567 / 683
第十四幕 転生歌姫と繋がる運命の輪
第十四幕 17 『熱狂』
しおりを挟む「うふふふふふ………」
……シフィルがヤバい。
魔導杖に頬ずりしながら不気味な笑い声を上げている。
完全にヤバい人になっていた。
「シフィル、しっかりしなさい。メリア様がドン引きしてるわよ」
ステラが嗜めるが、なかなか戻ってこない。
「うふふ……見て、この美しさ。シンプルな形状ながら表面に刻まれた複雑精緻な紋様。これ一つ一つが魔法陣になってるのよ。凄いわ……それに包含する魔力の凄まじさと言ったら。何もかも吹き飛ばす暴風と優しいそよ風が同居する矛盾を抱えながらそれでいて……」
アカン。
訳のわからないことを呟き始めた。
「……リーゼみたいだな。いつもこうなのか?」
「普段はこんなキャラじゃないけど。どうも凄い武器とか魔導具に目が無いみたいで……」
前も競技用魔導杖を手にしてキャラ崩壊してた。
まあ、そんな彼女は置いておいて……
私達は今、聖域をあとにして森都へ帰る道中である。
メリアさんは聖域に残ると思ったんだけど、リナ姉さんが地上にいる間は一緒に行動するとの事。
「森都に戻ったら……取り敢えずエメリナ神殿かな?」
「賢者様に聞いたお話を、神様方に共有するのですわね」
「う~ん……今行って大丈夫かなぁ?」
?
メリエルちゃんが複雑そうな表情でそんな事を言うが……
「どうしたの?」
「こっちに来る前に神殿の様子を見てきたんだけど……ちょっと騒がしかったんだよね。多分、エメリナ様が……」
……それは間違いなくリナ姉さんが原因だろうね。
う~ん……どうしようか。
早く話はしておいた方が良いとは思うけど……
状況次第だね。
夕刻前に私達は森都へと戻ってきた。
そして、王城に戻る前にエメリナ神殿に向ったのだが……
「……凄い人集りだね」
「私が見たときよりも多いよ」
神殿入り口から広場まで人で溢れかえっている。
この人混みをかき分けて中に入るのは……ちょっと無理かもしれない。
「中に入るのは厳しそうですわね……」
「そうだね……出直すか。でも、集まってる理由は知りたいね。……すみませ~ん!」
私は近くに居た年配の女性に声をかけた。
彼女は……いや、その場の誰もが興奮冷めやらぬ様子で神殿の様子を窺っていた。
「あの~、この騒ぎは一体何でしょうか?」
「何だ、知らないのかい?エメリナ様がいらっしゃってるんだよ!みんな一目お姿を見ようと集まってきたんだ!」
あぁ、やっぱりか。
変装していったはずなんだけど……バレたのか、敢えてなのか。
なお、私達も一応変装はしているので、今のところ身バレはしていない。
「エメリナ様がご降臨なさった時に奇跡を起こしてくださっただろう?あの時私の持病も治ってねぇ……お近くに行くのは無理でも、せめて感謝の言葉を届けたいと思ってね」
彼女がそう言うと、近くに居た別の女性も言う。
「私は旦那が国軍の兵士なんだけど……大怪我を負って命を落としかけたところを救っていただいたの!」
「俺の息子も…………」
「私も……」
それを皮切りに、周囲の人達から次々にリナ姉さんへの感謝の言葉が上がり、ちょっとした騒ぎになってしまった。
やはり神の奇跡と言うのは凄いものだと改めて実感した。
だけど、やっぱり神殿に入るのは難しそうだ。
落ち着いてから改めて来る事にしよう。
10
お気に入りに追加
348
あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜
O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。
しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。
…無いんだったら私が作る!
そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる