上 下
614 / 683
第十五幕 転生歌姫の最終決戦

第十五幕 17 『星剣イクスヴァリス』

しおりを挟む


「シェラさん……」

 ヴィリティニーアさんの魂を見送った後も、暫く空を見上げたままだったシェラさんに声をかける。

 私の声に、ゆっくりとこちらを見た彼女は……今も涙が頬を伝っているが、とても透き通った表情だった。


「カティアさん……ありがとうございました。最期に…あの子と話をさせてくれて」

「いえ……私は……」

 お礼を言われるほどの事はしていない……そう言おうとして、その言葉を飲み込んだ。

 あの姉妹の語らいは、シェラさんが前に進むために必要な……大切で、かけがえのないひと時だと思ったから。

 だから、私は……

「……教えてもらえますか?妹さんの事を……」


 その想いを私達にも伝えてほしくて。

 確かに彼女が存在した事を、私達も忘れないという事を伝えたくて。

 そんな事を口にする。


「……聞いてくれますか?あの子のことを」


 そしてシェラさんは、それに応えてくれた。























「……ありがとうございます、話を聞いてくれて。さあ、そろそろ進みましょう。まだ、倒すべき敵が残っています」

 語り終えたシェラさんは、スッキリとした表情で言う。
 色々と整理がついて、自分の中で消化できたのだと思う。


 そして、彼女の言う通り……まだ倒すべき敵が残っている。
 しっかりと気持ちを切り替える必要があるだろう。


 シェラさんの言葉に皆頷いて、先に進もうとしたその時、ロランさんが話しかけてきた。

「その前に。カティア様……これを」

 と言って、彼が差し出してきたのは……


「星剣イクスヴァリス……良いんですか?」

「良いも何も……これは元々はアルマ王家に伝わっていたもの。その血筋を受け継ぎ、エメリール様のシギルを顕現されてるカティア様以上に相応しき使い手はございません」

「でも……」

 私は、ちら……とシェラさんに視線を向ける。

 この剣は、ヴィリティニーアさんが使っていた……ただ一つだけ遺された、形見の品とも言うべきものだ。

 そう考えると、シェラさんが持っているべきでは、と思ってしまうが……


「カティアさん、是非使ってやってください。あの子もそう願ってるはずです」

 私の迷いを察したシェラさんが、そう言ってくれた。

「……分かりました。有り難く、使わせてもらいます」


 彼女に後押しされて、剣を受け取った、その時……!


「あ……!」

「おお……!!」

「キレイなの!!」


 私が手にした瞬間、漆黒だった刀身に無数の輝きが宿ったのだ。
 『星剣』の名の通り……満点の星空を思わせるそれは、かつて夢に見た時の姿と同じものだった。


「これが……真の姿だったんですわね……」

「ああ、テオフィール様が手にされていた時と同じだ。やはり、カティア様を相応しき主だと、剣も認めているのだろう」


 確かに……まるでこの剣自身が意志を持っているかのように思える。

 そして私も、この剣を見ていると懐かしい気持ちになった。
 それは夢で見たから、と言うだけでなく……
 言葉では上手く言い表せないけど……
 もしかしたらアルマの血がそう思わせるのだろうか?

 それにこの剣は手によく馴染む。
 形状は、ごくシンプルな片手剣。
 私にとって長すぎず短すぎず、重量バランスも丁度いい。

 直剣じゃなくて、刀みたいに反りがあればなお良かったんだけど……と思っていたら。

「あ……」


 一瞬光に包まれた後、またもや変化が現れる。
 私の意を汲んでくれたのか、直剣から刀に変じたのだ。

 どうやら……リヴェラほど自由自在ではないけど、ある程度は持ち主に合わせて形を変化させられるみたい。

 さすが神器だね。


「……これからよろしくね」


 新しい相棒に声をかけると、刀身の星が煌めいて返事をしてくれたような気がした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

真紅の髪の女体化少年 ―果てしなき牝イキの彼方に―

中七七三
ファンタジー
ラトキア人―― 雌雄同体という特性を持つ種族だ。周期的に雄体、雌体となる性質をもつ。 ただ、ある条件を満たせば性別は固定化される。 ラトキア人の美しい少年は、奴隷となった。 「自分は男だ――」 少年の心は男だった。美しい顔、肢体を持ちながら精神的には雄優位だった。 そして始まるメス調教。その肉に刻まれるメスのアクメ快感。 犯され、蹂躙され、凌辱される。 肉に刻まれるメスアクメの快感。 濃厚な精液による強制種付け―― 孕ませること。 それは、肉体が牝に固定化されるということだった。 それは数奇な運命をたどる、少年の物語の始まりだった。 原案:とびらの様 https://twitter.com/tobiranoizumi/status/842601005783031808 表紙イラスト:とびらの様 本文:中七七三 脚色:中七七三 エロ考証:中七七三 物語の描写・展開につきましては、一切とびらの様には関係ありません。 シノプスのみ拝借しております。 もし、作品内に(無いと思いますが)不適切な表現などありましたら、その責は全て中七七三にあります。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう! そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね! なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!? 欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!? え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。 ※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません なろう日間週間月間1位 カクヨムブクマ14000 カクヨム週間3位 他サイトにも掲載

処理中です...