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第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り
第十三幕 24 『綺羅星の如く』
しおりを挟む今日は国際会議出席者を招いて、エーデルワイス歌劇団の公演が行われる予定である。
現在は休演中で、一般向けの演目とも異なる特別公演となる。
私は朝早くから楽屋に入って準備を行い、開演前のミーティングに参加しているところだ。
「ま、お偉いさん相手ったって俺らがやることはいつも通りだ。あんまり気負うんじゃねえぞ」
そういう父さん自身は全くもっていつも通り。
そしてベテランもそれは同じだ。
ハンナちゃんやリィナたち若手メンバーは少し緊張してるみたいだけど、父さんの言葉にはしっかりと頷く。
「大丈夫よ~、これまでだって~王様とか王妃様がお客様だったりしたし~。ダードさんの言うとおり~、いつも通りやるだけよ~」
「お~~っほっほっほっ!!ついにこのワタクシも、世界的スタアになる時がやってきたのですわね!!」
ふむ、ウチの二大女優も絶好調の様子。
「こっちは大丈夫みてえだな」
まあ、いまさら各国要人を前にして緊張するような面子でもないでしょ。
普段から私絡みで父様母様を筆頭に、割と高位の貴族とかが訪れたりしてるし。
とは言っても、イスパルを代表する歌劇団として最高のパフォーマンスを見せよう、という気持ちは皆持っているだろう。
気負いではなく、いい感じで気合は入っているはずだね。
「んで……大丈夫か、アリシア?」
「だだだだ大丈夫ですっ!!」
ん~……ガチガチだなぁ……
デビュー以来、何度か舞台には立っているアリシアさんだが、元来の性格もあってか舞台に立つ直前は未だにこんな感じだ。
いや、今日はいつもより更に……だね。
「出番はまだ先なんだから、もう少しリラックスしておこう?ほら、深呼吸」
「はははい!はぁ~、すぅ~」
彼女の場合は舞台に立ってしまえば全く問題無いんだけど、流石にもう少し慣れないとねぇ……
そして、開演時間となる。
会場は6~7割くらい埋っているだろうか。
直接会議に出席していない裏方さん達も含めて招いているらしいのでかなりの人数ではあるが、普段は満席が当たり前なので少し雰囲気が異なる気がする。
今日の演目は……次回公演で行う予定のものを、今回のために先行して特別にお披露目する。
公演時期である『生命神の月(4月)』に因んで、リナ姉さん縁の国であるウィラー建国の女王の伝説を題材にしたお話だ。
実は今日はメリエルちゃんも観客として来ているはず。
喜んでもらえると良いのだけど。
主人公のメリア役はハンナちゃん。
魔法薬で髪を金髪にして、いつもとは違った雰囲気である。
幕が上がって最初の場面は深い森の中。
メリアは森の中の一軒家で一人暮らしながら、亡き祖母から薬草の知識や製薬の技を引き継いで薬師として生計を立てていた。
ある日、森の中に迷い込んだ男……騎士グレン(役:カイト)との出会いから物語は始まった……
メリアは、ある問題を解決するためデルフィア王国へと赴くよう、騎士グレンに頼まれる。
その問題とは、デルフィアの王女ロザリンデ(役:リィナ)が病に倒れたので、高名な薬師だった祖母に代わって治療してほしい……というもの。
王都デルフィニアに辿り着いたメリアは、薬師としての知識を活用して見事に王女を治療することに成功する。
だが、王女は病などではなかった。
彼女は呪いをかけられていた事が判明したのだった。
乗りかかった船とばかりに、メリアは呪いをかけた犯人探しに協力し……ついには犯人(役:ダードレイ)との直接対決となる。
その他の主な配役としては以下の通り。
女騎士イェニー:ロゼッタ
騎士カール :ティダ
レヴィ(狼) :ロウエン
ロウエンさん……
クライマックスはやはり戦闘シーン。
エーデルワイスのお約束だ。
物語の解決は腕力で!
そうして、王都デルフィニアを舞台にした事件はメリアの活躍で解決し、物語は大団円となる。
照明に照らされた演者たちの綺羅びやかな衣装が光輝き、大きな拍手と歓声に包まれながらカーテンコールとなるのだった。
この話はウィラー建国伝説の序章だ。
今回の演劇向けに多少は脚色したりしているが、概ね伝説に沿ったストーリーとなっている。
メリア……初代女王メリアドールの住んでいた森はウィラー大森林と呼ばれ、今もなおウィラー王国に存在する……というか、アルマ地方を除く国土の殆どを占めている。
かつては殆ど人が住まない魔境とも呼ばれた地だが、今ではウィラーの王都……森都モリ=ノーイエを始めとする諸都市が築かれている。
……王都の名前って、もしかして『森の家』?
う~ん……まさか、初代女王メリアドール様って……
まぁ、はるか過去の人物だし、確かめようは無いか。
さて、次は私達の番だ。
今回も気合を入れていくよ!
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