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第十四幕 転生歌姫と繋がる運命の輪

第十四幕 43 『占星術師の最期』

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「か……は……?」


 その時、何が起きたのか……直ぐには分からなかった。




 占星術師がいよいよ本気を出し、全力で攻撃する気配を見せた時。

 彼女の身体から莫大な魔力が吹き出し、私達が戦慄を覚えた、その時。


 突如、占星術師の胸から巨大な剣の切っ先が飛び出してきたのだ。
 しかし、その背後に誰かが居るようには見えない。



「……ごふっ」

 咳き込んだ彼女の口から、鮮血が滴り落ちる。


 その場の誰もが混乱し、硬直する。


 そして響く何者かの声。


『お前が守りを解く時を待っていたぞ。……嬢ちゃん何をぼさっとしてる!!これくらいではこいつは滅ぼせん!!止めを刺せ!!』


 誰っ!?

 ……いや、この声……聞き覚えが……?

 謎の声に、ハッとなったステラが、矢を番えて撃ち放つ!!


「っ!!『銀矢連弾』!!」


 放たれた幾本の矢は、銀の光となって占星術師に襲いかかる!!


 そして……!!


「くぁっっ!!!」

 矢の尽くが占星術師の身体を貫いた!!



 ステラの矢は、私のシギルほどの魔族特攻は持たないけど、神聖武器と同等以上の退魔能力を持っているはず。
 あれだけ無数の矢が当たれば、流石に無事ではすまないだろう。



 ここに、占星術師との死闘は幕を降ろしたのである。

 だけど……彼女を打倒するきっかけとなった、不意の一撃。
 一体何者が……?

 味方だとは思うが……















「これが私の運命か。……いや、こうなるであろう事は薄々分かっていたことだ」

 既に身体が崩壊しかけている占星術師。
 まだ喋れるようだけど、それも時間の問題だろう。
 少しでも情報を聞き出したいところだけど……


「薄々分かっていた……?」

「……軍師はお前を『黒き神の神殿』に招くと言った。にも関わらず私を刺客として差し向けた。ならば、私はお前たちの実力を測るための捨て駒……あるいは何らかの時間稼ぎ……そんなところだろう」


 私を『黒き神の神殿』に招く……?

 やっぱり……そこに行けば何かが起こるのは間違いないみたい。
 だけど、黒神教がそれを望むと言う事は……

 私は奴らの思惑を超えて、邪神を何とかしなければならない。


 それにしても。
 味方を欺いて捨て駒にするなんて……

 死闘を繰り広げた相手だけど、つい同情してしまう。


「……甘い奴だ。自分を殺そうとした者に、そんな目を向けるとは」

「……そうもしれない。だけど、それが私だから」

「そうか。嫌いじゃないな、そういうのは。だが、これもまた運命。思えば私は……人間の時からただ運命に翻弄されるだけだった……」

 どこか諦めの表情で彼女は呟く。
 彼女がどう言う人生を歩んできたのか……それを知る術は無い。
 ただ……無性に悲しい気持ちになった。


 しかし、身体の崩壊は着実に進む。
 もう彼女に残された時間は殆ど無いだろう。



「……『魔剣士』。そこに……いる……のでしょう?」

 最後の力を振り絞るように、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。

 ……『魔剣士』?


 すると、フォルトゥナの声に応えるように、何物かがスッ……と、姿を現した。

 フードを目深に被って顔は見えないが、ローブを纏ったその体躯からすれば、おそらくは男性だろう。
 先程聞こえた声も男のものだった。

 その手には、彼の身の丈をも超える巨剣を携えている。
 切っ先を見ると、先程フォルトゥナを貫いた剣と同じ物のように見えた。


 魔族……だろう。

 先程は加勢してくれたようだけど、ハッキリ味方だと断じる事も出来ない。

 私達は警戒して戦闘態勢を崩さずに、彼と対峙する。


 それをよそに、フォルトゥナが話を進める。


「……あなたが…裏切る…とは」

「悪いな。俺の目的は、お前たちとは相反するものだからな。多分……軍師のヤツは気付いてたと思うが」

「……そう…ですか……やはり…私は……いえ……私達は……彼の掌の上で……踊らされてた……の……」


 それを最後に、フォルトゥナの言葉は途切れてしまった。

 そして程なく……彼女の身体は、黒い灰となってしまった。


 七天禍『占星術師』のフォルトゥナ。
 紛れもない強敵の、呆気ない最期であった。

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