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第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り
第十三幕 50 『森都防衛戦4』
しおりを挟むーーーー テオフィルス ーーーー
カティアと別れた俺は、戦場の一つへと向かっていた。
彼女の事は心配だが……その一方で、戦士として誰よりも信頼しているのも確かだ。
だったら今は自分自身のことに集中すべき……そう、意識を切り替える。
そして、戦いの気配はもうすぐそこに感じられる。
俺は聖剣を鞘から抜いて、いつ敵と遭遇しても良いように印を常駐化させる。
今回はカティアの[絶唱]によるサポートは期待できない。
俺たち一人ひとりの力が重要になるだろう。
俺の印、『解放』の力でも味方の戦力の引き上げは可能だが……効果範囲は[絶唱]と比べるべくもない。
それよりは……
自身の切り札について考えながら街を駆け抜ける。
そして……
「見えたっ!!行くぞっ!!」
細い路地の先、少し広場のように開けた場所で戦闘が行われているのが見えた。
俺は躊躇することなくそこに飛び込んでいく!
「ぜやぁーーーっっ!!!」
上手いこと敵方後方から奇襲となる。
突然の事に驚いて対処できない魔物……オークやトロールなど、数体を屠りながら敵陣を駆け抜け、ウィラー兵のもとに合流する。
……魔物との混成部隊と聞いたが、どうやらそれ程脅威度が高い敵はいないようだ。
あるいは、まだ温存してるだけかもしれないが。
「あ、あなたは……!?」
「俺はレーヴェラント第3王子、テオフィルスだ!!メリエル王女と他の仲間たちとともに、ウィラーの救援にやってきた!!」
俺が名乗ると、瞬く間に驚きが敵味方問わずに広がっていく。
「テオフィルス様……って、あのイスパルのカティア様の婚約者?」
「で、では!!あの星光の歌姫もここに!!?」
どうやらカティアの名前はウィラーにまで轟いてるようだ。
自分の事のように誇らしい気持ちになった。
「そうだ!!だが、この混戦状態では彼女の[絶唱]の力は使えん!!今はとにかく、グラナ兵どもを押し返す事に専念するんだ!!」
「「「はっ!!!」」」
どうやら……カティアのお陰で士気も上がったようだ。
英雄の名がいかに皆に勇気を与えるものなのか、改めて実感するのだった。
ーーーーーーーー
「私はイスパル王国の王女、カティア!!星光の歌姫の名のもとに、力を合わせて敵を押し返すのです!!」
「「「お~っっっ!!!!」」」
……え?
その二つ名は好きじゃないのでは……って?
まぁ、そうなんだけど。
今も自らダメージを負ったけども!!
これで皆の士気が上がるなら、どうと言うものでもない!!
「カティア王女だとっ!!?」
「何でこんなところに!?」
「だが、討ち取れば報奨は思うままだぞ!!」
おっと……冗談を言ってる場合じゃないか。
まぁ、そう簡単にやられてあげないけどね!
激しく戦いが行われてる北街区の一画へとやってきた私は、そこへ飛び込んで名乗りを上げ戦闘参加を宣言した。
敵は軽鎧に剣や槍、盾で武装したグラナ兵。
それに加えて……
「ゴブリン、オーク、トロール、オーガ……代わり映えはしないけど、人間の兵士と連携するなら妥当なところなのかな?」
ある程度の知能を持ち、足並みが揃うという点では軍隊として考えれば妥当なラインナップなのかもしれない。
もちろん通常兵からすれば、魔物というだけで脅威ではあるのだけど。
さて……魔物相手なら気にする必要もないけど、通常兵は殺さないで済むならなるべくそうしたいところだ。
そう考えた私は、リヴェラを棍……要するに、長い棒状へと変化させる。
唯の棒と侮ることなかれ。
達人が振るえば剣や槍にも劣らない恐るべき武器と化すのだ。
魔物相手なら薙刀、人間相手には棍……というように使い分ける。
さぁ……行くよっ!!!
「[氷弾・散]!!!」
先ずは挨拶代わりに初級魔法をばら撒く。
敵味方入り乱れていると魔法は使い難いけど……ちょうど私の方に向かってきたので遠慮なく撃たせてもらった。
狙いが私に向いてくれるなら、その方がやりやすいね。
初撃の初級魔法程度では、鎧や盾を持った相手やそれなりの強さの魔物には大した効果は無いが……牽制にはなるだろう。
実際にあの程度の魔法でも足を止めることができた。
「せいっ!!やあっ!!ハア~ッッ!!!」
その隙を突いて一気に間合いを詰め、棍を振り回して連撃を敵兵に叩き込む!!
「ぐわっ!?」
「がっ!!?」
武器を持った手を砕き、腹に突きを入れて何人かを戦闘不能にさせる。
「でやぁーーーっっ!!」
ザシュッッ!!!
更に、近くにいた魔物相手には、瞬時にリヴェラを薙刀に変えて斬撃を見舞う!!
「うぉーーーっっ!!!」
「カティア様に続けーーーっっ!!!」
そして、私の単騎特攻に触発されたウィラー兵は、雄叫びを上げて敵兵へ斬り込んで行く!!
さあ!!
ここから反撃するよ!!
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