈夫だとは思うけど……アンリの言う通りね」
「レティ、何時でも僕達が側にいる。辛いことがあったら遠慮なく頼るんだよ」
皆、何故レティシアが泣いていたのかは聞かない。
彼女自身が心の整理をつけたのが分かったからだ。
それでも、彼女を気遣う言葉をかけるのは忘れない。
あなたには、私達がついているのだと。
「……はい!みんなありがとう!」
そして、その気持ちを受け取ったレティシアは、前世の記憶を取り戻してから初めて心からの笑みを浮かべるのだった。
「と言うことで…………レティも食べてくかい?」
「いや、早く片付けようよ…………」
そして、その次の日の朝。
レティシアは、まだ癒えない悲しみを抱えながらも、前向きになれたためか思いの外ぐっすりと寝ることができた。
そして、早起きして改めて状況を整理してみることにした。
「私はレティシア。5歳の…………女の子だ。つまり、転生で転性した、と」
前世男の記憶を持つレティシアにとっては随分衝撃的な事であるはずなのだが、もはや今更な事でもあるので落ち着いてそれを受け止めることが出来ている。
「ん~……将来男と結婚させられたりするのかなぁ……そもそも今の自我的にはどっちなんだろ?」
身体は間違いなく女なのだが、前世の男の記憶と現世の女の記憶を併せ持つ自分は、一体どちらの感情を持つのかが分からなかった。
「……ま、いいか。そのうち分かるだろうし……だいじょ~ぶ、何とかなるなる!」
塞ぎ込んでいた時は鳴りを潜めていた彼女本来の楽天的で前向きな気質が本領を発揮して、考えても分からない事はそれ以上深く考えることをアッサリ放棄する。
その性格は前世も同じであり、性別は違えど、それはやはり同一人物であることの証左なのかもしれない。
「それで、ここはイスパル王国で、ウチはモーリス公爵家……」
5歳の娘の知識でも、そこまでは分かった。
だが、イスパル王国がどのような国なのか、モーリス公爵家が国内でどのような立場なのか……そういうところまでは流石に分からない。
「ま、その辺は追々調べていけば良いでしょ。あとは、魔法……か」
ここが異世界であると決定付けたもの。
前世との明確な相違点。
母や使用人が簡単な生活補助のものを使うところを見ただけだが、それは紛れもなく魔法だった。
「どの程度の事が出来るのか……自分も使えるのかは分からないけど。せっかく異世界に生まれたんだから覚えなきゃ損でしょ」
さっそく一つの目標が出来たのは、もう彼女が立ち直っている証拠なのかもしれない。
「5歳程度の知識だとこのくらいかな…………よし、魔法もそうだけど、当面はこの世界の知識を学ぶところからだね!確かウチには図書室があったよね………………本を読むにしても、先ずは字を覚えなきゃ、か」
こうして、彼女の異世界生活における第一歩が始まろうとするのだった。
まだ悲しみが癒やされた訳ではないだろうが、その瞳には前に進もうとする決意の光が宿っていた。
先ずは、心配をかけた家族に謝らなければと思い、部屋を出ようとする。
「……って、流石に寝間着のままじゃマズイよね。エリーシャは外に居るかな……?」
流石に幼い身とは言え、寝間着のまま邸内を彷徨くのは憚られる。
着替えをお願いするためにエリーシャを呼ぼうと部屋の扉に近付く。
すると、扉の外から何やら賑やかな声が聞こえてきた。
会話の内容までは分からないが、何だか楽しそうな雰囲気を感じる。
気になって、そお~……っと扉を開けると……
「父さまたち…………なにをしてるの?」
「!レティシアっ!?も、もう大丈夫なのかい!?」
「あら、レティ…………どうやら、立ち直ったみたいね?」
「レティ……え~と、これは父様がね…………」
廊下にいたのは父、母、兄であった。
それだけでなく、廊下なのに何故かテーブルが置かれて、更にその上には様々な料理が……
宴会でも開かれていたかのような雰囲気だ。
「え……と?」
「いや~……こうやって楽しそうな雰囲気を出していたら、レティも気になって出てきてくれるかな、と思ってね。…………ほら、実際出てきてくれたじゃないか」
「……声が聞こえて出てきたわけじゃないけど」
