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第十四幕 転生歌姫と繋がる運命の輪
第十四幕 35 『賢者の塔、再び』
しおりを挟む大空の旅は半日ほど。
日が中天から少し傾いた頃、アスティカントに到着した。
家々が密集した街中では飛竜籠が着陸できる場所が限られるが……予め、学院の校庭に降りる許可を貰っているはず。
そう思って下を見下ろせば、学院の職員らしき人が手旗を振って誘導してくれているようだ。
他にも何人か、おそらく私達を出迎えるために集まってきているみたい。
「皆様方、ようこそおいで下さった」
「グレイル評議長!お久しぶりです!」
飛竜籠から降りた私達を最初に出迎えてくれたのは、アスティカントの首長であるグレイル様だ。
その後ろには、母様やアネッサ姉さんの学院での同期であるジーナさんの姿も。
「話は聞いておりますぞ。賢者の塔……じゃな」
「はい。調べさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「もちろんじゃ。早速行きましょうぞ」
そう言って自ら先導するグレイル様。
どこかしらワクワクしてるかのような雰囲気だ。
ご高齢で研究者としては一線を退いているとは言え、興味は抑えられないのだろう。
グレイル様以外にも、ジーナさんたち学院の職員、研究員も同行するようだ。
彼らもグレイル様と同じく、未知のものを解明する喜びの感情が滲み出ていた。
そしてやって来た賢者の塔。
かつて訪れたときと変わらぬ威容。
「これが、かの有名な賢者の塔……神秘的な建物ですわね」
「こんなの造るなんて……カティアの前世ってのも、かなりアレよね……」
「アレだね~」
「アレね」
アレって何さ、シフィルさんや。
メリエルちゃんとステラも同調してるし。
いや、自分自身でも、前世の琉斗がここまで色々出来ることが未だに信じられないくらいなんだけど。
……ともかく。
賢者リュートは、ここに大転移魔法を使うための場所が隠されていると言った。
「ミロン、頼んだよ」
「はい!迷宮妖精の名にかけて、お任せあれ!」
……うん、ちょっと不安。
だけど、この娘もやるときはやる。
……はず。
塔の中に入る。
取りあえずは隠し部屋に向うか?
そう思ってエレベーターの中に入ると……
「……むむ?」
「?どうしたの、ミーちゃん?」
何かに気付いたらしき声を上げるミロン。
ミーティアの問いかけに直ぐには答えず、彼女の頭の上から離れエレベーター内をパタパタと飛び回り……
「……やはり」
「何か分かったか?ミロン」
テオの問い掛けに、今度は答えるミロン。
「間違いありません。この塔は……ダンジョンですね」
「な、なんじゃと!?そんな馬鹿な……」
「ダンジョン?ここが……?」
ミロンの言葉に、大きな驚きを見せるグレイル様やジーナさんたち。
だけど、私はそれほど驚きは無かった。
アクサレナでダンキチからダンジョンの秘密を聞いたリュートは、自身が後世に色々な仕掛けを残すに当たって、その技術を応用したのだろう。
この塔の隠し部屋も、塔の外観からはわからない場所にあるみたいだけど……ダンジョンの異界に組み込まれてると考えれば納得だ。
そして、ウィラー聖域のリュートがミロンを名指しした理由も分かる。
ここがダンジョンならば、道先案内人として迷宮妖精たる彼女が適任、ということなのだろう。
「じゃあ、アクサレナダンジョンの時のように、ミロンはここの構造を把握出来るってこと?」
「……はい、大丈夫そうですね。リュート様が生み出したと思われるここなら……」
「よし。じゃあ、上の隠し部屋に行ってみよう!」
そこにあると言う更なる秘密も、彼女なら暴いてくれるだろう。
……不安だなんて言ってゴメンね、ミロン。
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