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第十五幕 転生歌姫の最終決戦

第十五幕 45 『空へ』

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ーーーー テオフィルス ーーーー


 世界中から声が届く。
 勝利を願い、未来を切り開く……そんな想いを乗せた声が。
 それは大きなうねりとなって『闇』へと流れ込む。

 神々に抑え込まれた闇の蠢動が激しくなり、内から何かが弾けるような気配を感じる。


「……聖剣グラルヴァルよ、その内なる力を全て解放するんだ!!そして俺に力を!!」

 俺はシギルの力を最大限に解放し、聖剣の力を限界まで引き出す。
 鮮烈な青い光が激しく噴き出した!


「闇を切り裂け!!はぁーーーーっっっ!!!」

 青い光の刃を闇に向かって斬りつける!!


 そして…………!!


 闇が切り裂かれたところから金銀の光が溢れ出す!!

 さあ、帰ってこい!!
 カティアっ!!




ーーーーーーーー





 テオの……皆の声に導かれて、私は溢れる光とともに闇から飛び出した。


「カティア!!」

「テオっ!!」

 グラルヴァルを振り下ろした格好のテオが、喜びと安堵の表情を浮かべて私を迎えてくれる。


「カティアさん!!」

「カティア~!!よかったよ~!!」

「帰ってくるって信じてたわ!!」

 邪神に倒されたはずの皆も……良かった、無事だったんだね。

 みんな、心配かけてごめんね。


「テオ……みんな、ありがとう。みんなの声が私を導いてくれたよ」

「ああ……良かった!ミーティアは……大丈夫か?」


 ミーティアは幼い姿に戻り、私の腕に抱かれて眠っている。

「うん、大丈夫。眠っているだけだから……この娘にも助けられたよ」


 お母さん……ずっと私を見守ってくれていた。

 私、頑張るからね!!



「カティア」

「リル姉さん……みなさんも。助けてくれてありがとうございます」

 リル姉さんたち12柱の神々の声も私に届いていた。

 本当に皆が力を合わせてくれたから私は戻ってこれたんだ。


「カティア、無事で良かったわ。……でも、まだ最後の戦いが残ってる。それは、あなたでなければ勝利を掴むことは出来ない」

「うん、分かってる」


 そして私は上空を見上げる。

 そこにあるのは、私を捕らえていた『闇』。
 聖剣に斬り裂かれ、内側から弾け飛んで吹き飛ばされたけど……そのくらいで滅びるようなものではない。

 今再び闇は収束し、巨大な球体となって蠢く。


「あの闇に囚われて分かったよ。邪神は……ううん、琉斗は彼自身が言った通り、自らの滅びも願っている。その矛盾を突くことができるのは、同じ魂を持つ私だけなんだ」

「……ええ。でも、あなたは一人じゃない。世界中の人々の想いが、貴女に力を与えてくれる。そして、私達の力も」

 そう言って、リル姉さんは……いや、他の神様たちも輪になって私を囲む。

 そして。


「カティア、私達の力を全てあなたに託します。私達の魂はあなたと共に!」

「カティアちゃん!あなたなら邪神なんかに負けないわ!!」

「うむ。必ずや勝利を掴み取るんだ!」

 リル姉さん、リナ姉さん、リリア姉さん……



「その武威、思う存分振るうがいい!」

「この世に不滅の存在なんかいねぇ。そいつぁ、邪神だって同じだぜ」

「太古から続く呪縛を解き放つのよ!!」

 ディザール様、オキュパロス様、リヴェティアラ様……


「未来へと続く可能性を信じるのよ」

「……人々が積み重ねた叡智は、邪神などに滅ぼされはしない」

「技術の発展に終わりはない。ここで終わらせてはならぬのじゃ」

 パティエット様、ヘリテジア様、オーディマ様……


「邪神は空間をも超越する力を持ってるみてえだ。だが、俺の力があれば恐るるに足りねぇぜ!」

「これは遥かな時の流れのほんの一瞬でしかない。だが……今この時を永遠に語り継がれる瞬間にするのだ」

「私の魔法の真髄をあなたに託しますわ。邪神にありったけを叩き込んで差し上げなさい!」

 シャハル様、イクセリアス様、シェラフィーナ様……


 全ての神々の力が私に流れ込む!!



「さあ!!今こそ全ての決着を!!」

「「「カティア!!!」」」


「うん!!みんな……行ってくるよ!!!」


 神々の声に、テオたち皆の声に後押しされて、私は黄昏の空へと舞い上がる。
 今なら飛翔の魔法も自由自在だ。


 そして、目指すのは蠢く闇……

 リュート……!!

 今いくよ!!

 そしてあなたを呪縛から解き放つ!!


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