(……わたしゃどこぞの太陽神様かいな。……裸踊りとかじゃなくて良かったよ)
レティシアは内心呆れながら……それでも自分のために一生懸命考えてくれたことが嬉しく、また、そこまで心配をかけたことに申し訳なくなった。
「その……心配かけてごめんなさい。もうわたしは大丈夫だよ」
「そうか……良かったよ。でも、まだ辛いようだったら無理してはいけないよ?」
「そうね、今のあなたの様子を見る限り、本当に大丈夫だとは思うけど……アンリの言う通りね」
「レティ、何時でも僕達が側にいる。辛いことがあったら遠慮なく頼るんだよ」
皆、何故レティシアが泣いていたのかは聞かない。
彼女自身が心の整理をつけたのが分かったからだ。
それでも、彼女を気遣う言葉をかけるのは忘れない。
あなたには、私達がついているのだと。
「……はい!みんなありがとう!」
そして、その気持ちを受け取ったレティシアは、前世の記憶を取り戻してから初めて心からの笑みを浮かべるのだった。
「と言うことで…………レティも食べてくかい?」
「いや、早く片付けようよ…………」
そして、その次の日の朝。
レティシアは、まだ癒えない悲しみを抱えながらも、前向きになれたためか思いの外ぐっすりと寝ることができた。
そして、早起きして改めて状況を整理してみることにした。
「私はレティシア。5歳の…………女の子だ。つまり、転生で転性した、と」
前世男の記憶を持つレティシアにとっては随分衝撃的な事であるはずなのだが、もはや今更な事でもあるので落ち着いてそれを受け止めることが出来ている。
「ん~……将来男と結婚させられたりするのかなぁ……そもそも今の自我的にはどっちなんだろ?」
身体は間違いなく女なのだが、前世の男の記憶と現世の女の記憶を併せ持つ自分は、一体どちらの感情を持つのかが分からなかった。
「……ま、いいか。そのうち分かるだろうし……だいじょ~ぶ、何とかなるなる!」
塞ぎ込んでいた時は鳴りを潜めていた彼女本来の楽天的で前向きな気質が本領を発揮して、考えても分からない事はそれ以上深く考えることをアッサリ放棄する。
その性格は前世も同じであり、性別は違えど、それはやはり同一人物であることの証左なのかもしれない。
「それで、ここはイスパル王国で、ウチはモーリス公爵家……」
5歳の娘の知識でも、そこまでは分かった。
だが、イスパル王国がどのような国なのか、モーリス公爵家が国内でどのような立場なのか……そういうところまでは流石に分からない。
「ま、その辺は追々調べていけば良いでしょ。あとは、魔法……か」
ここが異世界であると決定付けたもの。
前世との明確な相違点。
母や使用人が簡単な生活補助のものを使うところを見ただけだが、それは紛れもなく魔法だった。
「どの程度の事が出来るのか……自分も使えるのかは分からないけど。せっかく異世界に生まれたんだから覚えなきゃ損でしょ」
さっそく一つの目標が出来たのは、もう彼女が立ち直っている証拠なのかもしれない。
「5歳程度の知識だとこのくらいかな…………よし、魔法もそうだけど、当面はこの世界の知識を学ぶところからだね!確かウチには図書室があったよね………………本を読むにしても、先ずは字を覚えなきゃ、か」
こうして、彼女の異世界生活における第一歩が始まろうとするのだった。
10
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
少し残念なお嬢様の異世界英雄譚
雛山
ファンタジー
性格以外はほぼ完璧な少し残念なお嬢様が、事故で亡くなったけど。
美少女魔王様に召喚されてしまいましたとさ。
お嬢様を呼んだ魔王様は、お嬢様に自分の国を助けてとお願いします。
美少女大好きサブカル大好きの残念お嬢様は根拠も無しに安請け合い。
そんなお嬢様が異世界でモンスター相手にステゴロ無双しつつ、変な仲間たちと魔王様のお国を再建するために冒険者になってみたり特産物を作ったりと頑張るお話です。
©雛山 2019/3/4

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる