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第十五幕 転生歌姫の最終決戦

第十五幕 12 『魔族たちの戦い』

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ーーーー シェラ ーーーー


「ロラン、空中戦は?」

「得意とは言い難いが……やってやれないことはない」

 彼は元々は純粋な戦士だったはず。
 恐らくは魔族となってから[飛翔]の魔法を会得したのだと思う。


「まぁ、手数は補える。見てろ……」 

 そう言うとロランは意識を集中する。
 すると、彼の持つ大剣に異変が……!?

 すっ……と赤い光の線が刀身に走ると、そこから幾つもの刃に分かれ、ロランの周りをゆらゆらと漂い始めた。


「……それがお前の切り札か、魔剣士」

「そうだ。魔剣『グラーティス』。見ての通り、本体からいくつもの刃が分かれて、自由自在に操ることが出来る」

 分身の小剣は全部で6本。
 そして、彼が手に持った本体は、分身が分かれた分細くなったが、それでも長大な大剣であることに変わりはない。



「よし、行くぞ」

「ええ。……ロラン、ヴィーの剣……注意してね」

「ああ。よ~く、分かってるぜ」


 ……それもそうね。
 あの剣は、もともとテオフィールのもの。
 彼に仕えていたロランなら、よく知っているはず。



「行けっ!!魔剣たちよ!!」

 ロランの指示によって、6本の刃が一斉にヴィーに向かって行く!

 それに合わせてロラン自身も間合いを詰める!!



「はあーーーっっっ!!!」

 複雑な軌道を描いて四方八方から6剣が殺到し、正面からロランが斬りかかる!!

 キィンッ!!

 キキィンッッ!!


 ヴィーは手にした星剣を大きく振り回して周囲の小剣を弾き返し、ロランの斬撃は身を捻って躱しながら上後方に退避する。


「[天雷・極]!!」


 間合いが離れた隙を狙って、上級雷撃魔法を放つ!!

 ヴィーの頭上から雷が落ちる!!


 しかし……


「[水牢]」


 バチバチバチッッ!!!


 ヴィーの行使した魔法によって、彼女の頭上に巨大な水球が作り出され、雷撃を全て受け止めてしまう!

 水球はその殆どを瞬時に蒸発させるが、高温高圧のプラズマ塊と化す。

 そして、それをこちらに向かって撃ち出してきた!


「剣よ!!」


 ロランの指示によって射線上に小剣が集結し……六芒星を描き出すと、結界となってプラズマ弾を防ぐ。


「散!!」


 プラズマ塊の消失を確認すると、再び小剣を散開させ、今度は少しずつタイミングをずらしながら放って連携攻撃を仕掛ける。


 私はその間に、次の魔法の準備を開始する。



 息をもつかせぬ戦いの決着は、まだ先が見えなかった。


ーーーーーーーーーー




 上空で調律師とシェラさん達の戦いが行われているのは確認できたが、今はそちらを気にしている余裕がない。


 調律師の切り札、彼女の異能によって呼び出された異界の亡者たちは、いくら倒しても次から次へと湧いて出てくる。


 私達はリル姉さんの加護『魂の守護』を得ているので、直ちに魂を喰われる事はないと思うけど……
 あれだけの大群に群がられたら、それもどこまで有効か分からない。

 何とかこっちを凌ぎつつ、シェラさん達に加勢したいところなんだけど……

 そんな時、ミーティアの頭上のミロンが話しかけてきた。


「……カティアさま、ミー姉さま。何とかもう少し耐えてください」

「え?ミーちゃん……何か策があるの?」

 私は歌っているので返事は返せないけど、視線で問いかける。


「ここはダンジョンではありませんけど……いま、この『異界』に繋がった状態なら、ダンジョンコアを用いて擬似的なダンジョンを生み出せます。そうすれば私も……」


 そんなことが出来るのか……

 とにかく、いまはこの膠着状態を何とかしなければならない。
 私は、『頼んだよ』という思いを込めて頷いて見せる。

「ミーちゃん、お願い!!」

「はい、何とかしてみせます!!」


 そう言ってミロンはミーティアの頭上から飛び上がり、彼女から[天道律]を発動する際に使用したダンジョンコアを受け取って、瞑目するのだった。
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