上 下
617 / 683
第十五幕 転生歌姫の最終決戦

第十五幕 20 『最強の神』

しおりを挟む

ーー ウィラー王国 対グラナ戦線 ーー


 血なまぐさい戦場には似つかわしく無い、美しい歌声が響き渡る。
 それはただの歌ではなく、戦士たちを鼓舞し力を与える魂の歌。

 豊穣神にして、魂の守護者たるエメリールの力の発露だ。


 それに加えて、一足先に地上に降臨していた生命神エメリナが継続回復の結界を展開し、多少の怪我はたちどころに癒やされる。


 神々の加護を得た連合軍の戦士たちは精強で勇ましく、グラナ軍を圧倒していた。












「おい、ガエル!!前に出過ぎだぞ!!足並みを揃えろ!!」

「分かってる!!だがここは突破するぞ!!うぉーーーっっ!!」

「援護します!!」


 フリード、ガエル、ユーグは学生の身でありながら、歴戦の騎士、魔道士と遜色ない働きを見せている。
 彼らはエフィメラの部隊に参加し、前線でその力を振るっていた。


「あの者たち……エフィメラ様の同級生との事でしたな。まだ若いが……なかなかやる」

「ええ、頼もしい仲間です。ただ、あまり無茶はして欲しく無いのですけど……」

 エフィメラは複雑そうにブレイグ将軍の言葉に応える。
 ガエルは彼女の護衛のようなものだからまだ良いとして……彼に付き合う形で参加したフリードとユーグに対しては、少し申し訳ない気持ちがあるようだ。


「男が自らの意志で決めたことならば、それは尊重してやるべきでしょう」

「そう……ですね。私たちも負けてられません。行きますよ!!」

「はっ!!」

 そう言って、エフィメラは符術の札を手に、自らも戦いに身を投じる。
 そして、そんな主を頼もしいと思いながら、ブレイグも彼女に追従するのだった。














 一方……グラナ軍に単身で突撃し、多くの魔物を蹂躙しながら攻め入る武神ディザール。

 まさに鎧袖一触……かの神を相手にする者は、一合たりとも打ち合えず地に伏す事になった。


「ふっ……!!」


 ドォーーーーンッッッ!!!


 軽く剣を一閃させただけで凄まじい衝撃波が広範囲に広がり、轟音を立てて数多の魔物を吹き飛ばす。

 そうやって邪魔者を排除しながらディザールが目指すのは……



「うむ。これが黒魔巨兵とやらか……多少は骨がありそうだな。いざ、参る!!!」


 敵陣深く切り込んだ武神は、ついにグラナ軍最大の脅威と対峙する。

 黒魔巨兵は全部で8体。
 ディザールは、黒き巨人の威容に全く臆することなく、これまでと同様に突撃を敢行する。

 いや……これまでと違い、手にする剣が鮮烈な輝きを放つところを見れば、ギアを引き上げたであろうことが分かる。


 そして。


「ハァーーーッッッ!!![天地滅閃]!!!」


 気合一閃!!


 まだ彼我の距離が離れている状態から垂直に振り下ろされた剣から、これまでとは比較にならない衝撃波と閃光が放たれた!!


 ザンッッ!!!


 剣閃は巨人の頭の天辺から股間まで真っ二つに切り裂いてしまう!!

 そして、巨人は再生する間もなく黒い灰となって崩れ落ちた。


「この程度か……よし、他も残らず滅してやろう」


 何でもない事のようにディザールは呟くが……その比類なき武の力こそ、他の神々をして『最強』と言わしめる所以である。






 その後。

 彼の宣言通り、全ての黒魔巨兵が滅び去るのに、それほど時間はかからなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

私って何者なの

根鳥 泰造
ファンタジー
記憶を無くし、魔物の森で倒れていたミラ。テレパシーで支援するセージと共に、冒険者となり、仲間を増やし、剣や魔法の修行をして、最強チームを作り上げる。 そして、国王に気に入られ、魔王討伐の任を受けるのだが、記憶が蘇って……。 とある異世界で語り継がれる美少女勇者ミラの物語。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

処理中です...