上 下
540 / 683
第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り

第十三幕 63 『神威降臨』

しおりを挟む

 鮮血のように赤い獣毛に覆われた巨人……元々はブレイグ将軍だったモノ。
 かつてアクサレナに現れた黒魔巨兵ほどではないが、それでも身の丈は優に5メートルは超える。

 そして、その内在する力は黒魔巨兵の比ではない。
 『鬼神降臨』を発動した時の将軍よりも強大なプレッシャーを感じる……!


 最後の最後でとんでもない切り札を切ってきたね……



「ひょ~っひょっひょっ!!どうじゃ!?コイツは以前に主らが相手にした黒魔巨兵とは比べ物にならぬぞ!!なんせベースが違うからのぉ……!」


 ………


「『魔薬』自体も前回の戦闘データを元に改良を重ね……貴重な素材を注ぎ込んで、更にブレイグ将軍用に調整した特製薬じゃ!」


 ……クズめ。
 人を実験動物としか見ていない、正真正銘の外道だ。

 しかし、実際どうする?
 薬師だけでも厄介なのに、さらにブレイグ将軍まで……
 彼を元に戻すことは出来ないのだろうか?



 そう思っていると、メリアさんが何でもないように声をかけてきた。


「大丈夫よカティアさん。直ぐにこの戦いは決着するわ。こちらも、最後の切り札があるでしょう?」

 切り札……
 確かに、今こそそれを使う時か。
 

 私は懐から翠色の美しい宝石を取り出す。
 そして、ギュッと両手で祈りを込めるように握りしめてから、高々と天に掲げる。


「お願い、リナ姉さん……私達に力を貸して!!」


 すると……

 パァッ!!

 と、宝玉から光が溢れ出し、天に向かって翠色の光の柱が立ち昇る!!

 それは森都を覆っていた雲の切れ間に吸い込まれ……











『神威降臨……!』





 厳かな女性の声が天より響き渡り、光に包まれた何かが雲間から現れる。


 それは……3対6枚の光の翼を持った女神。
 目を瞑り、祈るように両手を組んでゆっくりと降りてくる。

 普段の快活で親しみやすい雰囲気と異なり、まさに女神と呼ぶに相応しい神々しさだ…


 こうして、悠久の時を超えて……生命神エメリナが、再び地上に降臨した。
 その光景を目の当たりにした多くの者が、跪いて祈りを捧げ……女神の地上降臨を喜び涙するのだった。


















「うわ~……リナちゃん、演出過剰じゃない?」


「こら、そこっ!演出とか言わないっ!」


 メリアさんの呟きに、ビシッ!と指さしてツッコミを入れるリナ姉さん。

 ……色々と台無しである。


「……コホン。ま、まぁいいわ。私が地上に降りた以上……この地で非道な行いは許さないんだから!」


 薬師と赤巨人の前に仁王立ちして、リナ姉さんは宣言する。


「神……じゃと?まさか…………ええい!!例え神とて、ワシの傑作の前にはひれ伏すしかあるまい!!行けっ!!ブレイグよ!!」

『GRRRRAAAーーー!!!』


 薬師の指示を受けた巨人が、リナ姉さんを叩き潰そうと巨大な拳を振り下ろす!!!


「リナ姉さんっ!!!」

「「「エメリナ様っ!!」」」

 あまりにも圧倒的な体格差に、思わず私達は悲鳴を上げる!



 ぱしっ……



 しかし、その巨大な拳の勢いに全く相応しくない軽い音を立てて、リナ姉さんの小さな手があっさりと受け止めてしまう。

 小さな身体が微動だにすらしないその光景に、私達は唖然とする。


「歪な変容を強いられてるのね。可哀想に。……生命を冒涜する行い、許すまじ」


 すると、受け止めた掌から翠の光が巨人の身体へと伝わっていき……見る見るうちに巨人の身体が縮んで行くではないか!!

 そして、すっかり元の姿に戻ったブレイグ将軍は、再び気を失って地面に横たわる。



「すごい……。これがリナ姉さんの……神様の力?」

「どやぁ……!」

 私の感嘆の呟きに、リナ姉さんはドヤ顔である。

 何か凄く神様っぽく登場したけど、そういうところは普段通りでちょっとほっこりした。



「な、な、な………!?」


 そして、残されたのはただ一人……薬師のみ!

 ウィラー防衛戦も、いよいよ終わりが見えてきたよ!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう! そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね! なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!? 欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!? え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。 ※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません なろう日間週間月間1位 カクヨムブクマ14000 カクヨム週間3位 他サイトにも掲載

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

真紅の髪の女体化少年 ―果てしなき牝イキの彼方に―

中七七三
ファンタジー
ラトキア人―― 雌雄同体という特性を持つ種族だ。周期的に雄体、雌体となる性質をもつ。 ただ、ある条件を満たせば性別は固定化される。 ラトキア人の美しい少年は、奴隷となった。 「自分は男だ――」 少年の心は男だった。美しい顔、肢体を持ちながら精神的には雄優位だった。 そして始まるメス調教。その肉に刻まれるメスのアクメ快感。 犯され、蹂躙され、凌辱される。 肉に刻まれるメスアクメの快感。 濃厚な精液による強制種付け―― 孕ませること。 それは、肉体が牝に固定化されるということだった。 それは数奇な運命をたどる、少年の物語の始まりだった。 原案:とびらの様 https://twitter.com/tobiranoizumi/status/842601005783031808 表紙イラスト:とびらの様 本文:中七七三 脚色:中七七三 エロ考証:中七七三 物語の描写・展開につきましては、一切とびらの様には関係ありません。 シノプスのみ拝借しております。 もし、作品内に(無いと思いますが)不適切な表現などありましたら、その責は全て中七七三にあります。

処理中です...